二十八、 オロチ、ドラキュラ、人喰い箱……マーベラス!マーベラス!!
月夜の光が雲に隠れた。
辺りは林で真っ暗。二台のテントの真ん中には巻かれた木々の破片があるが、その破片は燃えきっている。つまり、火はもう既に消えて、再びつくのは難しい。
「カルト!光、お願い!!」
「了解っす!!」
淡い光が漂った。
カルトは能力光灯で光を出せる。現在では、その光を調節することが出来る。また、淡い光のみ長時間輝かすことが出来るようになった。
「便利ですね、カルトさんの能力。自分は明日着けるサガンという村でサバイバル料理でもこなせる『食』のエキスパートを紹介することで、役に立てれば嬉しいです。」
モブオは地面の草に身体を下ろして、黒に潜む星屑を見上げて言う。
私は大木にもたれかかってモブオを見る。
「もう役に立ってるじゃない!?ここまで順調に来れているのはモブオのお陰よ!ありがと───」
モブオは前職は"運び屋"だった。
運び屋の知識を活かし、敵が出ない道かつ速く次の目的地へと行く道についての道を教えてくれた。運び屋として求められるこの二つの知識がまさかここでも役に立ってくれるとは思いもしなかった。
それも、フィロソフィス全体の地図への知識があり、最早この世界での地理感については万能である。
「魔王城への道は行ったことはありませんが、地図でなら見たことはあります。豊村から森に向かって行くのですが、そうするとゴーレムらの魔族が構える巣窟に入ります。そうすると、暗部の話たことと実際の行動に矛盾が出てくるので……」
そう言えばそうだ。暗部は魔王城で待つと言った。暗部はその魔王城に行く間に当たるゴーレムらの幹部?と戦って疲弊するのを避けるように仕向けた。なら、そのゴーレムのと疲弊させないために戦わせはしないはずだ。
そもそも、戦わないで魔王城に着く方法が一つある。
「豊村でワープを作ってくれるかもね──」
「そうですね。有難く、ワープをした方が得策ですよね」
しかし、本当にそれでいいのだろうか?
魔王になるのならワープした方が手っ取り早い。けれど、、、私の目的は魔王になることだけではない。
────《人間と魔族の共存する社会》を作ること。
ここで逃げてたらそんなことを達成出来なそうだ。どんなに大変だとしても……世界で二番目に強い"無敵の亡霊"がいたとしても、ゴーレムを倒してからでも遅くないはずだ。私達なら絶対に勝てるはず!
私達はここで逃げては進めない。
私達の目的は魔王になることではなくてそれ以上のことだから……
「いいえ、私はワープなんかに頼りたくはない。」
カルトはその言葉を聞いて驚く。その驚きを表すかのように淡い光が一瞬眩くなった。
「どうしてっすか?楽できるんすよ!!」
「私の目的は魔王になることで終わりじゃない!その次も見据えると楽は出来ない。そもそも茨の道には変わりはないんだし、いいでしょ?」
「まあ、《魔族との共存》のために先に魔族との関係を分からせる方がいいっすよね──」
魔族の社会は人間の社会よりも弱肉強食だ。
弱者にはなれないから負けられない。魔族に勝負を仕掛けられたら、それを受けて勝つ!!そして、攻めてきた魔族を従える。これが魔族のルールであり摂理だ。
「まずはゴーレムを倒そう──────」
暗闇は昇りゆく太陽によって追いやられていった。
さて、冒険の準備をしよう。試練は一つ一つ越していくだけだ。
◆
林を抜けるとそこには村が聳えていた。
海に接していて、コンクリートの地面で塞き止めている。潮風による錆や劣化を防ぐため木や鉄で造られていない家々。しかし、セラミックな建物とは逆に陸内へと進むに連れて木々の家が増えていく。
人々の出入りは程々で、その大半が主婦や魚師だ。歩きもゆっくりめでほのぼのとしている。指名手配の私達にも物怖じしずに歩く、、というより多分私達が指名手配だと言うことに気付いていない。それほどのほほーんとしている。
「先に行って事情とか話して来ますので、先に真っ直ぐ行って村の外付近で待ってて下さい。」
モブオは先に走って行った。
私達はこの町に疎い。下手な行動は迷子となり大変な目に合いそうだ。つまり、モブオの言うことは聞いた方がいい。まあ、指名手配である私達が例え気付かれていないとしても長居はしない方がいい!
私達は寄り道をせずに村を突っ切って村の外付近へと出た。
数十分後、私達の元にモブオが一人の女性を連れてやって来た。
その女性は何故か桃色のエプロンを付けている。スタイルも良い。髪は黒のポニーテール。服装は白を貴重としているように見える。
「普通に承諾してくれました。魔王とかどうでもいいから、旅に出たいらしいです。自分と同じで旅に出たくても誰も連れてってくれなかったですからね。」
モブオの紹介が終わるとその女性が前に出た。
「あたしは《モブ美》!!サガンの食堂の看板娘をやってたので料理には自身があるんやわ。能力はないですけど、長年培ってきた料理のスキルがあるわ。」
マジか──!!?
また、モブが仲間になるとは!!
モブオが口説いてモブミを旅たたせたため、多分モブミを返すと彼女の居場所はなくなりそうだ。なくならなくても気まずいはずだ。それじゃあ、返せないじゃない?
「私達は戦っていくけど大丈夫?」
まあ危険を説いて仲間に入らない選択を選ばせる作戦だ。
「大丈夫!あたしの武器"包丁"で何とかするんよ!!」
包丁──私の住んでいた日本だと凶器だが、この世界では全く凶器じゃない!!剣とか銃とかが出回る世界だからね!!
「本当に生命の保証は出来ないよ!!」
「大丈夫やね!!あたしに任せて!」
うん、仲間に入るコース確定だね!!
「よろしく───」
「よろしく、お姉さん!!」
日野は無邪気に飛び出した。
モブオがお兄さんだからモブミがお姉さんになるのは当然か。
「さあ、仲間も増えたことだし早く旅に戻ろうよ!!お姉さんの野食気になるなぁーー!!」
日野の一言で皆は旅に出ようという雰囲気が出た。私達はその雰囲気に押され旅に出て行った。
ん?
旅に出ようとした時に町の外に何か宝箱がある。それも一つだけポツンとあるので違和感満載だ。
「何だろーー!?この宝箱ーー!!」
何故ここに宝箱があるのだろうか?
凄く気になる……
「おいおい、無視するぞ!宝箱なんて持っていったって邪魔になるし、そもそも道草食ってる暇なんてないしな」
カイルの一言で私達はその宝箱をほかって行くことになった。
◇
ボクは人喰い箱。
見た目は宝箱でボクを気になって開けた所を襲うんだ。急に襲われるから、ボクの攻撃は逃れられない。
で、ボクの攻撃は何かって?
それは──能力黒箱。鋼よりも硬い身体を持ち、口の中は何でも吸い込むブラックホール。ボクが口を開けた瞬間に顔を近付けた輩はブラックホールの餌食となって吸い込まれ二度と戻ることはない。
そして、今目の前にはオロチを酷い目に合わした敵がいる。
その敵はボクを見た。気になっているようだ。
早く開けろ!!
開けて見ろ!!!
「おいおい無視するぞ!!………」
え───?
ちょっと、、、
その敵はボクを無視してそのまま行ってしまった。
待って────
ボクはビョンピョンと跳びながら追いかけるが、全然追いつかない。
待ってくれぇ────
◆
「流石、金(光)属性の能力カモフラージュは凄いですね──。四人は生き残れているんですから!」
「ラクマは無事帰れてるかな?このカモフラージュから出て安心を捨ててでも帰ろうとしたからなぁ。後、カモフラージュが凄いんじゃなくて、エブルブの能力が凄いだけだ」
四人の勇者は駄弁っている。
魔族の脅威から逃れた四人だ。
「そうですね、火属性の能力増大化。この能力が無ければ、一時期五人を隠れさせることが出来ましたからね」
「それはそうと、もうすぐ反撃を行うか──」
四人の勇者は森の方を眺めた。
次は金曜日




