第一話 オカ研部(前半)
今回は長め。
いつもどおりに学校が終わり家に帰る。
部活には入ってないが、友達と遊んでいたため今日は帰りが遅かった。
明日からは三連休。宿題もその分多いが、少しぐらい遊んだって大丈夫。
夜のうちに少しずつ消化すればすぐに終わるから。
机の上にバックを置き、中身をすべて出す。
今日は何をやろっかななんてのんきに考えていた。
しかし、バックの中身を見て私は青ざめていった。
「宿題がない!!」
浮かれすぎか、単なるドジか。
その時のことなんて思い出せないが、宿題を学校に忘れてしまった。
(まずい、まずい、まずい、まずい)
頭をぐちゃぐちゃとかき回す。
通常の土日であれば、誰かのを写せば何とかなる。
しかし今回は違う。
三連休に限ってこんなことになるなんて。
そんなことばかりが頭の中をグルグルと回っている。
「朝の時間じゃ終わらない...どうしよう」
絶対なるピンチ。
そんな時だからこそ思い出す。
携帯の画面を見る。
今日は、月一で回ってくる学校管理人がいない日。
「よし、ついてる」
私は、日が完璧に落ちた学校へと駆け出して行った。
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毎月この日に男子生徒が一階東側の窓を開けている。
この学校のだめな伝統の一つ。
でも今回はそれに救われた。
電気をつけるのは不味いと思い、スマホのライトをつけながら校舎を進んでいく。
いつも過ごしている場所なはずなのに、暗いだけで怖い。
私は早歩きで教室に向かった。
「よし、あった」
教室、自分の机から宿題を取り出し持ってきたリュックに詰める。
「さ~て、帰りますか」
暗さによる恐怖感も達成感により消され、目も暗闇に慣れてきた。
軽くなった足取りで入ってきた窓に向かう。
二階にある教室なので、階段を降りなければいけない。
当たり前のことだ
しかし、会談には大量の‘目”があった。
別に頭がおかしくなったわけではない、字体もあってる。
会談の中間部分、ちょうど暗くなっているところに無数の赤く光る‘目”がこちらを見ていた。
それを見てすくみ上り、思わずUターン。
階段を駆け上る。
その音につられるように‘目”もまた動き出す。
私は目に涙を浮かべながら逃げた。
4階建ての階段を一気に上がり、渡り廊下。
まだ追ってくる。
考える暇なんてない。
恐怖が脳内を支配し、余裕を全く与えてくれずただ走ることにすべてが注がれる。
2棟の階段を一気に駆け降りる。
外に出ようとして、旧校舎と2棟の渡り廊下に出た。
しかし、見えない壁のようなものがある。
すぐ近くまで迫った赤い目が背に迫る中、私は諦め旧校舎へと入っていった。
そこで、後ろから追いかけてくる者がはっきりと見えた。
ネズミ?
黒くて大きなネズミ。
歯は鋭く、目は赤く光り、強い血の匂いを放っていた。
そんなのが、校舎の壁や天井を覆い隠しながら迫ってくる。
ただただ、恐怖でしかない。
旧校舎の最上階を目指す。
三階建て階段を駆け上り三階廊下に出ると、突き当りから光が漏れているのが見えた。
(誰かいる)
「助かった」そう声に出し、走り続けた足に鞭打つように力を籠める。
わたしは何のためらいもなく戸を開けた。
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旧校舎の木製扉が開く重い音がして、いきなり少女が入ってきた。
膝に手をつき、荒く肩で息をしている。
まるで....
まるで何か恐ろしいものに追っかけられてたみたいに。
まあ実際そうだと思う。
「あの...お嬢さん。どうされました。」
そう声をかけたのは、俺の一番の友である大扇クラマだ。
眼鏡イケメン、成績優秀、スポーツ、どれをとても優秀な奴。
親友でありながら焼けるぜ、全く。
「い、いきなり...ナニカに...追っかけられ...て...」
クラマの一言に息を切らせながら返答している少女。
顔を上げないとこをから見るに、まだ落ち着かないのであろう。
そんな彼女にクラマは優しく、席を出す。
もともと大きい部屋ではなく、いつも授業を受けている教室の半分ぐらいしかないこの部屋。
背中をさすりながら、ゆっくりと席に座らせ、水を差しだす。
...俺か?
座ってボケーとそれを見てた。
さすがイケメンコミュ力がちげー。
少女はやっと落ち着いたのか、ゆっくり顔を上げた。
そのとたん、「あぁ!」と俺とクラマを見て叫ぶ。
何その第一声、俺の顔へん?
「クラマ君にレイ君じゃん。何でここにいるの?てか、ここから逃げないと」
彼女は、頭の中を整理しきれずにあたふたし始めた。
ねぇ、ちょっち待って?
クラマはいいよ、イケメンだし、知ってても。
なんで俺をしってるの?
考えても分からないため、クラマにヘルプを出す。
「えーっと、誰?この子」
するとクラマがあきれ顔をし、頭いたポーズをとる。
「ハァ、若は本当にボッチ気質なんですね。」
えっ?何?知り合いだったっけ?
「同じクラスの一葉舞さんです。もうすぐ一か月たとうとしてるのにクラスメイトの名前を覚えてないとは...。」
「しょーがねーだろ!クラスのやつの名前なんぞ憶えても、使う機会なんかねーんだから。」
「流石ボッチ。」
「ん゛だと!」
いがみ合っていると、「あ、あのー。」と、俺たちを止めようと一葉さんが。
あ、そうだった。
「すみません。うちの若が。」
明らか落としにかかるぐらい顔を近づけながらクラマが、機嫌取りしようとしてる。
おーい、そんなんじゃそいつがパンクす「キャー」バタリンコ
ハァ、言わんこっちゃない。
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クラマのせいで一葉さんが気絶してしまった、クラマのせいで。
あ、大事なんで二回言いました。
その為十分ほど放置。起き上がってきたので、話を聞くことにした。
「で、何に追っかけられてたんだ?」
向かって正面に座る俺と、左のクラマの目をチラッと見る。
彼女の中で今さっきのことは思い出したくないという思いがあるのだろう。
数秒の沈黙があった。
「辛いだろうから、無理はしないで。」
クラマもその暗い表情に助け舟を出す。
しかし彼女は「大丈夫」と返した。
深い深呼吸の後。一葉さんは下を向き、今日の出来事を話し出した。
次回をお楽しみに。