二十七、 ウィニング─シャドーブロウ……何かダサイ!!
急に現れたビッグバットと謎の仮面のフード。
これは戦闘の予感がする。
ビッグバットは羽を強く羽ばたき風の斬撃を繰り出した。その斬撃は黒く募っていた。
私達と暗部は難なく躱す。
攻撃をしてきた。つまり、敵だ───
敵は風を起こして攻撃してきた。風を起こす属性は"木"だ!!
「木属性ね!なら、ダイヤルを火に回して……と」
私は重火力銃の先端をビッグバットに向けた。ダイヤルを火に変えて少し硬い引金を引いた。
ブォン────
巨大な炎の球がビッグバットを襲う。ビッグバットは無数の蝙蝠に分裂し、一部の蝙蝠はその攻撃を避けた。
蝙蝠は地上近くで戯れ蝙蝠同士で集まり集結し合わさっていく。
いつしかそこには《ドラキュラ》の姿がある。
「久々だな、この姿も。よくぞ、私の仮の姿を破り、真の姿を表させたな!!」
長身の男だが、歯は鋭く上奥歯の二本は下に唇よりも下まで伸びている程長い。長いマントを羽織り、黒色っぽい雰囲気がある。
「まさかビッグバットの正体がドラキュラなど思いもしなかったでござるよ!!」
しかし、私のイメージと目の前のイメージで違うものがある。それは、太陽の日差しがドラキュラを襲うのにドラキュラは平気ということだ。
「どうして太陽の日差しがあるのに無事なの?ドラキュラなのに」
「それは根も葉もない噂に過ぎない。多分、最初は私の属性を月だと間違えられ、そこから太陽が苦手だと勘違いされたのだろう。」
「へぇ、知らなかった……」
「私は木属性の能力影分身。影の分身が私を形成する。影の負傷は私本体に直接影響しないのに、私への攻撃は基本影が受ける。そして、影はすぐに復活する。つまり……」
「無敵ってことね────」
本体への攻撃は影が代わりに受け、その影はすぐに復活する。本体への攻撃はそのせいで出来ない。だから無敵。けれど、影が復活する前に攻めることが出来れば……
「なーんて、考えていそうだね。影が復活する前に攻撃なんて無理だろう。そもそも、この身体が全て"影"と言ったらどうする?」
そうすれば、負傷すら与えられない。いや、多分それはハッタリな気がする。
私の重力で全ての影を攻撃すれば……いける!
『 重 力 ──── 』
重力がかかる瞬間、蝙蝠に分かれ重力から脱出する個体も現れた。幾つかの蝙蝠は重力に呑まれ影となって消失した。
重力から逃れた蝙蝠同士で集まり、再びドラキュラの形を取り戻した。
「私、攻撃には敏感でね。感づき避けるのは得意だよ!」
本体には逃げられたと言うことか───
「本体が逃げたと思ってるところ失礼!そう思ってたのなら違うよ!!本体は影で影は本体になる。」
「どういうこと?」
「さっき、君は言わなかったかい?無敵─って」
何?意味が分からない。負傷を与えられないのは何で?このままじゃ、太刀打ち出来ない。
「仕方ない。教えよう。私を倒したければ全ての影を斃し給え!全ての影が集まっている状態こそが本体。」
一気に倒さないと勝てない。
しかし、重力でも一部の影に逃げられるしどうすればいいんだろうか?有効打が見つからない。
「残念だが、私には勝てない。終わりにしようか」
ドラキュラはマントを広げた。
小さな旋風がドラキュラの周りを回る。その旋風は徐々にドラキュラに近付き吸収されていった。
その刹那、ドラキュラは凄まじい勢いで私達目掛けて高速移動してくる。
『風斬撃─影攻撃』
斬撃を身体にまとった突進攻撃。
しかし、その攻撃は消えていた。いつの間にか、ドラキュラは地面に背を向けながら宙を舞う。
一人鉄パイプを上に振っているモブオ。
そうか、モブオがやったのか!!
「まさか、あんな見えない速さに攻撃を当てるなんて!!モブオ、凄いじゃん!!」
一瞬にして、モブオに対する不安が消えた。まさか、こんなにもモブオが強かったなんて!!私達じゃ反応出来なかったのに!
しかし、よく見るとモブオは目を瞑っているようにも感じる。
「いやぁ、ラッキーでした。恐くて適当に上に向かって振りかぶったら当たってるなんて!!」
てへへ、と言いながら自身の頭を摩るモブオ。
前言撤回───
あれはマグレだった。
しかし、モブオのお陰で一時の難は去ったのも事実だ。
「やるじゃないか──」
ドラキュラは無数の蝙蝠へと分かれ、再びドラキュラへと戻った。その際に、私達との距離を一定の距離になるように開けていた。
時間をかけて敵が逃げれない程の大きな重力を作る!といいたいけど、その大きさの重力だと仲間まで巻き込む。どうすればいいのか───
「ここは武士の情に免じて拙者に任せてくれないか?」
暗部は言う。
何か策があるのだろう。なら、その通りにした方が最善だ。私達は後退し暗部への勝負の活路を見出した。
「有難き!ドラキュラは拙者一人で何とか対処するでござる!」
それを聞いて憤慨するドラキュラ。
「なら、お望み通り君から殺すことにしよう!!」
ドラキュラは口を大きく開け超音波を出した。超音波は衝撃波と変わらない威力になっていた。
超音波はビッグバットが使ってきた技だ。まあ、ビッグバットとドラキュラは同個体なため出来るのは当然だが。
「そんなもんでは拙者は倒せぬ!!」
暗部は立膝を着いて身を縮めることで負傷を軽減らしていた。
「なら、この技ならどうだ!!」
ドラキュラの周りを小さな旋風が回る。その旋風を我が者としたドラキュラは速い素早さで突進した。
そしていつの間にかドラキュラは消えていた。
暗部の目の前には時空の歪んだような異次元へと繋がりそうな穴が空間に広がっていた。その穴にドラキュラが入り、そして入るといなやすぐに穴とドラキュラは消えた。
「能力によって、遠くへと飛ばしたでござる。さっきから攻撃をしなかったのはより遠い所へと飛ばすために時間をかけていたからでござる!!」
暗部の能力はワープ。二つの空間の穴を作り、その二つの空間同士を繋げる。その能力はより遠くに作るためにはより容量と《時間》がかかる。暗部はドラキュラを遠くに追いやるためにこの瞬間にかけていたのだ。
「ありがとう。助かったよ──」
私は感謝を暗部に近づいて感謝をのべた。
暗部は顔色を変えずに話し始めた。
「礼はいらんでござる。拙者ら反逆者の理念の元、今月華らにくたばって貰っては困るのでござる!」
ん?どういうこと──?
「もし魔王になりたければ、魔王城にて拙者ら反逆者を越すのでござる!ただし、反逆者側にはこの世界で二番目に最強と思われる人物が待ち構えるでござるよ!全力で越してくるのでござる!!」
つまり、私が魔王になるためには魔王城に身を構える反逆者達を倒せということか。その中にはこの世界に二番目に強い者もいると……
取り敢えず、亡霊のことだろう。一番目は最強で出鱈目のせいで実力は測れない。つまり、実力を測れる者の中では一番ということか。
けれど、負ける訳にはいかないよ────
「それでは魔王城でまた会おうぞ!!」
暗部はワープホールを通じて何処かへ行ってしまった。
勇者、ゴーレム、反逆者……
敵はすぐ目前に構えていそうだ───
ぐずぐずしていられないな……
「さあ、さっさとこの村を出よう!行くよ!!」
「そうだな!長居は無用だ!!」
カイルも同意し、それに動じて頷く仲間達。
私達は再び旅の道へと歩み出した。




