異世界転生トラックが勝負を仕掛けてきた。
横断歩道を渡っていると、信号を無視したトラックが突っ込んできた。
俺は位置的によけられる。
だが、目の前意にいる幼女はそういうわけにはいかないだろう。
――やるしかない。
俺は急いで目の前の幼女を突き飛ばす……のではなく抱え上げる。時間がゆっくりと感じる中、相対的に重く感じる幼女を必死に抱きかかえ、全力で前へと足を動かす。地面に到達した足が変な音を立てたが、痛みは無い。遠慮なく次の足を前に出す。
その瞬間、真後ろを通ったトラックが豪封を巻き起こし、幼女を抱えることで重心が変わっている俺はひねった足で体を支えることが出来ず、何とか幼女を地面にぶつけないようにその場に倒れこんだ。
危機一髪成し遂げた。その安心からか、すぐに全身を焼き尽くすかのような痛みが襲った。思わず幼女から手を放しつつも、歯を食いしばって痛みと絶叫を抑える。
ドッゴオオオン!
遠くから、トラックが何かに激突する音が聞こえる。
俺は勝利を悟った。
耐え難い痛みをこらえつつも俺の口元には笑みがこぼれる。
視界の中で何かがキラキラ輝く。それはまるで天気雨のように輝き、降り注ぐ。
その最中、俺の中の何かが危険を察知し再び世界はその動きを遅くする。
見渡すとトラックが電柱に衝突し、その電柱が近くのビルの窓ガラスを叩き割りながら倒れているのだ。状況から察するに、根本付近で折れた電柱の上部が衝突された側と反対向きに倒れたが故にこちらを向いているのだろう。幸いなことに電柱はこちらまでは届かない。
しかし、薙ぎ払われる飛び出してきたガラスは別だった。
俺はまたも幼女を守るため、覆いかぶさるようにしてガラスから幼女を守る。
その途端に天に向けた俺の背中や太もも、ふくらはぎに殺気とはまた別の鋭い痛みが走る。
辺りにもバリンバリンとガラスが降り注ぎ、割れる音が響く。
その音が鳴りやむ前に俺は意識を保てなくなり、幼女にもたれかかるように倒れ、意識を失った。
この物語はフィクションです。
どうしても幼女を抱きかかえてみたいと思っても決して真似をしてはいけません。
幼女に会いたいなら、トラックにひかれて異世界に行った方がいいかもしれません。失敗していたら幼女も死ぬ事になるので。