三十三、 透明の焔拳と光灯の雷剣
「見つけなけられなかったぁ～」
これを反対にすると、"見つけられた～"だ。オーガの話すことは全てアベコベで真逆の意味となるのでそのようになる。
オーガは岩場の上から眺めて、岩場を分裂させて動かす。その攻撃を躱していくカルト達。
「作戦Aでいくぞ！！」
ラングルの一声によって、二人に喝が入る。
カルトは眩い光を繰り出してオーガの視界を奪った。そして、その間にモブキチはボールを投げて当てた。オーガにボールが当たると破裂し、中から小型な刃物がオーガを襲った。
「こんなんへっちゃらだよ！！」
そう呟かれた……ということは結構この攻撃の負傷は大きかったのだろう。
そして、透明になったラングルが渾身の殴りを決め──れなかった。
難なく躱すオーガ。
「ねぇ、オーラって知ってるよね？オーラを読み取れば簡単に当てられちゃう！」
ラングルの攻撃は一向に当たらない。逆に、オーガの一撃を喰らってしまうラングル。
「くそっ、オーラって何だよ？カモフラージュが全く効かないってことか？」
「そうじゃないよ！！」
オーラ……
全く不利な状況だ。
そこで頭に響き渡る声。魔族が二匹、勇者が一人殺られた。そういう放送だった。
それを聞いて本気になるオーガ。
「もう弱気になる！！土(闇)属性の能力土台変動で地面や岩場を動かせないんだよ！！もう生かしてあげる！！」
岩場は蛇のような形で分かれ始めた。そして、その蛇が押し潰そうと突撃していく。
攻撃は速くはないため避けられるが、途中で重火力銃で遠距離攻撃をされて負傷を受ける。それも、無闇に近づくと焔と雷の攻撃をもろに喰らうだけだ。
「このままじゃ勝てないっすよ！！」
「だが、オーラというののせいで攻撃が防がれる。何なのかオーラとは？」
「ワイが教えよう。オーラとは能力によって起きる大気中の塊なんや。見ることは出来ない。五感を研ぎ澄ました状態である《氣を持ってすれば感じることは出来る》んやわ。能力が発動されている場所に出現するんやな。
例えば、カモフラージュの能力を個人に使うと、使われて見えなくなっている人の周りがオーラで包まれるんや。それを感じてそのオーラの形を見ることで、攻撃を予測することも可能やんな。
ただ、急に能力を発動されると反応出来ないこともある。特に、属性道具は発動されるまでオーラを発さない。ワイの武器を上手く扱うのが勝利への道なんや！！」
「お…おう──」
勝つためには何より攻撃しなければ……。
今のまま防戦一方では絶対に勝てない。応何とか岩の攻撃を応戦しながら三人で近づきあう。
幾つかの攻撃を破壊し、いなし、避けて時間を稼いだ。
数分後、ついに本格的な前に出始めた。
「それでは作戦Bをやるぞ！！」
その一声の後、カルトは消えた。いや、オーガの目からのみ全く見えなくなってしまった。
「俺の拳は岩をも碎く！！」
ラングルは襲いかかる岩場を難なく壊していく。その後ろに続くのはカルトだった。カルトはカモフラージュに身を包み、景色に溶け込んでいた。
そして、ラングルはオーガの目の前へと駆け上がっていた。
「そんなのすぐに落とせないよー！！」
焔の殴りがラングルに直撃し、ラングルは高いところから落ちてしまった。
「任せたぞ！」
「任せられたっす！！」
そして、カルトは剣を構えて今にもオーガを斬ろうとしていた。カルトのことをオーガは見えない。
「残念じゃないけど、オーラを感じなければ困難で当たっちゃうんだよね！！」
雷の腕がカルトに当たろうとしていた。
「そんなこと知ってるっすよ！ウチの役目はこれだけっすから！！「今っす！！！」」
眩い光がオーガを襲った。オーガは思わず目を瞑る。
カルトは剣で斬りながら更に上へと駆け上がった。
「全て当たりますよ！！オーラがないんで！」
オーラに包まれる三人の影。
最早全ての攻撃を避けることが出来────
身体が動かない！！？
冷たくて痛い！！
身体を縛る氷の礫！！！
オーガは氷の捕縛によって動けなくなっていた。手もお腹も氷で固まった。
「属性玉は効果を発しない限りオーラは現れないんや！！目を奪われたアンタはオーラに頼らざるを得なくなった。そこに、この玉を投げれば避けないと思ったんや！！それが本当に避けないやんけ！これはチャンスや！！」
動けなくなったオーガは岩場から落ちていった。
俺はこんなもんではやられん！！
そんなやわな修行はしてきてない！俺の拳は全てを破壊する一撃。これで終わらす。
アッパー ───
ラングルは地面を勢い良く踏み出して宙へと飛んだ。右腕を収縮し、一発に懸ける。
ウチは魔王の仲間なんっすよ。そんな簡単に殺られるようじゃ、魔王の仲間になんかなれないっすもん。ウチも活躍しなきゃいけないと思うっすから、ここで決めなきゃいけないっすわ！
薙ぎ降ろす ───
カルトは高く翔んでからオーガ向かって落ちていった。両手で剣を握り、今にも振りかぶろうとしている。
一撃粉砕！
強烈な一打がオーガを襲う。
───その攻撃と同時に……
一矢薙殺！
鋭い一振りがオーガを襲う。
拳と剣がオーガを穿ち、オーガは回転しながら地面へと倒れていく。立つことのできない瀕死の状態へとなった。
「勝ちやな！」
「お疲れだ……」
「今度は敵同士なんっすよね─」
その場に腰を下ろす三人。そのムードは和やかだった。
お互いに倒す気はないのだろう。
「何でサバイバルなんか急に行われたんっすかねぇ」
カルトは青空に向かって呟いた。
「勇者と魔族のせいで、テメェらには関係ないからな……。ある意味被害者なんだよな……。テメェら」
──
───
────
ゴーレム及びそれに仕える魔族らを斃すため沿岸部の勇者が集まって殲滅しに来た。そして、その勇者の代表はそれを"サバイバルバトル"だと称し、どちらかが全滅するまでゲームが続くとした。
沢山の勇者は魔族の逃げ道を封じ、多くの魔族が葬られた。
魔族も黙ってはいなかった。
多くの勇者はゴーレムに太刀打ち出来ずに死んでいった。
唯一生き残ったのは五名だけで、その内一人は逃げて今現在どうなってるかは分からない。
残る四人で仲間の仇を打とうとした所、それを察知した魔族が今度は魔族側から"サバイバルバトル"を仕掛けてきた。たまたま居合わせた魔王と名乗る反逆者も参加させて。
「こういうことがあったんだ……」
「そうだったんすね──」
そんなことを聞いても何にも感情が沸き立たない。ただただ、疲弊感だけが襲う。
「ここは一旦別れた方がいいんちゃうか？」
モブキチの提案でラングルは岩場から離れることを決意した。グローブを返しに行くためらしい。
カルトとモブキチはこの岩場で待つことにした。重火力銃を返しに行こうとしても重すぎて持ち上がらない。
「仕方がない。ワイらはここで待つことにしようや」
カルトらは岩にもたれて休んだ。
◆
「さあ、お願いします──」
暗部の出したワープホールから一人のフードを被った人間が現れる。
「"無敵の亡霊"─ ─ さん」
そう呼ばれた人物は黄金に輝く剣を抜く。
暗部と共に砂地の脇の森へと進んでいった。
◇
「あれーー？ここらへんなはずなんだけどなぁーー！！」
ラーメン食べ放題。それも、十分の間に特別ラーメンを三杯飲み干せば無料になる。そんなチラシを見ながら森の中を進む。
淫らな恰好が逆に森に適応している。
彼女は目的地を通り過ぎてしまって、意図せずサバイバルが行われている真っ最中の森へと入っていってしまった。
戦況結果
砂地
M─オーガ✕
Y─ラングル〇
K─カルト〇
モブキチ〇
次は水曜日
