十五、 最悪の相性
「越えてこい」
私は回転鉄具を投げて攻撃した。土瑠亜目掛けて飛んでいく。
そして貫き、再び戻って来た二回目の回転鉄具の負傷を受けた。はずなのに……
全く無傷な顔の土瑠亜───
「俺は土(闇)属性の能力強化。土を纏うことで単純に攻撃力と防御力を上昇させる。そんな攻撃、効かないな!!」
回転鉄具が効かないとなれば、残るは能力しかない。いや、能力があれば何とかなると私は踏んでいた。
『 重 力 ────』
土瑠亜に円形の重力の負荷が襲いかかる。はずだった。
「それも効かないな!!」
何故か、私の重力は消えていた。
「それと俺にはもう一つだけ特別な能力を持っているんだ。それは能力無効化。俺の周りにある能力を無効に出来る。残念だが、俺には能力は効かない!」
そう、私の攻撃手段となる武器も能力もどちらも通じない。まさに、最悪の相性だ。
その頃、その下の階でギルゴードとモミナが走っていた。
「って、何で王女がここにいるんだわさ」
「それもドレスが少し汚れてないか?負傷受けてんじゃねぇか」
「本当だわさ!!」
ギルゴードは王女に近いていった。
「立てるか?」
「立てますわ!助力なんて入りません」
王女は差し伸べられた手を振り払った。
ギルゴードとモミナ、王女は四階へと続く階段へと来た。
「それと、階段は防いでいた方が良いよな……」
「あんたにしてはナイスアイデア」
「いつものことだぜ!ナイスアイデアは!!」
「嘘つくな!だわさ」
部屋に入ってきた三人。私の後ろを通り王の元へ着く。
「さあ逃げましょう。王よ!ここは危険です。」
「そうか!仕方ない。ここは引く」
「そこの魔王と名乗る者よ!覚えておけ。そして王の式典を台無しにしたことを悔いるがよい。」
王の椅子が横にズレると、隠し通路が現れた。王、王女、側近、ギルゴード、モミナは隠し通路に入ると、その通路を絶った。
「これで二人きりだな。後はお前を斃すだけだ」
◆
「一気に抜けるっすよ」
霧が周りを覆う。
……が、突如なる突風が霧を払う。
霧の次は眩い光が襲う。
「よしっ、通れた。後は全力で抜ける!!」
霧と光でゲイルとベティを抜けて、走り続けるカルトとリリス。そして、四階へと続く階段前へと逃げたのは良かったのだが……
「なーんで、階段が潰れて進めないの?」
階段が使えなくなり、そうなると行き止まりで戻ろうとしたらそこにはゲイルとベティの姿。
「やべぇ、っすわ」
「リリスが新たに獲得した新技の霧で、何とか切り抜けられない?」
「多分無理っす。ベティの属性は木で能力は風なんすわ。風魔法で霧は払われるっすよ!」
「えっ?やばくない?」
「うん、やばい」
『風魔法:無数斬撃』
鋭い斬撃がカルトやリリスを切り裂いていく。
「ちょっと、やばい────」
◇
土瑠亜の剣を私は両手で握る回転鉄具で止める。
剣と回転鉄具が衝突する度、私は小さく後ろに飛ばされる。段々と土で強化されていくせいで飛ばされる具合も大きくなっていく。
「遅い────」
剣が私を刻む。
負傷が蓄積されていく。このままではやばい。私は思わず距離を取る。
『 重 力 ──── 』
駄目元で能力を使ってみた。その重力もすぐに消えてしまった。
すぐさま回転鉄具を投げて応戦。回転鉄具は土瑠亜を貫いた。
「負傷を受けた!?」
戻ってくる回転鉄具でも負傷を与えられた。
「なるほどね───」
「能力無効化って、、、《自身の能力も無効化》してしまう発動型の能力だったのね!」
能力を無効化する時に強化した土も同時に消えていたことで察することが出来た。
「正解だが、分かった所で俺は倒せん!!」
武器での攻撃は強化で守られ、能力での攻撃は能力無効化で守られる。反応素早さは土瑠亜の方が上。
やるなら、武器と能力の同時攻撃だ!!
「全ての攻撃を一つ一つ対策していく。手の内が分かれば俺のもんだ!!」
回転鉄具での防御を強化によって上回る。このままでは殺られる。
いつの間にか壁にまで追い込まれていた。すぐそこには剣を振りかぶった土瑠亜が───
剣を水平に薙ぎ払う。
斬られて宙を舞い、そして落ちる─ ─ ─
スサッ─────────
火曜~木曜は一旦停止




