四十九、 食せ!漆黒に燃ゆる闇鍋!!
カルトは修行に旅立ち、残る私達は忙しなく魔王城を改造していった。
そして──
「ついに、最低限の設備は出来たやね!」
モブミは額の汗を拭った。
魔王城で私達が住めるようになった。
寝室を含む部屋は共有部屋で、三つに分けられる。それぞれの部屋で自由に変えたので各コンセプトが違っていた。
カイル達の部屋は機能性に特化した部屋となった。シンプルな青色をベースとした部屋で落ち着いている。キチッと整理された部屋に見える。本棚に沢山の本があるのが特徴だ。
モブオ達の部屋は遊び用具も充実している。不必要なものが多く、早速片付けが出来ていない。乱雑に脱がれた服が見える。時たま、私やモブミがその部屋に行くと乱雑に脱がれた服を仕方なくたたんだり部屋に散らかったものを片付けたりする。カイルが行くとモブオ達自身にやらせる。このように、私達が行く以上ゴミ部屋にはならない。
私達の部屋は桃色を貴重とした可愛らしい色で統一された。リリスのようなイメージの黒を貴重とした小悪魔的色合いにするか迷ったが、モブミ、セイカの切な願いでピンクに決まった。
セイカは他の寝室部屋へと行くとモブオらを淫な行為で惑わそうとするので、私達以外の寝室部屋への入室禁止が命じられた。そのせいか、セイカはこの部屋の管理者的な役割となっていた。
私達は朝起きて朝食を取った。
その時に、モブオがあることを提案した。
「やっと仕事が終わったし、闇鍋しませんか?」
闇鍋────
それは、一人一人が材料を持ち合わせて鍋を作るというもの。正直、不味いものも出来上がりかねない。
転生者じゃない人達はちんぷんかんぷんだったので、モブオが伝えるとやってみようという雰囲気となった。この世界にないことだし、やってみたいとなるのも仕方ないことなのかも知れない。
私達はそれぞれチームとなって、大雑把に決められた材料を取りに行くことになった。
チームは三つのチームと三人に分けられた。
私とモブミで鍋の出汁を調達することになった。
他は、ゴーレムと日野の肉を調達するチーム。モブオとカイルの野菜を調達するチーム。セイカとムーバーの魚介類を調達するチーム。暗部、モブキチ、リリスの三人は個々に大切そうなものを取りにいくことになった。
「さあ、行きましょう!!」
そして、夜の鍋のために材料調達のために行動を始めるのだった。
◆
日は沈み始め夕暮れとなる。
私達は実は外に出ていない。そのため、ずっとみんなの帰りを待っていたのだ。
鍋の出汁は塩をベースとした"ちゃんこ鍋"だ。それが、一番何とかなりそうだと意見となり、それに決まった。
まあ、私の召喚陣でさっさと召喚したので出かける必要がなかった。
最初に戻ってきたのはモブキチだった。
モブキチは調味料を持っていた。黒胡椒が見える。ちゃんこ鍋に黒胡椒は無くもない。
「まあ、ワイは調味料を持ってきたんや。お好みで入れればいいし、味の代わりになるやろ!」
次に戻って来たのはモブオとカイルと暗部だった。
モブオとカイルはこの世界のものじゃないので、この世界のものよりも野菜への知識がなかった。そのため、暗部に手伝って貰って取ってきたようだ。
薬草が多く見えるが、体力を回復させる上に美味しいという代物らしい。
まあそれぐらいなら大丈夫だろう。
その次はゴーレムと日野のチームとセイカとムーバーのチームが同時にやって来た。ゴーレムとムーバーで自分の方が良いと言い争っていた。
ゴーレムの腕には角の生えた獣を抱えている。
「我のはガルフという獣。この肉は絶品である。ムーバーと比べ物にならない程の極上品である。」
チェーンに引き釣られている巨大な魚が見える。人間よりもデカイ巨体である。
「なんだと?この大きさを見ろ!!」
「いくら大きくても質が悪かったら意味ないんじゃないの?」
日野はムーバーを見つめた。
なんかくだらない争いになりそうだから、「まーまー。お互いに凄いよ!」と間に入って止めた。
調理するのが大変そうなのが来たな……と思いきや簡単に処理するモブミ。
あっぱれだ……
ちゃんこ鍋は魚が美味な味を出している。ぐつぐつと沸騰する汁の上に浮かぶ野菜や薬草はその液の美味しい所を吸っている。投入される上質な肉。モブミによって薄くスライスされた肉。鍋に入ると火が通りながら液を吸い込む。
私は味見として食べることになった。
少しだけ黒胡椒をかけていただいた。
味の効いた美味しい味だった。
カルトにも食べさせて上げたかったなぁ。
そう言えば……
リリスがまだ戻ってきてないな───
何を持ってくるんだろうか?
豆腐?肉団子?少し楽しみだ!!
「ただいま~」
リリスが帰ってきた。
リリスの手には……
「えっ────?」
コオロギ?
いや、完全に虫だよね……
「な…何…それ……」
「コロンギっていう"虫"なんだけど、小さな魔族の中で人気の食べ物だよ!!」
リリスはそのコロンギを洗って鍋に豪快にも入れ始めた。
いや──待って……
虫は……ちょっと嫌なんだけど──
ちょっと?
美しく輝いて見えたちゃんこ鍋が一瞬にして毒のような紫色へと化した。
まさに、最悪の闇鍋だ。
「い……いた…いただき………ます」
小さく摘んで食べてみる。
あまりの不味さに倒れかけてしまう程だった。
恐怖の闇鍋が始まった────────
闇鍋はゴーレムとリリスが美味しく頂きました!




