プロローグ
それはある日突然起こった。
俺、篠崎優斗はいつものように大学の講義を受けてからアルバイトをし、母子家庭で帰りが遅い母親の代わりに家事をしてくれている妹、篠崎凛の待つ家に帰った時だった。
「あれ、カギが開いてる」
怪しく思った俺は妹を探すと彼女は血まみれになって倒れていて、息をしていなかった。
死んでいた。
俺はあまりのショックに言葉を数秒失い、その後慟哭した。そして俺は今日友達からもらった悪魔を呼び出す魔法陣の存在のこと思い出した。
――あれなら助かるかもしれない――
そこからの俺は早かった。救急車を呼ぶなどのことも頭に浮かばず、自分の手首を切り、ただひたすらに自分と妹の血で魔方陣を描き続けた。まるでそれをすることが必然であるかのように。
「ハァハァハァ……できた……」
「あとは呪文を唱えるだけだ」
「Eloim, Essaim, frugativi et appelavi!」
直後、陣が光りだし下から真っ黒の身体を持つ異形の者が出てきた。照り輝く大きな羽、頭に生えた角のようなものはまさしく悪魔そのものだった。
そして、ソレが喋りだした。
「私の名前はイリア・サン・スカーレット。私を呼び出したのはおまえか?」
その声は思っていたよりずっと高く、よく見ると胸に膨らみがあることからこの悪魔は女性であることが分かった。
そんなことを考えていると、また女性悪魔が話しかけてきた。
「おい、呼び出したのはお前かときいている」
「ああ、俺が呼び出した」
悪魔はそれを聞き舌なめずりして言った。
「して望みは?」
「死んだ妹を生き返らせてほしい」
「死者の蘇生か……代償は大きいぞ」
「妹が救えるのなら俺のなんでもくれてやる!」
「ん?今なんでもって」
「ああ」
「よし!それでは契約成立だ!」
すると突然あたりがまばゆく輝きだし、その光に包まれ俺は意識を失った」
「……くん」
……誰かの声が聞こえる。聞いたことのあるような声。
「優くん、起きて!」
誰の声だっただろうか、最近、いや昨日聞いたような気がする……昨日最後に話したのは誰だっけ…………ん!?
俺が驚いて目を開けると、そこには真っ白の肌に金の長髪がきらめく絶世の美女が立っていた。
「誰!?」
「誰って忘れちゃった?昨日の悪魔よ」
「その姿は……」
「悪魔って好きな体に変身できるのよ。今はあなたの好みの体になってるってわけ」
そんな話をしていると、俺は大事なことを思い出した。
「おい、悪魔」
「やーん、イリアって呼んで♡」
「妹はどうなった!」
すると、ドアをノックする音が聞こえた。
「お兄ちゃーん、朝ごはんできたよー」
俺はすぐに妹のもとに駆け寄ると強く抱きしめた。
「凛、よかった、本当に良かった」
「お兄ちゃん!?どうしたの急に?照れるよー」
するとイリアの姿に気づいた凛が驚いて声を上げる。
「お兄ちゃん、この人だれ?」
「ああ、この人は……」
俺が話そうとするのを遮ってイリアが話し出す。
「こんにちは、妹さん。私は優斗さんとお付き合いさせていただいているイリア・サン・スカーレットっていいます♡」
「馬鹿!お前何言って」
「ねえ、あなたからもそう言って?」
「ああ、俺の彼女のイリアだ。凛、仲良くしてやってくれ」
何!?俺の口が勝手に!?
自分の身に起こった異常な出来事に俺は目を見開き、イリアの方を見る。
「嘘……お兄ちゃんに彼女なんて……」
凛も驚いているようだった。
「凛ちゃん、傷心のところ言うのも気が引けるんだけど、兄妹では結婚はできないんだよ?だから、お兄ちゃんのことはきっぱり忘れて、ね?」
「え……」
「おい、お前は何を言ってるんだ?」
「ねえ、妹さんにちょっとの間席外すように言って」
「凛、すぐそっちに行くから、リビングで待っててくれるか?」
また口が勝手に動き出す。
「わ、わかった」
そう言って凛は駆け足で一回に降りて行った。
「おい、これはどういうことだ?」
「これが私とあなたとの契約よ。あなた代償でなんでもくれるって言ったじゃない?だから文字通りあなたのすべてをもらうことにしたわけ。契約の名は『奴隷契約』。優くんは私の思い通りに動かなくちゃいけないの。あーでも安心して?本当の奴隷みたいにひどい扱いはしないから♡」
_ゾワッ_鳥肌が立つ。そしてもう一つ奇妙なことがある。
「なんで俺の名前を知ってるかって?実はねえ、私ヒトの心の中が読めるの。だから優くんや凛ちゃんの名前を知ってるってわけ。もちらん、わたしのことをかわいいって思ってくれてることも気づいてるよ♡」
「え!?」
「ウフフフ……私もあなたのこと好きだよ♡昨日呼び出してくれた時、私あなたのこと一目見て気にいちゃった♡だから、これから一緒に魔界で過ごそう?人間界でいう結婚ってやつだね☆」
「妹を助けてくれていたことには感謝している。だが魔界に行くのだけは勘弁してくれないか?妹が大きくなるまではそばにいてやりたいんだ」
「うーん、でもやっぱり魔界の方が住みやすいからなぁ……一週間だけあげるからそこでみんなにお別れしよ?」
ダメだ……やっぱりおれのお願いを聞いてくれないか……ここから一週間のうちにどうにかしてコイツを魔界に返す方法がないか探さないとな……
「ねぇ聞こえてるよ?」
しまった!?コイツは人の心が聞こえるんだった!くそ!まずこいつから離れてから作戦を立てなくては。
「フフフ……優くんって面白い人なのね。ますます好きになっちゃった♡」
俺の心の声を聞いてクスクス笑うイリアをみながら、俺は今後を案じて気分が悪くなっていくのであった……
はじめましてゆきだまると申します!
これからのんびりと執筆していこうと思います!
何せ、小説素人の者ですから、書き方がおかしいところがあるかもしれません。その時は教えていただけると幸いです。また、ここは改行した方がいいなどのアドバイスもぜひぜひお願いいたします!