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第十六話~特生組の実力~

「それじゃあ、今回の授業は実際に【魔機】を使って、実践を行うことになるんだけど……準備はいいかな?」

「はい! いつでもいけます! 私、こういう授業も大好きです!!」

「私はむしろ体を動かしているほうが好きです」

「私はちょっと……あんまり得意じゃないけど、頑張ります!」

「怪我をしない程度に、やらせてもらいます」


 クロードが学園に来た時期はすでに入学から二ヶ月は経っていた。なので、その間だいたいは基本的なことは終わっているということなので、何度か実践授業をしていた。

 その中でも、やはり特生組は頭ひとつ抜けており、戦闘においても特別だったようだ。


 今日は、学園から離れて、王都の外へと来ている。

 各クラス毎に、場所と目標が指定されており、それを達成すれば授業は終わりだ。残った時間は自由行動となる。

 逆に、時間内に目標が達成できなかった場合は、その時点を評価する。


 王都の周りには、魔物避けの結界が張られており、ある一定の範囲ならば、外に出ても安全。

 だが、結界外へと一度出れば、魔物が襲ってくる。

 そして、東西南北によって、魔物の強さが違う。一番安全なのは、東側にある平原。そこでは、初心者でも倒せるぐらいの魔物が多く湧く。


 逆に一番危険なのは【耀紅ようこうの森】と呼ばれる不思議な森がある西側だ。一年中森の葉が赤く、その赤さは、森に入って帰らなくなった者達の血を吸って、赤く染まったのだと昔から伝えられている。

 実際は、どうなのかは未だに解明されていない。

 もう二百年も謎のままらしい。


「それにしても赤い森だね、何度見ても」


 クロードも【耀紅の森】のことは知っているが、中に入ったことはない。かなり危険なところとされており、立ち入り禁止区域に設定されている。

 

「噂だと、このマギアラに満ち溢れているマナが澱んで、それを吸収してこうなったとも言われてます」


 今に森の中へ入りそうなほど近づき、パルノは言う。シィも、物珍しそうに森の奥を見詰めており、今にも駆け出しそうだ。

 

「でも、研究者達の間では、この森の木はそこまで特別なものじゃないって見解も出ているそうだけど……どう思いますか? クロード先生」


 と、レイカが問いかけてくるので、クロードは真面目に考える。

 しかし、そんな暇などないと言っているかのように、近くに魔物が出現した。

 マナが集まり、それが形となる。

 魔物は、どこにでも現れる。この世界にマナという生命エネルギーがある限りは、必ず。魔物は、神々が与えし試練のため生物だと昔から言われている。


 魔物という脅威が居るこの世界で、自分達がどう生き抜いていくのか。

 それを神域で見ているだとか。

 他にも、魔物は《魔族》や《悪魔族》達が生み出したとも言われており、それを理由に《魔族》や《悪魔族》達の命が狩る組織が存在している。


「話は後だ。さあ、さっそくだけど。君達特生組の実力を確かめさせてもらうよ。相手は、四体。一人一体の撃退ってところだね」


 出現した魔物は、定番の魔物と言われている《ゴブリン》だが、ここに出現するのはその亜種である《ゴブリンウォリアー》だ。

 通常の《ゴブリン》は素手や棍棒、時にはその辺にあるものを武器とするが、亜種である《ゴブリンウォリアー》は、最初から鉄などでできた剣や槍を装備している。

 軽装だが、防具も。


「よーし! 三人とも! 頑張ってクロード先生にいいところを見せよー!!」

「ええ。でも、パルノ」

「なんですか?」

「もう一番弟子さんは、飛び出して行っちゃったわよ?」

「なんですと!?」


 我先にと、飛び出したシィは一番強そうな剣を装備した《ゴブリンウォリアー》へと飛びかかる。

 反撃するように剣を振るう《ゴブリンウォリアー》だが、しゅんっと身を屈め回避。

 そこから【魔刃剣】を鞘に収めたまま抜刀。


「……一番乗り」


 先に魔物を倒したシィは、ピースサインでどうだと言わんばかりに他の三人へと伝える。それに触発され、パルノは腕に装着された自作の【魔機】を構える。

 手甲のようなものに薄い板が装着されており、そこに魔力を注ぎ込むとかしゅんっとボウガンのように変化する。


「よーし! 今日は……」


 腰のベルトから一枚の魔法板を手に取り、腕の【魔機】へと差し込む。

 

「〈閃光矢シャインアロー!!!」


 すると、高速で飛び出す光の矢がこちらへと向かってきた《ゴブリンウォリアー》を貫く。


「よし!!」


 パルノが使っている【魔機】は【魔縮弓】と呼ばれ、魔力を圧縮して矢として打ち出すものだ。本来パルノは炎と風、地の三属性しか扱えないが、先ほど【魔縮弓】に差し込んだ魔法板。それに各属性の魔力が封じ込められており、それを圧縮して矢として打ち出しているのだ。


「じゃあ、次はキュレかしら」

「う、うん。って、レイカちゃんは?」

「私? もう終わっているわよ」


 レイカの言う通り、すでに《ゴブリンウォリアー》は一体となっている。クロードでも見逃すかと思うほどの早業。

 パルノが魔法板を選んでいる一瞬の時間で、雷を身に纏い加速。

 更に魔力により生成した爪で、切り裂いたのだ。その後、パルノが魔物を倒したと同時に、元の位置に戻ってくる。

 悠然としているが、さすがは特生組の一人。【魔機】を使わずにあれだけの実力とは……姉であるルイカに負けない魔力操作だ。


「頑張ってください! キュレ! ほら、槍を持った《ゴブリンウォリアー》が警戒して、近づいてきません! 今なら、魔法討ち放題です!!」

「う、うん!」


 魔力が跳ね上がる。と同時に、キュレの肌を覆っている布に光の筋が現れる。


「〈土牙アースファング〉!!」


 

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