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 No. 04 ヒカルと明希


 前回前触れもなくお休みして申し訳ない。

 今回は18時にアップしますが、次回どうするかは未定です。

 

 気が付いたらPVが250以上まで上がってました。有難いことに初めてブクマも付きまして、大変恐縮しております。

 今後もご期待に添えるよう、頑張っていきたいです。





 純白のシーツが掛けられたベッドがポツンと一つだけある真っ白な空間に、私はいつの間にか一人で寝ていた。

 いつからこの場所に居たのだろう?

 そんな他愛もないことを考えながら、一人呆然と寝転がる私の目の前にスッと一つの影が射した。


「晴香さん」 


「明希ちゃん?えっ、なんで裸!?」


 一糸纏わぬ姿の明希ちゃんが、瞳を潤ませて私を見下ろす。


「晴香さん、私の初めてを貰って下さい」


「はっ!?えっ、ちょっと、あ、明希ちゃん!?」


「晴香さん、大好きですよ」


「うぇっ!?や、やめて明希ちゃん!私達、友達でしょ!?」


「ダメです、もう友達じゃダメなんですよ晴香さん」


「いやいや、ダメでしょ!?だって私と明希ちゃんは女の子同士じゃない!」


 なんなの?なんなの?なんなの?この状況は一体なんなのよ!

 なんてテンパる私を無視して、明希ちゃんはさらに続ける。


「何を言ってるんですか?晴香さん、私が女の子の訳が無いじゃないですか」


 そう告げた明希ちゃんの姿がぼやけていく。


「ほら、晴香さん。ちゃんと見て下さい。私は…いえ、僕は男の子でしょ?」


 いつの間にか、さっきまで膨らんでいたはずの明希ちゃんの胸が平らに、そして下の方にはアレが付いていて…


「ねっ、男の子でしょ?さあ、晴香さん。愛し合いましょう!」


「ち、ちょっと!?ま、待って明希ちゃん!あ、明希ちゃん?明希ちぁぁぁあぁゃん!!」


 ベッドの上に跳ね起きた私の視界に、見覚えの無い部屋の様子が飛び込む。そこには男の子になった明希ちゃんの姿などもちろん無かった。


「はっ!?ゆ、夢?」


 良かった、どうやら夢を見ていただけのようだ。

 でも、ここ何処だっけ!?


「えーっと、昨日は明希ちゃんと新宿まで行って…うっ、頭がガンガンする。これって二日酔い…って、えっ!?」


 頭を抱えて下を向いた私は、自身の姿を見て背筋が凍る。


「なんで、下着だけ!?えっ、まだ夢の続き!?きゃっ!」 


 再びパニックに陥った私が大声を出してベッドから転げ落ちたその時、目の前の扉が開いて誰かが入ってくる気配がした。


「大丈夫ですか晴香さん!さっきの音はなんですか!?」


 顔を上げるとそこには、裸にバスタオルを巻いただけの明希ちゃんの姿がある。あぁ、やっぱりまだ続いてる…


「あ、明希ちゃん、ここ何処?なんで私、下着なの?なんで明希ちゃんはバスタオル一枚なの!?ねえ、まだ夢の続き!?」


「ちょっと、晴香さん!?落ち着いて下さい!ここは…」


 矢継ぎ早に質問する私の姿に驚きながらも、明希ちゃんが質問に答えようと口を開いた瞬間、明希ちゃんの後ろの扉からさらに一人の影が現れる。

 

「あっ、晴香ちゃん起きた?朝ご飯作るから、軽くシャワー浴びてきなさいな」


 そこには昨日バーで知り合ったヒカルさんの姿があり、それを見た私は思わずこう呟く。


「えっ?3(ピー)?」





「昨日のこと覚えてる?晴香ちゃんが潰れて帰れなくなったから、アタシの家に連れてきたのよ。それで部屋に入るなり吐いちゃって服が汚れたから、とりあえず脱がせてベッドに放り込んだんだけど?」


 言われるがままにシャワーを浴びると、スッキリした頭に昨晩の記憶がおぼろげに甦る。


「す、すみませんヒカルさん!」


 ペコペコと頭を下げる、どこかの土産物の人形と化した私に、明希ちゃんがやれやれといった様子で追い討ちをかける。


「そうですよ、介抱してる私にの服にも吐いてきて、大変だったんですからね?昨日シャワー借りたのにまだ臭うから、朝からまたシャワー浴びたんですから」


「う、明希ちゃん、ごめん!」


 二人に迷惑をかけて縮こまる私。

 そんな私を、二人は笑って許してくれる。


「まぁ、この話はお仕舞いにして早くご飯食べましょう」


「はーい!さぁ、晴香さん食べよ?」


「ううっ、頂きます」


 トーストにサラダとスクランブルエッグといった軽い朝食を採り、ヒカルさんの淹れてくれたコーヒーを啜るとようやく落ち着いてくる。

 ほっと一息ついた所で(おもむろ)に明希ちゃんが口を開いた。


「ヒカルさん、昨日の話なんですけど…」


「ああ、女の子との話?」


「そうです、やっぱりホルモン治療と手術しか無いんですか?」


 ぐぅっ、今まで触れないようにしてたのに…

 昨日の私が酒を飲み過ぎる原因となった会話が、二人の間で再び始まるようだ。

 とりあえず知らんぷりして、私は黙ってコーヒーを啜る。


「昨日も言ったけど、それはあくまでも女の子が男の子になる場合はって、だからね?それに、この方法だと今の明希ちゃんの身体は見る影もなく変わっちゃうのよ?」


「うーん、それは嫌なんですよね。昨日も聞いたけど、胸が萎んで垂れ下がったり、髭が濃くなるのはちょっと…私は別に男の子に成りたいわけじゃないし」


「そうよね。男の子になりたい女の子、いわゆる性同一性障害の人達ならそうするだろうけど、半陰陽の人達の場合はねぇ」


 ヒカルさんはそう言いながら、チラリ明希ちゃんの身体に目を向ける。


「そうなんですよね。半陰陽だって、分かった時、お医者さんに『それで、どちらの性別にしますか?』っていきなり言われたんですよ。半陰陽は染色体異常だから、治療が必要だって…」


「そんなこと言われたの?」


「ええ、そうなんです。今まで女の子として生きてきたのに、いきなり『どっちにするの?』とか言われても、急には決められません!ヒカルさんなら、そうなった時どうしますか?」


「ワタシは同性愛者だけど、別に性同一性障害って訳じゃないから、分からないわね。たまに同性愛者と性同一性障害の人達を一緒にしちゃう人も居るけど」


 白いマグカップを両手で包み込み、通し目をするヒカルさんに私は素朴な疑問を投げ掛けた。


「あ、あの、ヒカルさん。私そういうの知識はあるけど詳しくなくて、同性愛者と性同一性障害ってどう違うんですか?」


 BL好きの私としては、ある程度の知識はあったつもりだったんだけど、ヒカルさんの話を聞く内に、自分の理解に自信がなくなる。

 だから私は思い切って、ヒカルさんに尋ねることにしてみたのだ。


「あら?晴香ちゃんも興味あるの?なんなら寝室で詳しく教えましょうか?」


「ふえっ!?ひ、ヒカルさん!?ちょ、そういう事じゃなくて!明希ちゃんも笑ってないで止めてよ!」


 私の頬を優しく撫でるヒカルさんと、それに慌てる私を明希ちゃんは楽しそうに見ている。


「ふふっ、冗談よ。晴香ちゃんのその胸には興味あるけど、ワタシの好みはもっと小さくて可愛いらしい子だし、それによく言うでしょ?『男が好きなんじゃない!オマエが好きなんだ!』って」


 私の胸に興味がある人がいるのは分かるが、まさか昨日初めて会った女性のヒカルさんまでとは…

 自分の胸を両手に抱えて椅子を引いた私を気にする事無く、ヒカルさんのさっきの言葉に明希ちゃんが目を輝かせながら食い付く。


「ヒカルさんも腐ってらっしゃるとは!?私達もそれが趣味で友達なったんですよ!」


「こら、落ち着いて明希ちゃん。ワタシは腐女子ってわけじゃないのよ。仕事柄お客さんにそういう人が多いってだけだから」


 ヒカルさんは両手を肩の高さまで上げて、やれやれといった動作をする。それを見て明希ちゃんはしゅんとなって立ち上げかけた腰を椅子に降ろす。


「ごめんなさいヒカルさん、ちょっと興奮しちゃいました。えっと、何の話をしてたんだっけ?」


「性同一性障害の話でしょ?そうだ、それを話す前にちょっと尋ねたいんだけど、明希ちゃんはなんで女の子との性交渉について聴きたいの?」


 それは私も気になっていた。明希ちゃんのことだから、また考え無しに行動してるのかも知れないが、そこにちゃんとした理由があるなら聴いてみたい。

 そんなことを考えていたら、明希ちゃんがリビングの椅子から勢いよく立ち上り、ヒカルさんの質問に対して堂々と答える。


「さっきも言いましたけど、私って、男の子か女の子のどちらかの性別に決めなきゃならないんだけど、どっちが良いかなんて分からないまま、簡単に決めちゃっていいのかなって思うんです。だったら男の子と女の子が出来ること、両方をやってみて決めようと思ったんだけど、女の子でやったことの中で、男の子としてはまだやって無いことを一つ思い付いたんです!」


 そこまで言った明希ちゃんは右手をぐっと持ち上げ、親指を人差し指と中指の間に入れて掌を握り込んだ。


「私は処女はじゃないけど、まだ童貞なんだって!」


 やっぱり明希ちゃんは何があっても明希ちゃんだ。それが半陰陽だろうが同性愛だろうが何でもお構い無し。考える前にまず行動する、こんな所に私は好感を持っているのだな。




 …つづく








 ヒカルさんもモデルになった実在する人物がいます。性格も容姿も男前で、身長が百七二もある私より、少し高くてスラッとした感じですかね。


 今後、ヒカルさんの閑話も書く予定ですが、何かリクエストありましたら、感想や活動報告にでも気軽に書き込んで下さい。

 つっても、まだ名前のある登場人物は四人しかいないんだけどね…



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