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四十三、 封印されし古代魔法:いにしえの神姿

 時が止まった────



 エックスの断罪が私達を死へと追いやった。私、カルト、モブオは死んで消えるはずだった……


 私達の身体は斬られる前へと時が巻き戻っていく。



  身体だけ時間が巻き戻っている?



 お陰で、私達は斬られる前の状態だった。傷ついても消えてもいない。


「ついに来たか……魔王の加護!」


 勇者は愉しそうに話した。今までとは表情の違う、少年の頃へと戻ったかのような表情だった。



「何が起きたの?」

 私は動揺した。何が何だか分からない。しかし、エックスは理解している。私はエックスにこの状況を聞いた。

「あなたは鳥篭を壊すのに選ばれた人物。それはつまり、魔王に選ばれし者。やっとこの時が来て、嬉しく思う!」

 私には何が何だかさっぱり分からない。ただ、エックスと元魔王との間に何かがあって、それが基盤(ベース)となっていることは分かった。



 そして、ふと現れる動物の"ナマケモノ"。

 ナマケモノは壊れかけた椅子の上でまったりしていた。


 さらに、私の真下の床に謎の召喚陣が現れる。私を囲む円の召喚陣。そして、何者かの霊が私の中へと入り込んでいった。

 思わず叫び声を発してしまう程苦痛を感じる。

 自分の身体の中に、別の何者かが入ってくる。それはまさに恐怖そのものだった。




 いつの間にか私は虚無の空間に霊だけが漂っていた。

 身体の感覚がない。何も感じない。

 何も見えないし、声も発せない。ただ無の空間に漂うだけだ。


<鳥篭を壊す者。俺は魔王だ。貴様に俺の力をやる代わりに、少しの間だけこの身体を借りよう。>


 声だけが聞こえる。

 これが魔王の声────


 私に与えられる力。そのために私の身体は魔王に乗っ取られる。


<安心して欲しい。悪いことには使わない。全て、この世界のために戦うだけだ。>


 私はそっと目を閉じた。

 魔王に委ねてみよう──それに賭けようとした。







 月華の身体は未知なる変化を遂げていた。

 髪は変色し、角は生え、翼が現れる。端側の上の歯が牙のように鋭く尖り唇から飛び出る。身体は徐々に魔王っぽくなる。

 人間と魔王のハーフみたいな見た目となっていた。


「俺は魔王。月華の身体は借りた。」


 身体から凄まじいオーラが溢れていく。そのせいか髪の毛や服がなびいている。


「何が起きてるんっすか?今は月華ちゃんじゃなくて……魔王?」


 魔王はカルトを見た。申し訳なさそうに口を開いた。

「その通りだ。だが、安心して欲しい。すぐに返す。敵を倒してからな。」

 魔王は手をエックスに向けてかざす。

 それに対抗して、エックスは剣を構えた。


「やっと来てくれた。私が実力を認めた相手。私は後継を継ぐことで罪償いを行ってきた。攻めてもの罪滅ぼしによって……」



 魔王は強い。

 今なら全力でぶつかり合える。理由は無くても、また会えたんだ。元は戦い合う関係。なら、今回も戦い合って自分の思いを伝える。

「だが、今はもう違う。私は私として、勇者でも反逆者(スレイヤー)でもなくただの一個人としてあなたを倒す。全力で倒す。」

 勇者も凄まじいオーラを放っていた。


 足を少し引いて猛突撃を繰り出す。

 沢山の召喚陣が現れてレーザーや爆発、モンスターによる攻撃を行うが、全て剣を振り回して無傷でいた。

 召喚陣は魔王の下に描かれる。次の一瞬、魔王は消えた。いつしかエックスの裏を取っていた。


 召喚陣から強烈な旋風が襲う。

 エックスは一振りでその攻撃を上へといなした。天空に向かって進む旋風は魔王城の天井を壊していき空の景色を通す穴をあけた。



「強…すぎる────」


 カルトやモブオは見ることしか出来ない。


 素早い攻撃合戦。

 召喚陣から出される強烈な攻撃に伝説の剣(エクスカリバー)による激烈な攻撃。それをいなしたり弱めたり躱したりする二人。


 あまりにもレベルが違い過ぎる────


 カルトらには目で追うことすら出来なかった。手も足も出ない程の実力者同士のぶつかり合いだ。



──

───

────



 無属性の能力召喚(・・)。魔王は何でも召喚出来る。この世界には存在しないものもこの世界の凡百(あらゆる)ものだって。さらには、全ての技をも召喚することが出来た。つまり《何でも召喚出来る》のだった。

 しかし、召喚は出来ても能力を増やすことは出来ない。能力は二つ以上持つことは出来ない(はずだった)からだ。そのため、異世界、自身が元いた世界から動物であるナマケモノを召喚し"時"を操る能力を授けた。

 そんな俺でもこの世界の鳥篭を壊せない。例え元凶(ラスボス)を殺しても鳥篭はそのまま続く。出来れば元凶(ラスボス)は裏切りによって破壊されなければならない。俺では破壊出来ない。

 だからこそ、異世界から七名の人間を連れて来ることにした。まずは鳥篭に気付き、そして徐々に破壊へと導く。

 まずは一人……そして、さらに一人。


 だが、そこで伝説の剣(エクスカリバー)を持つ勇者がやって来た。


 俺の力なら簡単に倒せる。

 しかし、そんなことをすると未来でさらに悪い状況になると感じた。勇者を倒せば、人間がさらに魔族を恨んでしまう。


 倒せない。しかし、やるべき事はある。

 それは《未来》に托すこと。自分では鳥篭を壊せないのならせめて誰かが壊せるように托すだけだ。


 まずは、異世界から五名の人を連れてくる。それも、いきなり五名も呼ぶのは浅はかだと感じて、ナマケモノの力によって近い未来にバラバラに召喚するようにした。

 そして、未来、鳥篭を壊す人材が現れた時に俺の力を分け与えれるように力の大半を未来に飛ばした。


 こうして体力と能力を消耗した俺は戦いに敗れて死んでしまった。



 未来に飛ばされた俺の力───



  禁術魔法:魔王憑依



 俺の力を誰かに憑依して、その誰かを我がものとする。但し、俺の力が尽きるまで。そして、俺の力が尽きると完全に俺は消える。力だけは分け与えれるかもしれない。


 今は俺の本体は存在しない。


 召喚魔法も消耗する。限りがある。


 エックスを倒せば、このものに力があることを証明することとなる。

 それが鳥篭を壊す最善の一手だと感じる。

 こいつは鳥篭によって弾かれた元凶(ラスボス)への裏切り者の一人だ。


 早くエックスを倒さなければ、負けてしまう。こいつが今ここで殺されてはいけない。

 もう力の半分は失った……





「そう、憑依はすぐになくなっていくのね──」


 身体の半分は動かなくなった。

 月華の身体に戻っていく。身体を動かす程の力は切れてしまったか。なら、今度は自分が力を与える続けて委ねる番だ。



<すまない。その召喚陣の使い方は分かるか?>

「ええ───。感覚が覚えてるから……」

<それでは、今度は俺が貴様に力を委ねる。任したぞ!>


 心の中で会話をした。

 さっきまで身体を委ねていたけど、身体の感覚は覚えていた。どのように召喚陣を創るのか。


<来るぞ────!!>


 エックスは猛突撃を仕掛けてきた。

 早い────!

 召喚陣を創り出す時間など無かった。何せ、感覚はあってもやるのは初めてだから。

 召喚陣では間に合わないことは知っている。



 だから、、



衝 撃(インパクト) ──── 』



 私の技で攻撃を封じる。

 エックスは動けない。その間に私は召喚陣を創り出した。

 重力を消すのと同時に召喚陣から波動が飛び出した。エックスはその攻撃を喰らい後ろへと飛ばされた。


「楽しいよ。私はすごく嬉しい。」


 エックスは更に強くなっていく。オーラがこの部屋を埋め尽くす程だった。



<流石にこれは(まず)い。こちらもそれに対抗出来る技を行う。この技を貴様にやろう。ただし、この技が切れたら俺の力はなくなるけどな>


 なんだろうか?

 ただ、相当な消耗技であることは分かる。それも、持続して行う技だろう。


「何をするの?」


 思わず伺った。


<最強の強化魔法。長いことは持たない。早めに決着をつけてくれ!>

「了解────」


 そうか。

 この技で全てが決着するのか。倒せるか倒されるか。この技に全てがかかっている。



  <封印されし古代魔法:(いにしえ)の神姿>



 全身の殆どが薄い蒼翠色の軟甲な皮へと変わる。その皮には無数の記号が連なっていてその記号から所々黄色く照らす月のような黄黒の闇が漏れだしていた。その内、幾つかは雷のような黄色が(まみ)える。

 ただ、完全に蒼翠に染まった訳ではない。右足の踵、くるぶしより下は皮膚が見える。さらに、右手は人差し指と腕から人差し指までを繋ぐ皮膚のラインが見える。そしてさらに、右目とその周囲は皮膚のままだ。軟甲な蒼翠は囲むが、右目になるにつれて皮膚の状態となっている。

 髪の毛は少し黄緑色っぽさが増し、より明るくなった。

 片目は黒丸の外側に白の普通の目だが、軟甲に侵食されし目は(みず)丸の外側に黄色のおかしな目をしている。


 どこか熱情(ホット)で戦いを(たの)しんでいる印象を受ける。

 


 半分(ひだりがわ)だけが青緑に染まる。

 左半分の蒼翠の身体が一瞬凄まじいオーラを解き放つ。


 左側の青緑の身体はオーラを放ち続けている。どこか凄さを感じるものだ。


「これが私の……(しん)の姿────」

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