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六十、 剛決の拳と音速の剣

《さて、月華と言えば指名手配犯となっていて顔バレがしているが、そこには女性と書かれている!それが本当ならムントは大会への参加基準に満たさずに参加したことになるぞ!!》



 どよめきが連鎖する。

 非常に"気まずい"────


 本当に何やってくれてんだ、カルトは……



《しかし、顔を見なければそのことが本当か分からない。確認しなきゃ意味がない!!》



 観客席から耳に私を確認するために関係者を向かわせろ!という意味の言葉が聞こえてくる。もし関係者が近くにいて身元がバレたら非常にまずい。

 私は指名手配犯で退場させられたら勇者らに狙われる。殺されなくてもカルト達を置いていくことになるし、魔王としての尊厳も薄まってしまう。


 ここはいっその事、バラすか────



 私はフードをとり羽織っているマントを脱ぎ去った。男装した私が観客には見える。そこには男か女だか分からない感じになった月華。

 しかし、指名手配の紙を見れば私だと言うことが分かる。


  《本当に"月華"だったーー!!》


 さらに、観客はどよめく。

 そして、やじが飛んでくる。「今すぐ退場しろ!」と。


 私はそれに対抗して大きな声で退場する気はないことを叫んだが、今の観客の活気によって消されてしまった。



《ここで聞こう!この大会は"王女ティアの婿"を決めるものだ!月華は婿にはなれない。なのに、何故この大会に参加するんだ!?》



 それに便乗してかさらに観客の声が荒くなる。

 私は王の前に近づいて彼らを見上げた。


 見上げ続ける姿。それが続くと観客の声も落ち着いてきた。



「私達は伝説の勇者エックスを倒した。そして、ドラゴンはあなた達に殺されたためにドラゴンを引き入れることは出来なかったが、鬼は味方にした。今、私は殆どの魔族を従える!!」


 そして、、、



  「私は───《魔王》────だ!!!」



 私は王に向かって宣戦布告をした。

 魔王は、国王と対等することを示す。そして、王はそれを認めない。



《なんと!"魔王"宣言だー!!だがしかし、この大会でティアを求めた理由は分からない!!》



 観客は急に緊迫した雰囲気となった。静かに唾を呑み、私達の同行を見守っている。

 私はティアを求める理由を考えたが、思いつかない。それもそうだ。私は優勝賞品ではなく、ただ魔王ということを宣言するために来たのだから。

 取り敢えず、適当に返して置こう────



「私は魔王よ!魔王が姫を(さら)うのは当然じゃない?例えば、クッパがピーチをいつも攫うようにね──」



 緊迫した雰囲気のなか、観客の殆どは首を傾げた。私の言ってる意味が分からないようだ。

《クッパ、ピーチ?何を言ってるんだ?》

 司会までもが困り果てていた。



 しまった───

 転生したこの世界にマリオというゲームは無いんだった!!



「気にしないで!つまり、私はティアを攫うつもりがあるから、この大会に参加するということよ!何なら婿は私が用意して上げるわ!!」



 その言葉に王が立ち上がった。



「よかろう、おぬしをこの大会で出場を続けることを認めよう。」


 王は力強く足を踏んだ。


「「この大会で指名手配犯"月華"を倒した者の願いを何でも叶えようぞ!!」」




 大きく踏んだな……

 それで、もし私を倒した相手が優勝相手に負けたら場合、勇者出来なかったのにもかかわらず私を倒した者が王女ティアとの結婚を叶えて貰うとなると、そこに矛盾が生じる。


「それに、その伝説の剣(エクスカリバー)を持つ者を倒せば好きなだけ金をやろう!!」


 カルトも狙われたか……


 盛大な歓声がこの一帯を、いやこの栄えた町全体を包んだ。



《残るは四名!月華、ラングル、カルト、テットだ!!さて、勝ち残れるのは残る二名だけだ!!その中で月華とカルトを倒した者は王から壮大なものが手に入れれるー!!》



 声だけで圧倒されそうなほどだった。





「例え、お前を倒して金が手に入るとしてもどうでもいい!俺はただ最大の好敵手(ベストライバル)として、お前を倒す!!」


 ラングルはその歓声を気にしていなかった。

 ただ、カルトとの勝負だけを楽しみにしているようだ。金はどうでもいい。ライバルとして倒したい!


「それじゃあ、気を取り直して勝負といくっすよ!!」



 カルトの剣とラングルの拳がぶつかり合う。威力は互角だ。

 カルトは自慢の拳と同じぐらいのパワーを身につけたようだ。


 ラングルは消えた。カモフラージュで自身を消したように見せるのだ。今の彼は透明人間……

 カルトは身体を動かした。

 何かを躱すように────


 そして、カルトから光灯(フラッシュ)が現れ、会場を包んだ。私達は目を瞑る。

 目を開けるとラングルが負傷(ダメージ)を負っていた。


「見えないはずの俺の攻撃を躱したか……オーラだな?」

「そうっす!オーラを読めば簡単に避けれるっす!!」


 カルトはオーラを読む力を身につけたのか。

 オーラは能力の発動によって自然のオーラが歪む。その歪んだオーラを読むことを言う。

 ラングルは自身に能力をかけていて、人型のオーラが見える。つまり、オーラという鎧を纏っているラングルの攻撃は避けれるっていうことだ。



「だが、次の一撃で終わらす!この攻撃を喰らえっ!!」


 ラングルは身体に力をかけ身を縮め始めた。そして、拳を構えた。軽くじならしが起きる。攻撃力は非常に高いことが分かる。



《これは、すごい威力のパンチを繰り出そうとしているぞ!!》



「流石っすね。その攻撃力……。けど、パワーかスピードか……今回はスピードの勝ちっすよ───」



 瞬く間にカルトは消えた。

 刹那、ラングルの背後に剣で斬った後のような姿でいるカルト。いつの間にそこへ────



「ウチは修行によって眠っていた能力を解放したんっす。能力光灯(フラッシュ)は身体から眩い光を出すだけでなく、今では《光の速さで移動したり攻撃したり》出来るっす!!」



 ラングルは頬を緩め、地面に倒れ、消えた。



《ラングルは倒れたー!!残るは三人ーー!!》



 カルトは光の点滅の間に移動できる。瞬間移動といっても過言ではない程のスピードだ。このスピードは凄まじい。流石としかいいようがなかった。



「こっちを忘れないでな」

 テットは私達を見ながら手を伸ばす。



 手から毒ガスが出ていく。そして、毒ガスを固めて操る。そのガスは龍のように動く。

 

「ごめんなさいね。もう終わらすわ────」



  『召喚:風魔法(ウィンド)



 強風が毒ガスもろとも吹き飛ばす。さらに、テットを壁に打ち付けた。そのままテットは消えた。


「私は月属性の能力重力。だけでなく、無属性の能力召喚も持つ。二属性の使い手よ────」



《おおーっと、"A"ブロック勝者は月華とカルトだーー!!》




 まずはトーナメントに駒を進める。残るは勇者のみだ。

 次は"B"ブロック。暗部(アサシン)には勝ってもらわないと。





 そんな"B"ブロックは猛者共がひしめき合っていた。


「俺ぁ真面目じゃないのに"信念を貫く者"という通り名を貰ってしまうとはな。柄じゃねぇ────。ま、いっか……。取り敢えず、七色(ななじき)の勇者としてトーナメントで勝ち続けるか」


 ギルゴートは地下の天井を眺めていた。

 天井の向こう側には陽射しが輝き、月は太陽に隠れて見えない空がある。




「"B"ブロックの方は準備をお願いします。」



 脳内に届く声により、"B"ブロックの出場者はフィールドへと足を運んだ。

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