三十二、 共同作戦
普通に立っていれば、簡単に吹き飛んでしまう。台風のような強風が私達を襲った。
しかし、威力はなくただただ遠くへと吹き飛ばすだけだった。
そんなもの私には通じない。
私は自身に重力をかけてその風をもろともしなかった。いつしか、強風も止んだ。水辺にはナーガが見当たらないので吹き飛んだのだろう。
「おめでとう!魔族グルーヴは一名ダウン。残り六名となった。しかし、引き続きサバイバルは続く!!油断しないように」
脳内に響く声。ナーガは倒れた。
だが、アネラという厄介な敵が残っている。
思っていたよりも能力を使いすぎてしまっている。後にゴーレムと戦うとすると能力を使う余力は残しておいた方がいい。アネラは今は戦わないでおこう。
私はアネラから逃げるように砂地の方へと走っていった。
「くそっ、逃げんな!!」
アネラは逃げる私を追う。追いながら旋風による斬撃を飛ばしてくるが、私は難なく躱していった。
◆
「君達を攻撃する気はないよー!!」
軽く笑うオーガは能力によって、カルトの真横にそれぞれ二つの岩を隆起させた。そして、その隆起した岩がカルトを押し潰そうと動いた。
カルトは間一髪避けた。
「危ないじゃないっすか?もう少しで死にそうなところでしたよ!!?」
「だから、攻撃する気ないよー!!」
「絶対それ、嘘じゃにいっすか?」
オーガは岩の上で足をばたつせて軽く微笑んでいた。
身構えるモブキチにラングル、驚いて腰が抜けているカルト。
モブキチは溜息をしながらカルトに言う。
「まだ気付かんの?あやつは言うことがアベコベなんや!ほれ、言葉の終わりが"ない"で終わりすぎなんやんけ!言ってることと逆のことで考えればいい。『攻撃する気ない』っていうのは『攻撃する気しかない』ってことや!それぐらい気付けや!!だから、倒すしかないんや!!」
モブキチはオーガを見定めた。
「そうじゃないよー。不正解!!アベコベじゃないんだよ!不正解のプレゼントとして、面白くなさそうな武器で攻撃してあげなぁい!!」
岩や地面が動いていく。
急にサバイバルが行われる時に起きた地面の変動はオーガの能力だと勘づかせた。
隆起していく岩は曲がったり伸びたりする。オーガは隆起し終わった岩に飛び移った。その岩の上には重火力銃がある。オーガはその銃の引金を引く。銃弾がカルトを襲い、カルトは飛ばされた。
その攻撃の合間をぬってオーガの懐へと入り込んだラングル。
オーガは両手にグローブを付けていた。その手から片方には雷らもう片方には焔が出ている。ラングルは雷と焔の二連撃で地へと殴り叩き落とされた。
「なーんで、月華ちゃんの武器をあんたが持ってるんすかね?」
「何故、お前がアネラのグローブを身につけている?」
ラングルは拳をオーガに向け、カルトは剣をオーガに向けた。
「そこの勇者、、ここは協力して倒しに行かないっすか?」
「奇遇だな。今それを言おうと思ってたところだ!」
ラングルとカルト、モブキチはオーガを睨んだ。
「うわぁ、共同かぁ、つまらなそうー!もっと、楽しませないでぇ!!」
岩が蛇の怪物にでもなったかのように隆起していく、そして、頭から潰しに落ちてきた。
三人はその衝突で出来た砂煙に紛れ、オーガの見えない場所へと隠れた。そこは岩場の内側でオーガからすれば灯台もと暗しの場所であった。
その場所で密かに話し合う。自らの能力を知り作戦を立てるためだ。
「ウチは金(光)属性の光灯っす。目眩しと剣攻撃がウチの出来ることっすね」
「ワイは属性も能力もないんや。武器に幾つかの属性玉で敵の弱点をつくことが出来るのかもしれへんな。特に、あの隆起は多分土(闇)属性の可能性が高い。だから、水か金(光)属性の攻撃が有効やな。ただ、金(光)の攻撃は火のグローブで、水の攻撃は金(光)のグローブで防がれそうやな。そこを何とかすれば勝てるかもしれへんな」
「こっちは金(光)属性の能力カモフラージュ。対象の相手もしくは自分の周りを見えなくさせる。ただ、見えなくさせる数が増えたり範囲が大きくなったりすると能力の効果が薄れるから気をつけてくれ。」
さらにボソボソと話し合う。
仲間の武器を奪った共通の敵を倒すために──
その時に頭の中に流れる声。
敵が一人いなくなったのか。しかし、それはそれこれはこれ、まずは目の前のオーガを何とかしなければ。
◆
赤髪のおかっぱは日野に手を触れた。
「さあ触れている間だけ能力を倍増するので、その間にさっさと終わらして下さい。そういうことが出来るんですよね?」
「そーだよー!」
日野は軽く答えた。
日野は斧を上に上げた。無数の宝箱の上に出来る焰の塊。斧を下ろすと焰は地面へと落ちていく。
宝箱を炎が襲い、焼失した。
「さ…流石ですね──」
「こんなん余裕だよー!!」
「多分、能力使わなくても何とかなってそうですね。もう敵わない……です。」
エブルブは恐怖を抱きながら日野の側を離れた。
その背後にふと現れる暗部。エブルブはそれに気付くとその場で飛び跳ね驚いた。
「ど…どうでしたんですかぁ~?」
「安心するでござる。痛いことはしないので心して退場するでござる。」
そう放つと暗部はエブルブを両手で押した。押されたエブルブはそのままワープホールに向かって倒れ入っていく。
押し出す前にワープホールを繰り出したようだ。
ワープホールはすぐさま消えた。エブルブはサバイバルから退場してしまった。
◇
「答えは、砂場ではなく木の裏に隠れてましたぁ!!」
人喰い箱は呑気に独り言を発した。
「いやぁ、あんなん見たら絶対勝てないって悟るよ!ちょっと、ボクはずっと隠れていようかな」
木の裏から砂地を覗く人喰い箱……の裏を取るカイル。
「いや、もう隠れさせない──」
カイルはフェンシングの剣を横に薙ぎ払い近くの木々を切り払った。
「あー、そこにいたんだぁ!!」
日野は斧を人喰い箱に向けた。
「いや、やばいよ!待ってよぉ!!」
日野とカイルによって人喰い箱は瀕死にまで追い込まれた。
「おめでとう。またまた撃破されたよ、魔族は一人減り残る五名になった。さらに、勇者も一人減り残るは三名。さあ、奢らずに勝ち取るが良い!!」
状況結果
水辺
M─ナーガ✕
Y─アネラ〇
K─月華〇
砂地
M─人喰い箱✕
Y─エブルブ✕
K─日野〇
カイル〇
H─暗部
次は月曜日




