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六十九、 十番目の影

《しょ…勝者はリンだーーー!!!》



 盛り上がる熱気が降り頻る雪を溶かす。

 フィールドで羽ばたくドラゴンの羽がその熱気を冷ますように冷気を放つが熱を冷ますことはままならない。


 リンはドラゴンの下にいるのだろう。




 私は空高くにいる。

 重火力銃(ヘヴィランチャー)を持っていると自分を『重力を軽く』することが出来なくなる。だから、武器を置いて自身に能力をかけた。

 無重力となった私はそのまま空に向かって飛んだ。

 お陰でドラゴンの攻撃は当たらなかった。武器は失ったが生命は失わずに済んだ。



 私はドラゴンの真上へときた。



重 力(グラビティ) ────』



 私は自身に強い重力をかける。

 より速く、勢いをつけながらドラゴンに向かって落ちていく。あまりにも速すぎて足は棒のようになっている。




 私は絶対に勝つ────

 カルト、今救けるからね────




隕 石(メテオ) ──── 』


 ドラゴンの背中に隕石が落ちたような衝撃が起きる。

 ドラゴンはその衝撃に耐えきれず地面へとぶつかった。そして、ドラゴンは粉々に破れてしまった。

 会場が砂煙と冷気の煙で覆われた。



《な…何が起きたんだー!!?》



 観客席からは煙で何も見えなくなっていた。





「おめでとう───ボクは追いこまれたよ。」



 煙の中で私とリンが面向かう。


「約束通り彼は返すよ。キミ達が選ばれた理由、ちょっとは分かったかも……」


 私の横に現れるカルト。

 カルトは何が起きたのか分からずに突っ立っていた。


「ボクは青色(ななじき)の勇者だけど、腐っても伝説の四人の一人だ。今回はキミ達に賭けてみるよ────」




 リンは一瞬にして消えた────

 召喚陣の中に入ったのだろう。




 エックスの託した者──

 ボク達では壊せないこの世界の鳥籠。分かっていてもボク達では逆らえない。けど、キミ達なら逆らえる。

 キミ達が鳥籠を壊せるように────星に願うよ。


 キミならいける。きっと歪んだ社会を変えられるよ!ボクを苦しめたこの鳥籠を壊すためにボクはキミ達を見逃がす!!




 煙が風で飛ばされ、フィールドを見渡せるようになると二つの影が見える。

 私とカルトだ────



《勝者はリンでなく月華だったーーー!!!》



 会場をどよめきと歓声が支配する。

「何が起きたんっすか?」

「私が勝って、カルトを取り返したの!」

 カルトはまだこの状況についていけていないらしい。取り敢えず、ここにいてくれるだけで、それだけでいい。



 私は自身の重力を軽くして観客席の方へと飛んだ。飛んだ先は実況及び司会の所だ。私は彼のマイクを奪った。


「「私はこの大会で優勝しこの世界で強いことを示した。先に示したように私は魔王だ!!伝説の勇者も倒した!!」」


 観客席はどよめきで広がった。


「「私達は魔王城の下で村を作っている。《人間と魔族の共存》する村だ!!!魔族と共に暮らしたい者、この社会に失望した者、新たな村に共感した者、多くの移住を待っている。豊村と糸車からその村へと続く道を作った。勿論、敵対する者かどうかの審査をする。村を壊す者は許さない!その覚悟を持って勇者らは戦いに来るといい!!!」」


 フィールドに現れるワープホール。暗部(アサシン)だ。そこのワープからこの場所から出られる。



「「「待ってる────!!」」」


 

 そう言って、私はフィールドに降り立った。

 そして、暗部(アサシン)、カルト、と共にワープホールに入っていった。





 ワープの先は木々が茂る森の中だ。人気はない。

「やっと終わったっすね────」


 そう今回の目的は成功した。

 だが────


「魔王城に帰るまでが作戦よ!!気を抜かないで!!!」


 私は心の奥底にカルトを失った時の恐怖、また失うんではないかという不安などを押し込めた。そして、何事も無かったような表情をしていた。


「そうでござるな!!まだまだ安全とは言えないでござるもんな!」

「そうっすね!気を緩めれないっす。」

「そうでございますわ♡追手が来る前にさっさと魔王城へと逃げましょう。」


 私達はまだ油断できない。

 魔王城の方向に向けて足を出し……


 ん────?

 え──────?

 あれ───────?



 そこにいるのは私と、カルトと、暗部(アサシン)……と王女?



「何でいるの!!?」


 そこには、何故か王女ティアもついてきていたのだ。


「魔王殿が優勝したのでございます。ワタクシはもう魔王殿の"モノ"でございます。ワタクシを好きに使って下さい!!」


 モノ……

 取り敢えず、私はモノ扱いは出来ない。


「あなたはモノじゃないわ。一人の人間よ!勝手に帰ればいい。」

「ワタクシは──モノじゃないのですか?」

「当たり前でしょ────?」


 少し戸惑いを感じる。

 人間はモノじゃない!!当たり前なことを分かっていないティアを見て困惑する。


「ワタクシ、自由にしていいのですか?」

「ええ────」

「それではワタクシを《魔王殿の仲間》に入れて貰えませんか?」



  「「「────!!?」」」



 予想外な答えが返ってきた。

 思わず唾が喉に詰まった。


 いや、マジで言ってる?嘘でしょ────?あの王の娘が王に敵対する側の仲間となるなんて……!!?



「いや、本気で言ってる?」

本気(マジ)でございます!!」



 やっと見つけた。

 やっと願いが叶った。


 このチャンスは見逃せない。


「ワタクシはこの時を待っていたのです。ワタクシには王宮の生活は窮屈でございますの。あそこではワタクシはただのモノですから……」


「どういう……こと?」



 ワタクシは産まれた時から王族で王の娘だった────

 だけど、王になれるのは男のみ女のワタクシはモノのように扱われる。

 お父様はワタクシを……王の飾り物として権威を魅せるためだけに育てた。


 王宮の外へと出ることは許されない。

 毎日、部屋から出ることを禁じられ、部屋から出る時は全て稽古かお食事のみ。唯一外へと出られるのが王の式典(セレモニー)などの儀式的行事のみ。それでも、その行事は年に一回あるかどうか……


 ワタクシは欲しい物なら何でも与えられましたが、部屋から出られない生活の中ではそんなもの色のない物と同じ。

 能力を鍛える稽古もワタクシの絶対防壁を破れる者はおらず、誰もワタクシを傷つけることは出来ない。


 いつしか能力を使うことすらなくなり……

 部屋の中で与えられた物で退屈しのぎ、それ以外は稽古。ただそれだけしかやらせて貰えず、ワタクシにとってとても窮屈だった。



 そして、ワタクシはベストールの嫁となれ!と言われた。

 次期、王となるベストール。ベストールの嫁となればもう二度とワタクシに自由は現れない。稽古もない。ただ部屋にいることを強要されるだけ。

 ワタクシはベストールの権威を示す飾り物でしかなくなる。

 そうなれば、、もう退屈な人生から逃れることは出来ない。



 だから、ワタクシは王に抗い大会を開催させて。これが最後の可能性だった。

 ワタクシが出来るのは開催させるのみ。後は、ワタクシを自由にしてくれる人が優勝することを願うのみ。





 私はティアから王女としての苦痛を聞いた。


「そして、優勝したのが魔王殿であったのでございます。」



 満たされすぎてるか全く足りないかどちらにせよ幸か不幸かは感じ方次第。

 ティアは満たされた人生であるのに、彼女自身は不幸なのだ。



「それで、ワタクシは不可抗力でワープホールに吸い込まれる~♡と演技してここに来たので魔王殿の宣言通りワタクシ、"姫は魔王に攫われた"と皆は思っているでしょう♡」



 って、────おい!!

 一気に悪者に仕立てあげたな!!折角、人々に魔族と人間の共存を訴えかけたというのに!!!




「まあいいや、私達の仲間になっていいよ!ただし、魔王城に着くまで気を抜かないでね!!」



 カルトと暗部(アサシン)は大丈夫か?という表情をしている。

 まあ、なんかあったらその時はその時だ。

 まずは魔王城へと無事辿り着くことが優先だ。



「さあ、早く魔王城へと向かいましょう!!」

ユニーク1000突破

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