五十四、 王女ティアの抗い
赤鬼は金棒を真ん中のモブオに定める。
赤鬼の代わりに青鬼がスタートの合図をかけた。それと同時に赤鬼は攻撃をしかけた。
一人のモブオは金棒を受け止め、その他のモブオは隙を伺い、隙が出来たら攻撃。
「テメェ、オレとの戦いに手練てると思えばじゃないやつもいるなぁ。」
多勢に無勢。数の暴力で赤鬼は排水の陣となって後ろが壁へとなった。
「だが、勝つのはオレだぜ!!」
話している間に攻撃をするモブオ。
「火属性の能力筋肉。筋肉増強によって攻撃力を上昇させる。赤鬼は能力の増強をより強化させる。青鬼は筋肉を防御に、黄鬼は筋肉を素早さに、黒鬼は筋肉をパワーに変える。しかし、その能力を使われる前に倒せばいいんです!」
そんなことは私も知らなかったことだ。
私達との話し合いでも言われなかったことだった。何故、モブオは知っているのだろうか。いや、未来から来たのだから知っていて当然なのだろう。
「ああ、全くその通りだ。だが、何故知っているんだ?」
まあ、未来から来たことなんて知らない赤鬼にとっては当然の反応だ。
赤鬼は能力を使う間もなく鉄パイプの渾身の一撃を喰らい瀕死となった。
三対零で先に三勝した私達の勝利だ。
私や土瑠亜、このチーム全体で喜びを分かちあった。
元敵同士などは関係ない。この喜びは分かち合えるものだった。
◆
シャンデリアの灯火が豪華な部屋を柔く照らす。
豪勢な椅子の上に構える王の目線の先には王女と一人の男性が映る。
その男は貴族で、それ相当の服装をしている。
ここは王の間───
煌びやかな佇まいにそれ相当の豪華で確りとした身だしなみをした者しかは入れない場所。
「ティアよ。彼こそが結婚相手ぞよ」
彼……というのは、お父様(王)が勝手にワタクシの結婚相手にしている者。このままでは、この者と結婚しなければならない。だが、下手な口実ではこの結婚を断ることは出来ない。
その彼の名はベストール。貴族の出身で、貴族でも滅多にみない無属性の持ち主だ。無属性の能力結合。無属性を持つのはお父様、元魔王、ワタクシ、そして彼の四人しか思い浮かばない。
それほど珍しい能力を持つ特別な存在。
容姿は悪くないし、性格も許せる程。しかし、結婚をすれば、、もう自由を手にするのを夢見ることすら出来なくなる。
いつか自由になりたい。その希望を夢見ることで今までの人生を乗り越えて来たというのに───
「嫌でございます。」
だからこそ、出た発言だった。ワタクシはせめて自由のために抗いたい。
眼前のベストールには可哀想だが、ワタクシは出来る限り断る道を選ぶ。
「それはどうしてだ?」
これで下手の応答をすれば、お父様の一喝でワタクシは反論出来なくなる。そうすれば、もう彼と結婚するしかなくなる。それだけは避けなければ……
「ワタクシの結婚相手は《この世界で一番お強い方》でございます♡特別な能力をお持ちの方ではございません。」
この世界で一番強い方が、お父様に従わなければ……ワタクシは自由を手に出来る。ワタクシはそれに賭ける。
「彼も充分強いではないか?勇者同士で戦わせてみせよう。それで、勝てれば良いか?」
それは何人で行うのか────?
「この世界は広いです。たかが一人や二人では証明になりませんよ。」
それに……
「勇者同士で戦っても本当の強さは分かりません。井の中の蛙大海を知らず、でございます。」
勇者に願えば八百長されかねない。いいえ、絶対に八百長をされる。それに反論しても、その事は無かったと主張を通されワタクシは負けてしまう。
「なら、どうすればいいのだ?」
八百長されずに世界一を測る方法はある。それは、世界から集うこと。
「大会を行うのです。ワタクシの結婚相手を決めるために、この世界各地から参加者を集うのです。そこで優勝されし者とワタクシは結婚致します♡」
「しかし、それでは野蛮な者が勝つかもしれない。」
「いいのでございます♡王族のワタクシの結婚相手は世界一お強い方にしか釣り合わないのでございます。それが、王の末裔をより強く引き継ぐためです♡どうかご理解下さい。」
この状況に反論出来ないのだろう。ここはワタクシの勝利。ワタクシの出来るのはここまで。後は、結果に賭けるだけ……
どうか──
ワタクシを自由へと導く方───
是非大会に参加して優勝致して下さい────




