No. 06 年下の彼氏?
休日という事もあり、がっつり寝てました。更新遅れちゃってごめんなさない。
今回、登場人物が一気に三人も増えます。
あれから、私と明希ちゃんはヒカルさんと別れて普通に帰宅すことに。別れ際に礼を告げる私達に「またお店においで、いつでも歓迎するから」と笑顔でヒカルさんに見送られた。
帰宅した私は翌日から仕事ということもあり早めに休み、明希ちゃんも不動産巡りや買い物をするのだと言って床に着いた。
翌朝、私が起きると明希ちゃんは既に出掛けていて、私はそれを気にする事無く、何時もの時間に出社した。
「はぁ、疲れたぁ」
昼休みを告げるチャイムが鳴り、仕事が一段落して大きく身体を伸ばしたとき、同僚の真珠がニヤけながら私の元へとやってくるのが目に入る。
「晴香ぁ~。休み明けなのに、何でそんなに疲れてるのぉ?」
この高橋真珠は同期入社で同じ課に配属された同僚であり、私と同じ趣味を持つ社内での善き理解者でもある。
その真珠が何故にニヤけた顔を私に向けてくるのだろう?
「ねえ、真珠?ニヤニヤしてて何か気持ち悪いんだけど?」
そんな辛辣な私の言葉を受けても、真珠のニヤ顔は止まらない。
「晴香ぁ、アタシ聴きたいことがあるんだけど。まあ取り敢えず先にお昼ご飯にしようか」
「真珠、ナニを企んでるのか知らないけど、そのニヤけ面ホントに気持ち悪いからね!?」
会社の食堂に着いた私は、弁当箱の入った巾着を下げて適当な席を探す。真珠はいつも通り食券を買ってBランチを注文している。
「佐藤さん、こっちこっち!」
この社内に於いて「佐藤さん」といえば私のことである。今更ながら、私のフルネームが佐藤晴香だというのを作中では告げてなかったね。読者のみなさん、コンゴトモヨロシク。
「佐藤さん?今、誰と話してるの?」
声を掛けられた方向には、二人の女子社員がテーブルに着いている。私に声を掛けたこの子は、同期入社で課に配属された吉本佑実。小柄で女の子らしく、クリンとした瞳が特長の社内人気ナンバーワンの女子社員である。
「いいや、気のせいじやないかな佑実。私は誰とも話してないけど?あ、この席いいかな?後で真珠も来るから」
「いいよー!あっそういえば今朝、高橋さんが面白い話しがあるから、お昼一緒に食べようって言ってたかも。なんだろね、田中さんは聞いてるの?」
佑実ちゃんが話し掛けた、隣の色っぽいお姉さまは田中朱美という名前で、佑実ちゃんと同じ課の先輩。入社したときの社内研修でお世話になり、その後も仲良くしてもらっている。
「こんにちは。朱美さんも、真珠に何か言われたんですか?」
「ハルちゃん、私は何も聞いてないわよ?ハルちゃんはマミちゃんから何か聞いてるの?」
真珠の言う面白い話とはいったいなんだろ?あの私に向けられるニヤけた顔からすると録なことじゃなさそうだ。嫌な予感に身震いしていたら、件の真珠がBランチの乗ったトレイを持ってこちらにやってくる。
「みんなお待たせー!さて、ちゃっちゃとお昼食べようぜぇ」
私の向かいの席に座り、もぐもぐと昼食を食べ始める。今日のBランチはアジフライと香草サラダにワカメスープとお米か、カロリー高そうだな。
私の今日のお弁当は、ワカメと鮭フレークの混ぜご飯にノンフライのクリームコロッケ、それに玉子焼きとインゲン豆の胡麻和えとプチトマトで彩りも良くローカロリー。
「ハルちゃんのお弁当、いつも美味しそうだね」
「佐藤さん、毎日お弁当とか大変じゃないの?」
「晴香のこれは、もう趣味みたいなもんだよね」
朱美さん、佑実、真珠と口々に私のお弁当を褒めてくる。ふふっ、こうゆうのもお弁当作りの楽しみの一つだよね。
「このお弁当、作るのに五分もかかってないんだよ。クリームコロッケは昨日の晩ご飯の残りだし、混ぜご飯はホントに混ぜるだけで、インゲン豆を茹でてる間に玉子焼き作ってプチトマトは水で洗うだけだしね」
私がお弁当の話をしだすと、三人はばつの悪そうな顔になる。
「ハルちゃん、ホントに料理好きなのね。わたし、自分じゃ滅多に作らないわ」
「田中さん、私もです!」
「晴香の唯一の特技とも言えるのが料理だもんねぇ」
この三人は料理がダメらしい。私も別に得意という訳では無く、短い時間で料理を作る『時短クッキング』が得意なだけ。
「今どき料理くらい出来ないと結婚するにしても、しないにしても老後が大変だよ?」
私の言葉に朱美さんと佑実が、うっと怯んでいる。しかし、真珠だけは顔をニヤニヤさせている。
「そうだよねぇ、アタシらと違って晴香には食べさせる人もいるみたいだし?ねぇねぇ、年下の彼氏ってどんな感じなの?」
「はっ?」
真珠はいったい何を言ってるんだ?私に彼氏?そんな物体、この二年ほどお目にかかって無いんだけど?
「アタシこの前の土日に新宿でやってた、オールナイトのイベントに参加してだんだけどぉ、その時に晴香が年下の男の子と一緒に居るの見たんだよねぇ」
土日に明希ちゃんと出掛けてたの見られてた!?いや、別に疚しいことは無いんだけど、あの格好の明希ちゃんと並んで歩いていた事をなんて説明すれば…
「えーっ!それ、ホントですか高橋さん!?ねぇねぇ、相手はどんな感じだったの!?」
「あらー、ハルちゃんったら年下の男の子捕まえたのね」
「ちょっ、待って!それ違うから!?」
口々に勝手なこと言い始めた二人に、思わず待ったをかけるけど、その先なんて言えばいいのか躊躇する。
「まぁまぁ、聞いてよ二人共。アタシが土曜にイベント行く前に、晴香が男の子と歩いてるの見たんだよ。それでオールのイベント終わって朝方に帰ろうとしたら、晴香がまたその男の子と一緒に居るのを見たの。しかも、前日と同じ服装だったんだよ!」
真珠の暴露に思わず吹き出しそうになるが、ぐっと我慢する私。ここで、変なリアクションをすれば真珠の思い通りになるだけだ。
しかし、それの私の様子に肯定したのだと勘違いした、朱美さんと佑実さんの二人がキャーキャー騒ぎ始める。
「えっ、お泊まり!?佐藤さん、お泊まりしたんですか!?」
「やるわねハルちゃん!今まで何の前触れも無かったのに、急に年下男子とお泊まりだなんて!」
段々と状況が悪くなってきた。明希ちゃんのことを説明するにしても会社でするような話じゃないし、明希ちゃんの意思も確認せずに他人に勝手にしていいような話でもない。
どうしようかと考えあぐねるけど、良い案が浮かばない。
こうなったら、明希ちゃんの身体のことは隠して有りのままを伝えてみよう。
「ちょっと待って、あの子は女の子だからね!?弟の元カノで来年からこっちに住むから、その為の下見と準備で私の所に泊まりにきただけ!それと、あの日はちょっとふざけて男装して出掛けたいって言ったから、仕方なく付き合ってただけだから!」
早口でまくしたてる私の様子に、三人は顔を合わせて何やら話し始める。何とかなったかな?と胸を撫で下ろした所で、徐にスマホを取り出した真珠が再びニヤけた顔を私に向ける。
「へぇー、これが女の子なんだ?」
そのスマホの画面には、男装してすっかり男の子となっている明希ちゃんの姿が写し出されている。
「佐藤さん!?この子、中高生くらいじゃないんですか!?」
「ありゃあ、ハルちゃん条令とか大丈夫なの?」
「ちょっ、明希ちゃんは二十一歳だし、ホントに女の子なの!てゆうか真珠、盗撮してたの!?」
慌てる私に真珠がさらに追い打ちをかけてきた。
「明希ちゃんって呼んでるんだぁ。これで二十一歳とか、合法ショタじゃん?ねぇねぇ、晴香の言う通りホントに女の子なのか見てみたいんだけど?」
ぐぅ、まさか真珠に明希ちゃんの存在がバレるとは!?油断した。
三人は盛り上がってしまい、私の話しを聞いてくれない。どーしたらいいんだコレ?悩んでいると、朱美さんが私に最悪の提案をしてくる。
「ねえ、今日ってノー残業デーだしさ。仕事終わったら、みんなでハルちゃんちで飲み会しない?」
「田中さん、それいいですね!」
「アタシもさんせー!」
こうして三人と明希ちゃんを引き合わせることになりましたとさ。ホントにこれとーすんの?
…つづく
急に異世界物が書きたくなりました。昨日この作品の修正中に思い立ち、気が付いたらプロット無しに五千文字書いちゃった。
たぶん二万分くらいの短編になる予定。書き方もこの作品より更にライトな感じになってます。