十、 死にたくなければ殺せ!!
戦闘シーンが増えます。
やっと、そのステージに進めた。
死にたくなければ……強くなれ!
この世は弱肉強食。弱ければ失い、強くなれば何かを知らずに奪っている。
どうやったら強くなれる?
この世界で強くなりたければ、、、 " 殺せ "
殺して殺して、経験値を手に入れろ!この世に意味の無い死はない。
敵を自分の糧としろ───!!!
◆
「霧が出ない……。…」
「そりゃあ、口から出される霧が外気に触れた瞬間に水になるからじゃのう」
アマリリスとリリスの能力が封じられた。
霧は結局は水だ。大量の霧が集まって水となる。水の中に霧を作ることはできず、霧は水に吸い込まれる。
「能力の力差はこっちの方が上だのう」
能力水浸しの能力で身体全体を水浸しにしている。口には水分の塊が覆っている。
いつの間にか、地面には水溜りが出来ていた。
シマッ──タ───────ッ。
バチバチバチバチバチッ ─ ─ ──
ヌアゴスは杖を水溜りに落とした。その杖から電撃が放たれる。水溜りを通って電撃が私達を襲う。
リリスだけは咄嗟に大木に銛を刺してぶら下がり、地面に接していなかったので負傷を受けなかった。
「耐えるとはなかなかやる…」
油断した────
だが、ここで斃る私ではない。アマリリスもそうだった。まだ立ち上がる。
「けど、どうしてあんたは負傷を受けてないのかな?」
「そりゃあ、ゴム靴を履いてるからだよ」
「そうか……」
「ゴム靴のなかったらどうなるかね。もう一度やってみるかのう」
ヌアゴスは再び杖を下ろしかけた。杖の先端は電気が通っていて、その電気音がする。
「今すぐ翔んで────!!!」
私は叫んだ。リリスもアマリリスも私と同じくその場から跳んだ。
バチ バチバチ─ ─ ──
水溜りを通って地面全体に通る稲妻。その音はまさに轟音のようにも感じた。
それを空から眺める私達。私達はゆっくりと下降しながら、その稲妻を眺めていた。
『 月 重 力 ──── 』
重力の負荷を大幅に減らすことで高く長く跳ぶことが出来る。六分の一の重力にすることで電撃を躱したのだ。
だが、着地と同時に狙って来るだろう。そしたら、電撃から逃れられない。空中にいる時が決め時。
『 武器重力変動 ──── 』
回転鉄具を斜めに投げた。
普通だったら斜めに投げれば戻ることなく落ちるだけだろう。それは、上から下へと重力がかかっているから。地面と並行に投げないと重力の負荷によって傾き落ちる。
だが、その回転鉄具には重力がかかってない。
回転鉄具がヌアゴスを貫いた。そして、戻ってきた武器を取る。
負傷を受けたヌアゴスの動きが遅れた。お陰で、地面へと着地したけど攻撃を喰らわずに済んだ。
よしっ、このままイケル!!
えっ────────?
突然私は誰かからか背後から剣で斬られた。いや、誰なのかは予想がつく───勇者だ。
「何故、撒いたのに……」
「残念だ。こっちが一枚上手だの。電撃を繰り出せばその音と光が戦闘の目印となる。増援が来るのも当然だろう」
そうか、ヌアゴスが一枚上手だったのか。
「ほほっ。油断している間に稲妻でも差し上げようか」
ヌアゴスは杖を上に上げた。杖の先端はバチバチと鳴っている。勇者達の靴はよく見るとゴム製。負傷は私達だけ。
まさに、絶体絶命だ。
◇
斧は盾に向かって振り落とされた。盾に接触すると斧は後ろに吹き飛ばされた。それを離さなかった日野も飛ばされた。
空中で一回転して体制を持ち直す日野。
「へぇ、真正面からじゃ負傷を与えられないんだね」
「そうだ。全ての武器は盾を狙う。そして、守られて弾かれる。勝ち目はない。」
「ふーーん。背後ががら空きだよ」
「背後などにはコイツラが行かせない。」
日野は手に持っていた斧をスナップして投げた。斧は回転しながらザーキから大きく離れて進んでいった。
「どこを狙っているんだ?馬鹿じゃないのか?折角の武器を投げるなんて……ッぐは───」
ザーキの背中を貫く斧。その斧は日野目掛けて飛んでいく。日野は見事にその斧を掴んだ。
「僕の武器は回転鉄具にもなるんだよ!!試したかったんだよねぇ」
「だが、もうその攻撃は通じない。対策すればいいだけのことだ。」
「もういいよ。やりたかったことはやれたし。普通に殺して上げるね!」
ザーキのいる所だけ翳り始める。周りは明るいのにそこだけ日陰とは何事か?ザーキは上を見上げた。そこには、焔の塊がある。
それも段々と大きくなっていく。
「じゃあね───」
日野は斧をその場で振り落とした。
焰塊が落ちていく。真下にいた勇者らは炎の餌食となり消えてしまった。
「アキル、ネージ……。助けるために押してくれてありがとう。」
ザーキは後ろにいた勇者にその場を離れさせられて助かったようだ。
「その分まで生きるよ……」
ザーキは傍らの森へと入って逃げていった。追うのは危険だ。そのため、ザーキを追うことは出来なかった。
「前が空いたよ!早く行こう!!」
カイル達は道を真っ直ぐ走って行った。
ダン────ッ。
銃弾がリリスを貫き、撃たれたリリスは消滅した。
「ちっ、背後の狙撃手も厄介過ぎるだろ。多分、場所的には壱宮村の一番高い建物の上だろうな……」
「ほんとだ、見つけたよ。狙撃手」
「えっ」
「目がいいからさ……」
サキュバスは遠くにいる狙撃手を捉えた。
「だが、攻撃は出来ない。どうしたら負傷を受けずに済むんだ?」
敵を見つけても、遠いから何も出来ない。
「多分だけど、私ならイケルかも!?飛んでいけるかもしれなくてさ。ただ、その間に撃たれたらヤバイよね……」
「それは任せて下さいっす!!狙撃手の目を奪えばいいっすもんね……。ウチが光灯を使っている間に狙撃手の懐に入って武器を壊して下さい」
「分かった」
サキュバスは飛んで行った。
「皆さん、目を瞑っておいて下さいっす!」
眩い光が全体的に放たれた。その光が狙撃手の攻撃を妨げる。光が邪魔して狙いが定まらないのだ。
「私の羽なら飛べる!!」
サキュバス、リリスの羽は小さくて飛べない。それは、空を飛ぶのを恐れて飛ばないから衰えているのだ。空には私達を喰らう魔族もいる。人間の攻撃を受ける。脅威だらけだ。
だから、飛ばなかった。
これは、付いているだけのただの飾りだ。
だけど、私は違う。無邪気で無知な私は飛んで遊んでいた。羽が小さいせいで長く上手く飛べないけど……少しぐらいなら飛べるはず!!
「やっと、、、捉えたっ!!」
銃はサキュバスを捉え、銃弾がサキュバスに直撃した。
サキュバスはいつの間にかケアンの目の前にいた。だが、そこで光の影響が薄れ捉えることに成功したのだ。
「こんなんでは死ねない───」
サキュバスが死にものぐるいで手にした銛を振り落とした。その銛が銃を貫いた。
「狙撃手の攻撃……は防い……だ。役に立てたかな……?」
サキュバスは絶滅した────────
「金(光)属性の能力ポインターで遠くにいる敵もピンポイントで狙えるこの力も銃がなければ何も出来ない……」
ケアンは高い建物の上で敵に背を向けた。
◇
杖が宙を舞う。
「間に合った。」
リリスの銛がヌアゴスの持つ武器を吹き飛ばしたのだ。
「不意に来られると対処出来ん」
「油断してるのはあなた達もですよ!」
ヌアゴスの油断の合間をぬって、援軍の勇者は近くの敵は重力の餌食に、遠くの敵は毒霧の餌食となって消えた。
形勢逆転────────
及び腰のヌアゴスに何度も銛で突き刺すリリス。ヌアゴスは大木を背に座り込んでしまった。ほぼ瀕死である。
「長居は無用です。早く合流しましょう。早く終わらして下さい。」
リリスはヌアゴスのいる範囲に毒霧を吹きかけた。毒霧の中に佇むヌアゴス。
彼はもう毒の俘だ。
森を抜け道に出た。
少し進むとカイル達と合流出来た。
「ごめんなさい。他の皆を守れなかった……」
「仕方ありません。これはあなたのせいではありません。」
後ろからは勇者が追ってくる。
「私が命を張って止めておきます。早く逃げなさい。」
立ち止まるアマリリス。走っていた私達も気付いて止まったがその間に隙間が出来る。
「それと、次のトップを今譲ります。これを受け取って下さい。」
古びた銛を持つリリスは隙間を埋めるように前に出た。
アマリリスは胸に付けていたペンダントを取るとリリスに向けてペンダントを手放した。ペンダントが空中を飛ぶ。
「これは、私達のトップの証であり進化に必要な物です。さらに、一族の誇る寶であり、私の形見として受け取って下さい。」
アマリリスはすぐにでも死ぬかのような目で呟いた。
「ペンダント貰っておくぜ!!!」
アマリリスとリリスの間に急に現れる─ゲイル。その間を漂って飛んでいたペンダントは今、ゲイルの手の中にあった。
「俺は勇者であるけど元盗賊なんだ。奪うのは好きだし得意なんだ!!」
「ペンダントじゃ奪い足りねぇから、お前らの生命を奪わせて貰うぜっ────!!!」
圧倒的なバトルシーン……が未来に待っている!?
勝負の舞台は──神宮城。




