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四十五、 新たに得た力

 エックスは立ち上がると服についた埃を払った。


「私は二つの意味で嬉しい。」


 エックスは意味深にも呟く。私達はその真相を聞いた。どういう意味だろうか?


「私は魔王を殺したことに責任を感じその役目を受け継ぐことに全うした。私に課せられた重い責任を抱え続けて辛かった。けれども、今魔王は蘇り、責任がなくなった。私はただの人間として何の負担もなくただただ全力で戦えたことが嬉しかった。」


 微笑むエックス。

 その言葉に裏はない。


「そして、未来に託すことが出来ることに感謝。反逆者(スレイヤー)となってしても仲間が出来た。彼らへと受け継いで貰える。私は見た目は若いけど、実年齢はもう歳だ。もう自分のため…という考えはない。未来に紡ぐことが幸せとなってきている。」



 未来に紡ぐ──

 そうやって人は歴史を受け継いで来たのだろう。


 人間は動物だ。そして、動物の中で《圧倒的に一番》強い。それは、手が使えるから、武器を使えるから、人数が多いから、頭脳を持つから……だけど、一番決定的なのは"長い歴史の中で文明・文化を受け継ぎ、発展させてきた"からだ。

 遠く遠く果てしなく遠くから人は歴史を紡いできた。

 長い時間で人は持てる知恵で新たに発展させ、それを次の世代が継ぐ。受け継いだ人がさらに発展させ……の繰り返し。

 人はその歴史を絶えなかった。だからこそ、今がある。零から百は作れないけど、零から一は作れる。そして、一から二へ、長いこと繰り返して今や百を遠に越している。



 未来へと託され受け継ぐことは、この世界では新たな力を受け継いでいくことになる。そうやって強くなっていく。


 伝説の剣(エクスカリバー)はこの世界で、選ばれし一人以外の人間は持つことが出来ない。そして、選ばれし者は未来に希望を託し、選んだ一人に託す。そうやって、伝説であり続けた。


 そして、また伝説の剣(エクスカリバー)は未来への糸を伝っていこうとしていた……



「あなたは魔王となる資質がある。魔王となるには二つのことをこなせばいい。」


 エックスは私を見て話す。

 魔王となる方法。これは聴き逃せない。


「教えて……」


「魔王となるには魔族から人間からの両方から認められればいい。そのためには…


①魔族との縁を持ち、従えること。ゴーレムは仲間となっているから、残るは鬼とドラゴンだ。上手く友好関係に持ってけばいいだろう。

②人間全体に魔王となることを知らしめる。例えば、神宮城で行われる王の式典(セレモニー)のような王が出る時に、伝説の剣(エクスカリバー)を見せ勇者を倒したことを魅せつければ大丈夫だろう。


 魔王となれば鳥篭を壊せる。魔王も私でも壊せないその鳥篭を魔王となったあなたなら破壊出来る。この責任を負担して欲しい。」



 魔王となれる。《人間と魔族の社会》を作るのと並行して行っていこう。


 そう言えば……

 伝説の剣(エクスカリバー)はこの世界で一人しか持つことが出来ない。他の誰かが持とうとしても結界が邪魔して触れられない。だから誰かに託したすぐ後にその一人が死なないといけない。


「けど、伝説の剣(エクスカリバー)って……」


「それは安心して欲しい。私はもう役目が終わった。魔王の代わりも未来への紡ぎも……。私は誰かに託して死ねるのなら本望だ」


 エックスは服の裏に隠し持っていた銃を取り出した。


 えっ───?

 まさか銃を持っていたなんて思ってもいなかったから驚きを隠せない。


 そしてその銃をセットし頭に向けた。

 引金に手を伸ばす。


「それでは君に伝説の剣(エクスカリバー)をあげよう。壊れた剣の代わりに使って欲しい。」


 カルトにそう言い残すと、引金を引いた。

 無音の部屋に銃声音だけが響き渡った。



 エックスはその場から消え、銃だけがカランと地面に落下した。その落下音が悲しく奏でる。


 さっきまで敵だったのに……。

 最後には優しく接してくれたせいで、少し哀しくなる。彼の死を無駄には出来ない。


 カルトは伝説の剣(エクスカリバー)を握っていた。




 そこで、また一人いなくなろうとしていた。

 身体から力が抜けていく。それと同時に魔王も消えていく。


<貴様は神に愛されたようだ。俺の力を我が者にしている。ただ、俺の最大レベルにはどんなに頑張っても追いつかないが……>


「私は第二の能力を手に入れたってこと?」


<そういうことだ。貴様がものにしたことで俺の霊は消去される。>


 私は土瑠亜(ドルア)みたいに二つ目の特性を持つことになった。

 そして、私がその力をものにしたことで魔王の霊は私の身体に留まれなくなった。多分、力的にもう消えるしかないだろう。


「ありがとうね────」


<鳥篭を壊してくれ。空白の歴史を知れば全てが分かる。後は任した>



 身体の中から魔王の霊が消えたように感じた。

 私は希望を託された。伝説の勇者にも魔王にも……全ては鳥篭を壊すために────



 角や翼が収縮し始める。

 そして、完全になくなら……なかった。


 小さな角に翼、少しだけ尖った両端の牙。下半分が変色した髪の毛。私の身体は少しだけ魔族の身体となった。

 そんな状況に困惑した。このままこの姿…なのかな?

 私は普通の人間ですらなくなってしまった。しかし、魔王を偽ってたのだから仕方ないことなのかもしれない。本当に人間ですらなくなるとは……



 そもそも、見た目とか大丈夫なのかな……?



「戻らなくなかったんすね。けれど、見た目は今までよりもより可愛くなったっすよ!」


 優しくカルトは投げかける。

 そういう問題か────?



 けれど、その一言が私の心を軽くしたのは事実だった。



 口を小さく開けて「ありがと──」と呟いた。


「なんか言ったっすか?」


 カルトには聞こえなかったようだ。



 私は魔族の身体を手にし、魔王の力と能力を得た。カルトは伝説の剣(エクスカリバー)を得て、モブオはナマケモノを手なずけた。後で、ペット?の名前を決めなければ……


 ゆったりと時間が流れているように感じた。







 私達の元へ駆けつける仲間達。

 カイル、日野、リリス。この勝負が"勝利"の二文字で終わったことを知る。そして、この結果は反逆者(スレイヤー)にも伝わった。

 反逆者(スレイヤー)によってゴーレムが呼び出された。



 元々、エックスは自殺するかもしれないと告げていた。そして、戦いが終わった後私達を支えることを計画していた。


 私達は大きな協力者を手に入れた。



「私は《人間と魔族が共存する社会》を作りたい。協力してくれる?」



 その答えは勿論、首を縦に頷ける結果だった。



「ただ、まずは自分達の住まいを何とかしよう。魔王城を改造しよう────」




 魔王城改造計画。

 忙しない争いの後は穏やかな時間が流れる。


 ゆっくりと着実に急ぐ。

 そんな矛盾を感じながらも、少しずつ私達は前に進んでいる。その実感が前へと押してくれる。

約1~2週間のみ超更新です。

その後は学校で忙しくなりそうなのでどうなるかは不明です。

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