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第十九話~可愛いとは(2)~

 クロードがデザインコースの授業を行っている中、特生組は自習。

 レイカは教科書を開き、ノートへと重要な部分を書き込み、シィも教科書をじっくりと読み込んでいた。


 そして、パルノとキュレは、教室に設置されている簡易作業場にて、とある【魔機】を製作していた。


「ふっふっふ。原型は出来上がってきましたよ。後は、外装だけです!! キュレのほうはどうですか?」

「な、なんとか。もうちょっとで原型はできそう、かな?」

「うんうん。成長が早くていいですよ、キュレ」


 自分達なりの可愛いデザインの【魔機】を製作。

 担任であるクロードが始めての挑戦をしているということで、自分達も作ってみようと思い至ったのだ。


「でも、やっぱりちょっと歪かも」

「いやいや。そこまで作れれば十分すごいですよ。やはり、魔力が高いと加工も楽でいいものです」

「でも、まだちゃんと操れてないから、やりすぎちゃう時があるんだよね。ほら、ここの部分とかちょっと」

「これぐらいなら、鑢でちょちょいっと……これで大丈夫です!」

「ありがとう、パルノちゃん」


 楽しく話し合いながら、助け合いながら作業は進んでいく。

 そんな中、レイカはノートへの写し書きを終え、二人へと近づいていく。


「パルノがそういうのを作るなんて珍しいこともあるのね」

「ふふん。私だって女の子ですよ? 可愛いものが嫌いというわけではないので」

「……それで、何を作ってるの? それ」


 いつの間にか近くに来ていたシィがひょこっと顔を出して、パルノが作っているものの正体を問う。


「わかりませんか?」

「わからないから聞いているんだけど……」


 原型ができていたパルノはすでに外装すらも完成に近づいていた。


「うさぎさんですよ!!」

「……うさぎさん?」


 どや? と自信満々に出来上がった【魔機】を見せ付けるパルノに、三人は首を傾げる。

 出来上がった【魔機】は掌サイズぐらいの大きさで、耳がぴんっと立った耳が横についており、長い角が螺旋状に出来上がっている。

 尻尾も長く、目がやたらとぎょろっとしている。


「どうですか? 会心のできだと思うんですが?」

「確かにすごいけど……」

「可愛くないと思う。というか、これ本当にうさぎさんなの?」

「な、なに言っているんですか? どう見てもうさぎさんですよ! 昔、祖父から聞いていた通りです!!」


 その時、三人は確信した。

 パルノは完全に勘違いをしていると。パルノが作ったのは、うさぎはうさぎでも《ドルゥラビット》と呼ばれる魔物だ。

 うさぎのようでうさぎじゃないと言われるほど、見た者達引き攣った顔にさせる見た目をしており、獰猛で、その螺旋状の一角で生物を襲う。


「ね、ねえパルノちゃん。これ、本当に可愛いって思う?」

「……可愛い、と思いますが」


 少しの間が気になるが、パルノの美的センスは若干ずれているようだ。


「パルノ。うさぎを自分の目で見たことある?」

「いえ、ありませんが」

「図鑑とかでも?」

「はい。うさぎのお肉なら見たことも、食べたこともありますが」


 さすがは世界最古の【魔法機師】の家系の娘。

 普通の女の子ならば、可愛い動物を見るために図鑑を読むものだが、彼女にいたってはそれがない。

 それに加え、祖父により間違ったうさぎのイメージを刻み込まれているようだ。


「あのね、パルノちゃん。うさぎっていうのは……こういう感じなんだけど」


 キュレも偶然か。うさぎの人形を作っていたようで、それを見せ付ける。パルノのとは違い、ちゃんとした可愛い見た目のうさぎだった。

 並べると、どっちが可愛いのかは一目瞭然。

 ちなみに、パルノの作った【魔機】は、スイッチを押すことで魔力炉から魔力を放出し、角へと集める。それと同時に角が回転して、魔石でも貫くことができる。

 言わば、うさぎの形をした小型のドリルということだ。


 キュレは、ただ耳を動かすだけというもので【魔機】じゃなくともできる仕掛けだが、まだ習って間もないにしてはいい出来だと言えよう。

 いや、それよりも今回は性能云々ではなく、デザインが重要となっている。

 

「こうして見比べてみると……」

「キュレのほうが可愛い」

「むぅ……これが本物のうさぎさん……」


 どこか納得がいかないような顔で、キュレのうさぎを見詰めるパルノは、突然よし! と二つの【魔機】を手に立ち上がる。


「パルノちゃん!?」

「どっちが可愛いか、クロード先生に決めてもらいに行ってきます!!」

「今は授業中だよ!?」

「……行っちゃった」

「落ち着くのない子ね、パルノは」


 などと言いつつ、レイカも教室から出て行こうとしていた。


「クロード先生の反応が気になるのよ。大丈夫。見つからないようにするわ」

「レイカちゃん!?」


 こうして、教室に残されたシィとキュレは、どうしたものかと顔を見合わせた。




・・・・・




「……よし。完成だ」


 工具を置き、クロードはこれはいい出来だと笑みを浮かべる。

 それなりに時間はかかったものの鑑賞会の時間は残っている。原型ができてからは、どんなものができあがるかを内緒にするため隠しながら作業を進めていた。

 そのため、完成と同時に生徒達は湧き上がる。


「では、クロード先生。出来上がったものを発表してください」

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