プロローグ
魔法機師。
魔法と機械を組み合わせた【魔機】と呼ばれるものを操り、作り上げる者の総称である。現代の魔法文明を一気に飛躍させた【魔機】は、機械を取り入れることでより効率と威力を向上させた。
なによりも魔法を扱えない者でも、魔法を扱える道具。
これがどれだけすごいものなのか。
世界は【魔機】の開発に力を入れ、次々に他種の【魔機】を生み出す。
だが、それにより色んな意味で世界は変わった。
まず起こったのは、魔法使いとの戦争だ。
魔力がなくとも魔法を手軽に扱える。普通に魔法を発動するよりも、早く、効率がいい。魔法使いが魔法を発動しようとしても、指一本で発動できる【魔法機師】と戦えばどちらが勝つかは一目瞭然。
このままでは積み重ねてきた魔法の歴史が崩れてしまう。
なくなってしまうんじゃないかと魔法使いたちが恐れて【魔機】の開発を中止すべきだと訴えた。しかし、その訴えは聞き届けられなかった。
【魔機】は、戦いだけではなく私生活をも豊かにする。火熾しも、洗濯も、灯りだって【魔機】があれば楽になる。
だからこそ、開発は中止できない。
訴えていた魔法使いたちも、最初は引き下がった。
確かに私生活が豊かになるのは喜ばしいことだ。なによりも、技術や文化の発展は大昔からずっと続いていること。
魔法使いたちもわかってはいるが……やはり、自分たちが培ってきた魔法の技術が忘れられるのが、怖かったのだろう。一部の魔法使いたちが、ついに武力行使に出たのだ。
まだまだ発展途上の【魔機】ならば、歴史ある自分たちの魔法のほうが上だ。
完全になる前に潰しておこう。
そんな一部の魔法使いたちの勝手な行動が火種となり起こった戦争。
それが【第一次双魔戦争】である。
最初は、魔法使いたちが優勢だった。このまま押し切れる。やはり自分たちが培ってきた魔法こそが、至高だ。
一ヶ月以上も続いた戦争だったが……終わりはなんとも容易かった。
完成した【魔法機師】部隊の投入により、一方的に終わったのだ。魔法使いが魔法を発動する前に、懐に飛び込まれ、スイッチひとつで発動した魔法攻撃により防御結界は簡単に破られる。
戦争を起こした魔法使いたちは、ほんの一部だったためあまり脅威にはならなかった。なによりも【大魔法使い】と言われるマーティス・ウェラトーンが終戦宣言をしたのだ。
彼は、今後の未来を考え【魔機】の開発に賛成していた。
新たな魔法の可能性。
道は違えど、これは魔法使いが今まで培ってきた発展だ。争うのではなく、話し合い、試行錯誤をするべきだ、と。
それにより、各国の【大魔法使い】たちが集まり行われたのが【第一回双魔会議】だ。
それから百五十年。
今度は、発展した【魔機】の奪い合いが始まった。より強力な【魔機】を。より高度な技術を求めて【魔法機師】同士の戦争が起こり、多くの命が失われていった。
そんな戦いを止めたのは、異世界から召喚された少年少女達だった。並外れた魔力と戦闘技術に加え、当時の最高技術により産み出された彼専用の【魔機】により、戦場は支配された。
その中でも、もっとも若い少年クロード・クロイツァ。
九歳にして、戦争に終止符を打ち、後に異世界の英雄と呼ばれる一人である。