二十五、 転生した世界で何故か《モブ》として生きるはめになってしまった!?~脇役から解放されるために魔王の側近になる~
森 武雄。二十八歳、サラリーマン。普通に目の前の日々を全うする会社員。服に関する会社だが、服に対して誇れることがある訳では無い。本当に誇れることも何もない普通の人だ。
「もし転生したら、何かカッコいい人に生まれ変わりたいなぁ。何でもいいけど、死闘をかけた戦いとかやってみたいなぁ」
そんな戯言を心の中で唱える。
今日は元旦。地元の神社で人の波に揉まれながらそんなことを考えていた。相変わらず何も変わらない毎日に飽きてきたというのが、そんなことを考えてさせた要因である。
毎年恒例のせいで儀式事をやるのも適当になってきている。適当に神を仕える場所に行って奥で手を合わせてお辞儀して、適当におみくじを引く。おみくじは何と大凶だ。しかし、おみくじなんぞ箱にクジ的な板を入れてるだけの玩具であまり信用ならないと考えている。自分がその結果をまにうけて思うから、心が勝手に結果通りだと信じ込んでいるだけだ。と思う。
ようもないし後は帰るだけだ。
なんだろうか。さっきまで人がぎゅうぎゅうと集まっていて動けなくなるほどだったのに、ここではもう人の数も程々だ。
コンクリートに見渡す限りの住宅地。真横には建設中の建物。おみくじの影響が本当だったら工事中のクレーン車とか鉄鋼とかが落ちてくるだろう。しかし、おみくじなんか宛にはならな……
「危ない!!」
なんだろうか?
声をする方は建設中の建物からだ。自分の所にだけ他の影が重なり合っている気がする。
気が付く頃にはすぐそこには鉄鋼があった。
もう逃れられないじゃないか───。死ぬのか?おみくじを馬鹿にするんではなかった。と今頃後悔しても仕方が無かった。というか、後悔したところでどうとでもならない。
──
───
────
身体が重いし、目の前は暗いし、けど意識は朦朧としながらもあるし、今どうなってるんだ?
手の感覚、足の感覚、身体の感覚。
よしっ、どれもある。生きているのは確かだな!
「おい、大丈夫か?」
揺さぶられているのが分かる。
重いながらも、その重さを克服して立つ。そして、目を開けるとそこには……有り得ない服装の男の人だ。
────ダサイ!!
それだけは言える。
服に関する会社に務めていたこともあって服装を変えてあげたいと思った。
「いや、良かった。生きていて!!てっきり、魔族に殺されかけてたのかと思ったよ」
ん?魔族───?
「魔族が分からないのか?ほら、スライムとかビッグバットとか聞かないか?」
やばい──。何言ってるんだ?この人は────
BAKAじゃないのか?
「すみませんが、言っている意味が分かりません」
「この世界で魔族とかのモンスターを知らないのは致命的だろ?常識じゃねぇか」
常識だと───?
ば…ば…そんな馬鹿な!!
だけど、町の中にいるのは分かるが、その町が異国情緒だとか何かがおかしい。
「この町、いや世界について詳しく聞かせてくれませんか?」
「分からないのか?いや、記憶喪失だとすれば有り得る。よしっ、教えてやろう。この世界の名前は……」
地球だろ?
「フィロソフィス!!」
地球ですらない!!
もしかして、自分は異世界へと転生してしまったのか!!?
◆
なるほど。
ここはフィロソフィスで、勇者が溢れる程いる世界か。魔王は死に、魔族は人に怯えて暮らしている。何となく分かってきた。
この世界では能力とステータスなどがあって、それをもとに戦えるということか。死闘をかけた戦いをする勇者になれるかも!?
ステータスを覗いた。
木武男
属性 木 ー 能力 生長
レベル : 20
ライフ : 100
アタック : 30
アビリティ : 30
ガード : 30
役職 ー 運び屋
何かあからさまに脇役なんだけど!!
「能力はどんなんだったんか?」
「えーと、生長で《歳を取らない》。レベルが上がりにくい代わりに、レベルが上がりにやすい。……意味が分からないぞ?」
「なるほど、属性能力が無い奴とあまり変わらないなぁ。所謂、没能力」
そして、一つ知ることになる。
「それと、役職っていうのは何ですか?」
「おー、そうか役職もちか!!それはな、その役職を全うして生きることになるんだよ!つまり、その役職が勇者や冒険者じゃなければ、、、勇者や冒険者にはなれないってことだ。」
……。…
「もし、勇者や冒険者に無理にでもなったらどうなるんですか?」
「そりゃあ、違反として牢屋行きか奴隷かのどちらかだろうな」
そして、勇者になれないことを知った。
大凶すぎるだろ!!
ついてなさすぎる!!!
転生しても凡人には変わりなかった。それも、凡人から輝かしい勇者や冒険者になることも出来ず、役職運び屋を全うする。
いや、異世界転生する必要無かったんじゃないか?名前はモブオ!明らかに脇役感満載の名前へと転生してしまったではないか?
「もっと主人公みたいな役に生まれ変わりたい!!」
~転生したら脇役だった物語~
◆
脇役続けて数十年。
相変わらず運び屋をやってます。
そんな人生に嫌気がさし、冒険者や勇者に連れて行って貰えないか話しても……「無理」と返される。
はあ、人生に刺激が欲しい。
勇者じゃなくていい。激闘とかやってみたい。何で転生してまでして運び屋をやっているんだ?
勇者を見かけなくなった。
理由は分かる。魔王と偽る反逆者に私営の勇者は潰され、そして生き残った勇者はゴーレムという魔族を斃しに行ったっきり帰ってこない。
「はあ、いっそ──魔王の仲間となってでもいいから、この人生に刺激が欲しいなぁ」
欲しいなぁ……。欲し……
美しく星が煌めく真夜中に一人呟く。その時に、彗星のようなものが落ちているように見えたのは気の所為だろうか?
流れ星なんていうものは信じていない。そんなもの人間が勝手に決めつけたことだろう。ただの迷信だ。
次の朝。
目の前に通るのは魔王と偽った反逆者ではないか!?
もし人生に刺激を加えるのなら今だ!!
役職とは違う職に就くのが王に反逆する?───
反逆者につけば、それだけで王への反逆じゃないか?いっそ、自分の人生なんだ!今変われば、人生をやり直せるような気がする。
今、生まれ変わる────
魔王と偽る?いや、本当は魔王なのかも!?
自分はその魔王と偽る者に賭けようじゃないか!!
自分は魔王に連れて行って欲しいと声をかけた。
そういや、「嫌だ」と魔王側から断られる可能性もある。相手は仲間で話し合う。何を話しているのだろうか?お願いだから雇ってくれぇーー!!
「本当にいいの?私達は魔王よ!死をも覚悟しなきゃいけないし!この世界を敵に回すのよ!!」
死闘?勿論、それが望みだ!
敵に回す?どうせこの世界の者じゃないんだし、まあいいや。このまま何もなく運び屋を続けていくよりかはマシだ!!
「本っ当に大丈夫です!!」
「は、はあ。」
困り顔をする。しかし、自分のその勢いに負けたのか仲間入りを承諾してくれた。
「私は月華。今は魔王じゃないけど、いつか《魔王》となる者よ!今の目標は《人間と魔族が共存する社会》を作ること」
「自分はモブオ。運び屋を辞めて魔王の仲間になった者です。能力は没能力で使い物にはなりません。よろしくお願いします。」
それを聞いた瞬間、「えぇ…」という表情をする次期魔王達。そりゃあ、能力なしで使い物にならないと言ったらそうなるよね?自己紹介ミスったぁ───!!
~~転生した世界で何故か脇役として生きるはめとなってしまった!?《脇役から解放されるために魔王の仲間になる》~~
祝PV1000
次は水曜日更新




