三十七、 蜘蛛の魔物「放送したいけど今の状況が分からないから放送できない!!」
平穏な日々。
人々も魔族も仲良く暮らしていた。そして、平和を満喫した。全ては魔王様のお陰だった。
我はそんな魔王様に見蕩れ弟子入りした。魔王様はこんな我をも受け止めてくれた。そして、我は魔王様の下で着々と地位を築いていった。
しかし……
ある人は魔族を攻め、攻められた魔族はそれに反撃した。それを理由に魔族を危険な存在とし、人は魔族を滅ぼさんと攻め始めた。
そんな中でも魔王様は人間と魔族は分かり合えると説いた。
魔王様は「人間も魔族も一部の人が悪いだけで、その半分は優しい」と、そして、「騙され踊らされている人間が存在している」と。
魔王様は優しかった。
ある日……
魔王様は殺された。
勇者と呼ばれる存在だ。
我は殺した本人を怨んだ。しかし、その本人の一人は魔王様を特段と慕っていた魔族に謝罪した。「私は間違っていた」と、この世界の人間の中を仕切るトップに踊らされていたのだと。
その人物はエックスといった。
エックスは魔王城に住み込み、魔族を敵とする社会に逆らい、魔族に加担するようになった。そのうち、エックスに仲間ができ始めた。
この世界を正すために──動く組織:反逆者
今いる勇者は皆、トップに知らず知らずに騙され踊らされているもの。
生きるためには殺すしかない。だからこそ、仕方なく倒す。
心では分かり合えることを願って……
最近……
我の暮らす場所に沢山の勇者が攻めてきた。
彼らは魔族を殺していき、それをサバイバルゲームと称した。つまり、"遊び"だと。
我はあまりにも憤慨した。
我は攻めてきた勇者を返り討ちに殺した。
その時は皆殺しにしたと思っていた。
この森から脱出する一人の勇者。ゲームを催した勇者の中の一人だ。それによって他に四名の勇者が隠れ残っていることを知った。
逃がしはしない───
サバイバルゲームを勝手に行ったのに、不利になったからって終わらせはしない。
だからこそ、サバイバルゲームを行う!!
魔王様は曜助ただ一人。
他の魔王になりたがる人間などあまり信じられない。
我は魔王様を崇高するがあまり月華と言われる者が気に食わなかった。ちょうどサバイバルゲームに参加させられる。なら、ここで参加させて魔王になろうと考えた浅はかな考えを改めさせてやる。
だからこそ、勇者以外のグループもゲームに交えた。
そして、我は今ゲームの真っ最中。
気に食わない月華と森で対面している。
◆
私は遂に、この付近の森の魔族を束ねるゴーレムと対峙した。
「良くぞ来た。そなたに聴く!いかんして魔王を目指すのか」
強き岩の魔物は抑揚のないトーンで話した。
「私は《人間と魔族が共存できる》場所を作りたい!だからこそ、魔王を目指す。」
これが今の私の中にある一番の目的だ。
「そのために何をやって来たのだ。そして、そのために何をすべきか」
「私は勇者を狩ってきた。この世界の正義は間違ってる。その正義を正していくことが必要だと思ってる。」
「面白い。勇者を狩っていくにはきりがない。その正義を正すには元凶を倒さなければならない。しかし、そのためには実力が必要だ……」
ゴーレムのトーンは段々と強くなっていく。
「人間と分かり合えると説いた曜助様は間違った正義に踊らされているだけだと言った。そんな彼は実力が充分にあった。あんなに崇高的な者は滅多にいない。彼と同じ身分を貴様が取って代わってやろうとすることがいかに浅はかか……」
ゴーレムは両足を広げて、両腕を頭の上側に上げて力よく叫んだ。
「「この我が貴様に教えてやろうぞ!!」」
ゴーレムは少しだけ一回り大きくなった。
覚悟は決めている。全力で倒すだけだ。実力が足りないと思われているのなら、ここで実力を見せるだけだ!!
◇
「……放送の役割を任されたけど、状況が分からないんだけど」
蜘蛛の魔物は放送器具を持ちながら右往左往していた。
蝙蝠を飛ばして状況把握していたドラキュラに対して、この蜘蛛は状況把握のための技を持っていない。やれるのは蜘蛛の糸を出すだけだ。
何も出来ず彷徨くのだった。
◇
「このゲーム、私に免じて白旗して帰ってくれないか?このままではお互いに大事なものを失うだけだ。」
エックスはそう話した。
それを聞いて踵を返すセイモア。
「だってー!帰るよーー!!」
セイモアはそのまま進んでいく。
アネラはただそれを見ていた。そのことに気づいたセイモアは「何してるの?あんたも一緒に変えるんだよ」と言い、アネラを連れていく。
そして、帰り道、もたれて休んでいたラングルを強引に連れ出し勇者らはこの森を引き返すのであった。一人……忘れているような気がするが……
反逆者らは暗部のワープホールによって魔王城へと帰って行った。
先に帰って次期魔王となる者と戦うために──
カルトとモブキチは倒れた日野を持ち上げた。それを見るカイルは自力で立って歩く。
カイルは軽い負傷で済んでいたが、日野の負傷は大きかった。そのせいで今も眠る。
カルトとモブキチは伝説の勇者エックスと出会い日野とカイルを倒したことを聞かされた。そして、このサバイバルバトルを辞退することを勧めた。
その条件をカルトとモブキチは呑んだ。
その後、カルトとモブキチはすぐにカイルと日野の状況を見に行ったのだ。
◆
洞窟の中で一番広い空洞で休むリリスとモブミ。その場所にモブオがやって来た。
「すごいですね。まさかオロチを倒すなんて……」
目の前のオロチの状況を見て言う。まさに、おぉーという感じだった。
リリス、モブミ、モブオは三人で近付いた。
その時───
オロチは最後の力を振り絞り立ち上がる。
シュー ─── ─
あんなに強い敵が立ち上がるなんて……。今度はモブオがいるんだけど……。モブオがいても勝てない。モブオは戦力にならない!
さらに、背後の方にある道から勇者のエッジが出てきた。その顔は怒りの形相を示していた。
「許さねぇぞ!!」
目の前にはオロチ、後ろにはエッジ。
疲弊した三人では勝てない。
その時、天井から砂が落ちていく。
天井を見上げると上で戦闘が行われているのか衝撃によって天井がダメージを受ける。
そして、ドンッと大きな揺れが襲う。
その後、天井の岩が落ちてきた。
────ランプは岩に潰され、灯火を失った。
状況結果
モブオ✕
モブミ✕
リリス✕
オロチ✕
エッジ✕
落石のため全滅。




