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六十七、 アイス・ブリザード・ドラゴン

「早く舞台へと向かって下さい!!」



 再三繰り返される脳内直接届く声。そうだ、大会の途中なんだ。

 "カルトはまだ生きている"──


 次の敵を倒せば、リンと戦うことになる。死にかけにしてカルトを取り戻す方法を聞き出そう。まだカルトは死んでいないんだから……


 私は心にできた不穏を封じてフィールドへと足を運んだ。



《ついに出てきたー!!》



「この試合、負けられない……」


 私と対戦相手のベストールは面と向かった。



《試合開始だー!!》





「能力『絶対結界』と『指鞭』を結合。先手必勝で終わらそう。」


 ベストールは私に向けて指を広げた。

 両方の指十本から小さな結界が波打つように右往左往しながら進んでいく。その結界はティアが放った結界が小さく、動くようになった感じだった。




 王の能力絶対結界(・・・・)。張った結界はティアと違って移動させたり収縮させたり出来る。敵を結界の中に閉じ込めて押し潰すことも出来る。

 八つの能力が王の元へ集まる時、最終兵器が発動される。その一つ能力指鞭(・・)。指が鞭となる。


 ベストールは試合が始まる前にその能力を持つ二人に触れた。触れた二人の能力を結合し、その結合した能力を一時間弱使うことが出来る。


 指から移動したり収縮したり出来る結界を十つも繰り出せる。




「私には効かないわ────」



 その結界は繰り出される重力によって真下へと落ちていった。

 重力の円が攻撃を封じ続けた。



「動か……ない?」

「えぇ──私の能力重力。それによって攻撃は私には通らない。」



  <禁術魔法:古の神姿>



 月華の身体の角や羽は大きくなっていく。

 いつしかあの時の魔王を取り込んだ姿となっていた。


 髪は変色し、角は生え、翼が現れる。端側の上の歯が牙のように鋭く尖り唇から飛び出る。身体は徐々に魔王っぽくなる。

 人間と魔王のハーフみたいな見た目となった。


 この技を使うとこの姿となるようだ。



 そして、私の身体の左半分は蒼翠色となり文字が現れ出した。右目は黒なのに左目は違う色となっていた。


「私は漲る力を飼い慣らす(・・・・・)────」



 重力を発動したまま、召喚の能力を使う!



  『禁術魔法:創成:運任せの一撃』



 私は左腕を振りかぶった。

 左腕から毒ガスが出ていく。紫色の煙が真っ直ぐ進み、ベストールを覆いこんだ。


 毒ガスが風に(なび)いてフィールドが見渡せるようになると、そこには月華だけが立っていた。


《しょ…勝者は月華だーー!!》




「くっ、ベストール。負けてしまったではないか……。まあよい、リンが勝てば上手く丸め込んでベストールとの結婚へと持ち込める算段がある。これは、ベストールと娘をくっつける任務だから!!」




 私の身体は色を取り戻す。角や翼などは小さくなる。

 私は息を吐いて、目の前を見つめた。


「次はボク達だね!ボクはキミがここに立つことが気に食わない!!」


 いつの間にか現れるリン。

 リンは再び氷の仮面を被っている。冷たい雰囲気を醸し出す仮面。



《おーっと、まさかの休憩なしで、いきなり勝負かー!?》



「決勝相手が何故女なのか……。ボクが現実を教えてあげるよ」

「それより、カルトを返して!!」


 今は勝負の気分ではない。早くカルトを返して欲しい。それだけで、胸がいっぱいだ。


「じゃあ、ボクを追い詰めたら返してあげる!!まあ、出来たらの話だけどね────」

「じゃあ、絶対に追い詰める!!」



《もーヒートアップしているーー。それじゃあ、早速試合開始だーー!!!》



 試合が始まった。





「女は戦いの前線に立つことは許されない。ただ、戦いのサポートをすることに徹しなきゃいけないんだよ!!」


 沢山の召喚陣から現れる氷の玉。

 私は武器を振り回して玉を破壊していく。


「そんなこと、知らないな!そんなの誰が決めた──?」


 リンは召喚陣による氷の玉の召喚を止めずに走り出した。


「この世界が決めたんだよ!!女はリーダーにはなれないし、こういう大会には参加出来ない。」



 私が相手して来た勇者のリーダーは、カクゼン、ケアン、ドルア、ラングル(?)、、、しかし、一人だけ女が思い浮かぶ。



「奈々はどうしたの?ドラゴンを滅ぼすためのチームのリーダーじゃなくて?」


 徐々にリンは近づいていく。


「違うよ!!あれのリーダーはアジュラ。女は誰もリーダーなんかやらせて貰えないんだからね。何故か分かる?」


 前に翔んで拳を突き出すリン。

 その攻撃を重火力銃(ヘヴィランチャー)を盾に防いだ。殴られた部分は軽く抉られていた。その部分は氷となって、簡単に砕かれたのだろう。


「分からないな────」


「女は男よりもパワーが弱い。能力が普及するまで女は劣る存在だったんだ。その歴史が長く続いて能力がそこそこ普及した今にも影響がある。本当に嫌になるよ──」


『召喚魔法:衝撃波』


 私はリンの間近で召喚魔法を放った。

 そこから現れた衝撃波でリンは大きく吹き飛んだ。


「キミは魔王の加護で足りないパワーを補っているんでしょ?魔王の加護がないキミにパワーが男よりも劣っているのが証拠だよ!!」


 それは事実だ……

 どんなにレベルが上がってもパワーが全然上がらなかった。王の式典(セレモニー)の時に、レベル差があったのにも関わらずカルトにパワーで負けていた。



「力のない女は前線で戦うと生命を落としかねない。だから、そういう社会になった。今の社会の方が理論的で足掻いてでも前線に立とうと試みる女は非現実的だって……すぐに気付く。」



 私はダイヤルが"超"となった引金を引く。



「なら、魔王の私がその社会を変えて見せる!!」


「無駄だよ……。幾ら頑張ってもパワーは上がらないし……胸が膨らんできて戦いずらくなって、諦めの感情が支配して……」



氷の巨城(アイス・キャッスル)


 巨大な城が現れた。

 その城の真ん中の扉となる場所に大きな大砲が設置してある。


冷氷の大砲(ブリザード・キャノン)



「結局は女じゃなれないんだって諦めるしかないんだって気付くから──」



 高威力のレーザーが城目掛けて放たれた。

 氷で造られた砲台から氷の砲撃が放たれた。



 レーザーは氷の砲撃を押し返し、城へと直撃した。レーザーが止む頃には城は崩れていた。

 城が崩れる時に起きた冷たい霧がリンの周りを覆う。



「だから、私はそれを変える──」



 白い霧は風にそそられ消えた。

 そこにリンは立っていた。まあ、カルトを取り戻す必要があるから殺られて貰っては困る。



「無駄なの──────」



 リンの周りに大きな召喚陣が現れた。


「いいえ、変えられる!!」


「だから、無駄なの。戦いになんかに背伸びして参加したって、結局足を掬われる。力とかがないとかじゃなくて、社会がそれを許さないから──────」






『マリン…………。お前は女なんだから、サポートに徹しなきゃいけないんだぞ………』


 思い出したくもない父親の声。

 ふと、脳内に響いていく。






絶対零度の龍王アイス・ブリザード・ドラゴン



 巨大な翼に四足の足。少しだけ長い首と横に広い胴体。長い尻尾。見える鱗。口から息が溢れる。強靭な見た目。大きな身体。

 氷で作られたドラゴンがそこにはいた。



《ド……巨大なドラゴンが現れましたーーー!!!》



 そのドラゴンは翼を羽ばたかせて宙を飛ぶ。羽ばたく程に冷たい冷気が私に当たる。

 そのドラゴンは私を睨む。

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