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死刑宣告


生物室へ行く道中、私は気を紛らわすために無理やり先生に話しを振った。


「先生ってオカルトとかに詳しかったりします?」


「突然なんだ? オカルトなんて、そんなのに興味あったのか?」


 意外そうな顔をして私の話しに耳を傾けてくれる。


「いえ、ただ最近不可思議な現象がネットの記事に上がっていたので気になっただけなんですけどね」


 嘘を混じえながら話すことには慣れてないので少し支えながら。当然紫のことは話せない。話しても頭のおかしいやつだとしか思われないからだ。ただネットの記事という所に不信感を感じたのか、ゴシップ好きではなさそうな綾瀬先生は生徒の話しを仕方無しに展開させているように見えた。


「不可思議な現象というと具体的にはどういったものなんだ? まあ大方俺が耳に挟んだことのあるようなありきたりな噂だろうと思うが」


「多分無いと思いますよ。私が見た記事には人が鏡に閉じ込められ、閉じ込められた人間は現実世界から跡形も無く消え去ってしまう、みたいな感じでしたかね」


「神隠しか何かの類だろ。しかし鏡ってというのは中々聞かないな」


「そうですね。だから私も気になったんですよ」


「でも鏡に囚われたなんて嘘くさくて信じられないと思わないか? その囚われた人間の情報があるなら別だが記事には書いてないだろう?」


「まあそうですね。そもそも消えた人間に関する情報が全て消えてしまう、家族や友人の記憶からも、そんなの普通あり得ないですけどね」


「なら消えた人間に気付くやつはいないんじゃないのか?」


「まあ、そうなんですけど。唯一覚えてる人がいるみたいな」


「そりゃもうそいつが生み出した空想の人間だな。統合失調症を患う患者によくあるケースだ。オカルトでも何でもないかもな」


「いくら何でもそんな発言を軽々しく言うのはどうかと思いますよ」


低い声で唸り睨みつけるとバツが悪そうな顔をした。


「お、おう、決めつけるのは早計だったかもな。もしかしたら寂しくて生み出してしまったなんてこともあるかもしれないしな。ははははははっ」


「先生ぼっちですもんね。教材ここに置いておきますね。じゃあこれで」


綾瀬先生の言い方にカッとなってしまい私は苛立ちを募らせ生物室から出る。思いっきり引き戸をバァンッと閉めると移動教室の生徒達がびっくりした顔でこちらを見ており私は羞恥心を感じその場から早めに立ち去った。


「俺だった友達位はいるぞ……職員以外で」





廊下を走ってる最中に思うところがいくつかある。先ほどの先生の発言に心が揺らいだのは言うまでもない。でも紫が妄想の産物なはずある訳ない。私の記憶にしっかりと彼女の存在は焼き付いている。授業まで後2分ちょいだが私は教室には向かわず屋上へとかけ上った。扉は施錠されているがごちゃごちゃと重ねられてる机の中から鍵を取り出し、鍵穴に挿して回すと簡単に開いく。昔いた先輩たちが残していった秘密の隠し場所だった。一部の先生にはバレているが黙認されている。

 屋上に出ると北風が肌を刺すように通り抜ける。髪が自分の顔をバサバサと靡かせるのが鬱陶しく、風を凌ぐため高架水槽の横に座り込んだ。手帳型のスマホケースを取り出し、鏡を目の前に持ってくると映っている私の姿は紫に変わっった。


「あれ? やっほー舞依、もう昼休みなの?」


鏡の中の彼女はゆったりとした動作で目をぱちくりさせて首をかしげていた。


「妄想なんかじゃない」


安堵のため息をこぼし鏡の中の彼女を見つめた。


「え? どうしたの?」


「なんでもないよ。ただ紫と話せて嬉しいなって思っただけだからさ」


「そうなの? 私も舞依とお話できて嬉しいわよ」


恥ずかしげもなくストレートに返されしどろもどろになるのは毎度のことで彼女はクスクス笑っている。


「もう…恥ずかしいから笑わないでよ」


「ふふ……そうね、ごめんなさい。ここにわざわざ来てもらってこうやって雑談するのも良いのだけど、私に起こったこの不可思議な現象について説明しなくちゃいけないわ」


紫はピンっと人差し指を立て、無いメガネをクイッと上げる動作をした。


「質問を受け付けますのでどうぞ疑問がある方は挙手を」


「それ誰の真似?」


「昔の担任」


ふふんっとできる女教師を演じ始めたので戸惑いながらも乗ることにした。


「じゃあえっと、は、はい先生」


「はい、舞依さん、どうぞ」


「あ、どうも。えっと質問なんですがまとめて言ってもいいですか」


「うーん……良いでしょう」


「ありがとうございます。では1つ目です。紫は何で鏡にいるんですか?」


「良い質問ですね。ですがその前に私のことは紫先生とお呼びください」


「え、あ、はい紫先生」


「よろしいです。ではお答えしましょう。土曜日に私が舞依さんの家に遊びに行った後の話しです。家に帰りいつものように過ごしていたわけです。夕飯を食べお風呂に入り、少し勉強をして、就寝」


「勉強してるなんて真面目だね」


「舞依みたいに要領良くないもの」


「私の生物の点数知ってる?」


「それは全く話しを聞かず教科書も開かなければ取れないでしょうよ。代わりに他の教科はかなり高得点を取ってるの知ってるからね」


誤魔化すように顎に人差し指を当て首を傾げてるとジト目で見られた。


「まあいいわ、それで問題は寝た後なの。私は普段夢を見ないほど熟睡してるのだけどその日は夢を見たわ。しかも夢の中に舞依の部屋が出てきたの」


私が紫の夢に出てきたことなんだか言いようのない恥ずかしさがこみあげ。、けど真剣な顔をして話してるので茶々を入れずに私は黙って頷いた。


「それでね、ちょっと言いづらいんだけど……」


赤くなってもじもじし始め暫く言い淀む。始業のチャイムが鳴るが気にせずじっと待っているのだがなかなか話さないので「大丈夫?」と声をかけると「うー」と唸りながら顔を伏せた。


「言う必要あるのかは紫次第だからね。無理しなくていいよ」


「いや、原因は意外なところにあるから全部言わなきゃ駄目なの、多分……」


ならはよ言わんかいと思ったが急かしても焦らせるだけだろう。


「そう言えばさっきチャイムなったけど昼休み終わるの早くない?」


「へ? あぁーっと、ちょっと屋上来るのに手間取っちゃって遅くなったんだよね」


「そうなの? じゃあお昼とか食べてないんじゃないの?」


「まぁちょっと位は平気だよ。私少食だしさ。それより!夢の話だよ。本題から反れてるって」


「なんか怪しいわね」


妙に鋭いんだよな。頭をガリガリかいているとジト目で見られる。


「な、なに?」


「舞衣の嘘は見破ったよ」


「嘘? 別に嘘なんか」


「ズバリ!」


「ず、ずばり?」


これでまたサボったなんてバレれば何を言われるのか分からない。紫のことだ、幼少期の恥ずかしくなるような話をまだまだストックしている筈なので油断は禁物だ。目を閉じ少し思案した後カッと目を開けた。


「今とてもお腹空いているわね!」


キメ顔で指を指され当てられると思いきや見当違いの回答が来たので構えた自分がアホらしくなった。


「よ、よく分かったね紫。流石だよ。やっばり紫は日頃から私の事を見てるだけあるね」


「そうでしょ、そうでしょ……ってまるでストーカーみたいな言い方するじゃない」


紫がストーカーなら嫌じゃないし寧ろ逆手にとって色々と罰を与えたいと思うが本人には言えないな。


「クイズは終わりにして夢の話。聞かせてよ」


「覚悟は良い? 聞いても嫌いにならないでね?」


「紫の事嫌いになる自信が無いから大丈夫」


「紫のお兄さんとキスする夢見ちゃったの」


冗談だよねって聞きたかったけど開いた口が上手く動かない。

死刑宣告の方がマシだったなんて思ってしまうのは紫には伝わることは無いだろう。






随分と期間が開いてしまい申し訳ありません。




エタりかけるこの脆い精神をどうにかしたい。

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