四十二、 無敵の亡霊エックス
エンドはまだです!
伝説の剣の威力とエックスの能力が重なり瞬殺の一撃を三人に喰らわした。剣撃の斬られた跡が月華の真上へと進んでいった。
その威力は一撃死。避けることも出来ずに直撃したのだ。
────" ゲームオーバー"
◆
逆転者、伝説の勇者、そして、今は無敵の亡霊。そう呼ばれている私の名はエックス──
最初は他の人よりも少し優っている程度のものだった。伝説になるほどの実力とは言えない。
ある日、伝説の剣に選ばれた。
武器の中で特段に性能が高い。剣という単純な武器は使い勝手も良い。なにより、絶対に壊れない、消耗しない武器であった。
誰しもがその剣を欲しがったが、その剣は一つしか存在しなかった。それも、所持出来るのは一人のみ。
伝説の剣は一人だけが所持者となれる。その一人が誰かに託すと託された者だけが所持されることとなる。ただし、託された人間が所持出来るようになるのは託した者が死んでからだ。
もし、託すことをしないで所持者が死んだら?
それは伝説の地と呼ばれる場所に瞬間的移動によってそこへと刺さる。それを引き抜くのは至難であり、その剣を巡って争いが起きる。
私はその争いで漁夫の利を得て、引き抜いた。そうして、伝説の剣は私のモノになった。
そして、その剣を持つ私はなすがままに魔王を倒しに冒険へと出た。三人の仲間が増え、森を攻略して行き、ついに魔王城へと辿り着く。
魔王は───強かった。
ただ、私達を倒しても何も変わらないと言い、魔王は私達との戦いに負けるのを覚悟して他のことを優先した。
「貴様を倒しても何も変わらない。倒すべきは王達の作った鳥篭。それに気付かずに鳥篭に踊らされている貴様を倒した所で何も変わらない。」
無知で馬鹿な私にはその時には分からなかった言葉。私はその時に分からなかったことを今でも悔やんでいる。
魔王はただ──社会的に悪とされているだけで、実際には根は魔族や人間に優しい者だった。それを気付くのは手遅れの後だった。
この世界の未来を見据え、私との戦闘を捨てて未来に希望を託した。それにより、魔王は生命を落とした。
「貴様との勝負は今はお預けだ。近い未来、鳥篭を壊すために悪に身を委ねる者が現れる。その者に全てを托す。」
あんなに強くて、優しくて、知的な者は早々は現れない。
私は何で殺してしまったのだろうか────?
植え付けられた概念に気付けない私は過ちを犯したのだ。それを何故、間違いが賞賛されているのか?私には理解出来ても理解したくはなかった。
「その者に魔王の力を一部与える。その者が誰かは知らない。貴様と戦う者かもしれないし、貴様かもしれない。もしかしたら、そんな者が現れず力を与えられないかもしれない。」
魔王の言葉が何度も頭の中で流れていた。
賢い魔王は自身の力では鳥篭を壊せないと知っていた。だから、未来に──託した。
「しかし、可能性があれば賭けてみたい。みんなの為に──」
魔王は自身の力の大半を特殊な技に使った。
そこに力を使わず私との戦いに使っていれば私は勝つことなど出来ず、今頃この世にはいないだろう。
それも魔王に従える最強のペットまで戦いに参加させず未来へと送ってしまったのも私が勝った要因だろう。
私は魔王に打ち勝ち、玉座の居ない魔王城を探索した。そして、空白の歴史を知り、真実を知った。
社会的に愚かな存在とされていた魔王。それを殺した私は英雄と讃えられた。しかし、本当に愚かなのは実際には愚かではないのにそう信じ込み、殺してしまった私自身だった。
私は間違いを犯した。
なのに、私は英雄扱い。伝説の勇者として正しい手本とされた。
────何故?
私には間違っている私が正しいとされることが耐えられない。
せめて、今からでもいいから正しいことをしたい。
私は仲間を解散させた。
私は反逆者となり、魔王の意志を密かに継ぐことにした。
私は"無敵の亡霊"と言われ反逆者の道を歩んだ。
これが私に出来る最善の方法だった。
◆
つい、、やり過ぎてしまった。
私は戦いが好きだ。魔王の加護が来るからと甘く見積もって、全力で戦ってしまった。
その加護が来ることはなく、私は彼女らを殺してしまった。
いや、前言撤回。
「来たか────。魔王の加護!!」




