No.01 アンドロギュノスと始まるナニか
みなさんはじめまして、初投稿させて頂きます。雨の日もお散歩日和と申します。長い名前なので『お散歩』『日和』などテキトーに略して覚えて下さいませ。
それと、この作品は思い付きでプロット組んでおり、第一話は半日で書き上げてるので、誤字脱字や文章におかしな部分があっても暖かく見守って頂けると幸いです。
※この作品は実話を元にしたフィクションです。人物及び団体名は架空のものなので、似たような名前の個人・団体名が出てきても、それは気のせいです。同姓同名なんて世の中には沢山あります。そんなに珍しいものではありません。
太古のギリシャ人に伝えられていた神話の中では、人類には三つの種族があったと伝えられている。
男と女、そしてそれらが合わさった完全体ともいえる人類のことを、彼らは両性具有と呼んでいたという。
正確には、人類は男と男・女と女・男と女がそれぞれ合わさることで完全体になるのだとかで、詳しい話は忘れてしまった。
私がこの太古の神話を思い出したのは、数年前のある夏の日のこと。盆休みで帰郷した私は、弟の元カノと居酒屋の個室で会食を楽しんでいた。
「明希ちゃん、弟と別れたんだって?妹ができたみたいで嬉しかったのに残念だわぁ。ねぇ、なんで別れちゃったの?」
「えーと…晴香さんになら教えてもいいんだけど、弟さんには絶対に内緒にして欲しい話があるんですよ」
「えー、なになに?もしかして浮気とか?三年も付き合ってたもんね。他に好きな人が出来ても仕方ないよ」
「ち、違います!なんで私が浮気してることになるんですか!?あのですね、去年ちょっと体の調子が悪くて、病院でいろいろ検査とかしたんですよ。その時ちょっとありまして…」
「えっ!?明希ちゃん病気なの!?まさか治らないヤツ!?やだぁ、明希ちゃん死なないでぇ!」
「違うから!最後まで聞いて下さいよ晴香さん!」
「だ、だって、明希ちゃんが病院とか言うから…」
「もう、晴香さん相変わらず早とちりですね。あのですね、病気とかじゃなかったんですけど、染色体に異常があるらしくて」
「異常って?」
「その、染色体の検査の結果ですね…」
「検査の結果?」
「私、半陰陽らしいんです」
「………はっ!?半陰陽って、あの?」
「そう、そのです。私、女の子であると同時に男の子でもあるです」
一瞬意味が分からず呆然とした私は、彼女の真剣な面持ちにその姿をマジマジと見つめる。
ノースリーブの肩口にヒラヒラの刺繍が着いた白いシャツと膝下まである薄紫の長いフレアスカート。女の子らしい格好の童顔な彼女は、自分が半分男の子であると主張している。
「ドッキリ?実は別室で、もこ〇ちがモニタリングしてるとか…じゃないよね?」
「こんな田舎で晴香さんを騙す為だけに、も〇みちなんか来ませんよ!あの、これマジな話です」
「えーと…明希ちゃん、弟と付き合ってたよね?その、アレとかどうしてたの?」
「あれってなんですか?」
「うーんと…恋人同士の営みと言うか、愛の確認作業的な…」
「あぁ、セ○クスですか?半陰陽って言っても漫画みたいになってる訳じゃないので、ちゃんと出来ますよセ○クスは」
「ちょっ!もっとオブラートに包んだ感じで言ってよね!」
「処女でもあるまいし、なに顔を赤くしてんですか?こっちが恥ずかしくなりますよ」
「弟の性生活とか聞きたくないの!それに、私まだ一回しかしたことないもん…」
「えっ!?晴香さん、今まで五人くらいと付き合ってますよね?それで一回しかしたことないって…」
「な、なんかそういう雰囲気になる前に別れちゃうのよ!それに初めての時は、あまりの痛さに泣き喚いちゃって彼氏ドン引きのままフェードアウトでさぁ…って!いやいや、それより明希ちゃんの話が聞きたいんだけど」
「ああ、そうでした。その、半陰陽ってのはですね…」
半陰陽とは、女性が持つ身体的機能と男性の身体的機能の両方を持って生まれた人のことであり、約二万五千分の一の確率で生まれてくるという。
ここからは保健体育の話になるが、義務教育で得られる用語と知識なので十八禁指定されることは無いと思いたい。
半陰陽には真性半陰陽と仮性半陰陽とがあり、真性半陰陽の人間は男性器(精巣と陰茎)と女性器(卵巣と膣と子宮)の両方を持っていて、生理はあるが精通はあったり無かったりするのが特徴である。ちなみに女性の陰核と男性の陰茎は同じ物であり、陰核が発達したものが陰茎なのだとか。
男性器や女性器があると言っても、それは一般的な男性や女性の物とは違っていて、精巣が体内に収まっていたり陰茎が親指の第一関節程度の大きさだったり、膣内が浅く狭かったりする場合がほとんどであるとか。生理や精通も一般的な女性や男性とは違って不規則で、生理がきても膣口が塞がっていて経血が無い場合があるらしい。
仮性半陰陽には女性型半陰陽と男性型半陰陽とがあり、女性型の場合は、外見は男性に見えるが体内に女性の機能が備わっていて、男性型の場合は女性に見えるが男性としての機能があり、この場合は生理が無いという。
どの場合も生まれた時にはっきりと区別できる特徴が無ければ、外見によって戸籍上の性別が付けられ、女性として育った人は少し陰核が大きくて生理が不規則だと思い、男性として育った人は陰茎が小さくて脂肪が付きやすいと思うだけで、病院などで染色体検査をしない限り一生気付かずに過ごす人も多い。
「私の場合は真性半陰陽と言うヤツでして、精巣が体内に隠れてて陰核がちょっと大きいだけだったから、見た目も女の子だし、自分に男の子としての機能があるなんて思いもしませんでした。生理もきてましたしね」
「へぇ、半陰陽ってそうゆう感じなんだ?漫画とかと全然違うんだね」
「そうなんですよ。男性ホルモンが多い時期と女性ホルモンが多い時期があって、男性ホルモンが多い時は髭や体毛が濃くなるらしくて、雰囲気も男の子っぽくなるそうです。若い時は目立たないけど、歳とると酷いことになるんですって」
「うへぇ、明希ちゃんに髭が生えるなんて想像つかないわ」
「それでですね、晴香さんの弟さんと別れる半年前くらいから男性ホルモンが多い時期になっちゃって、半陰陽だってことを隠しきれるか不安になったんですよ」
「あぁ、アイツ意外と潔癖症だしねぇ」
「それと、BLとか嫌いじゃないですか。弟さんは男性ホルモンが多い時期の私とセ○クスしたことあるんですよ。いわば男の子とセ○クスしてたようなものなんです。本当のこと知ったらなんかヤバそうで…」
「だからセ○クスとか言わないでよ!あーっ、アイツのBL嫌いは私のせいなんだよ。明希ちゃんごめんね」
「いいんですよ、もう別れたんだから。それに自分が半陰陽だって知ってから、弟さんには申し訳ない気持ちはあったけど、愛情とかは冷めてましたから」
「うーん、それでもごめんね。アイツには小さい頃から私のBLコレクション読ませて、立派な腐男子に育てようとしたんだけど、逆にBL嫌いになっちゃったんだよねぇ」
「晴香さん?あなた何てことを!?」
「だって、BLに理解のある腐男子とか腐女子には貴重だよ?アイツ小さい頃からそこそこのイケメンだったから、立派に育てて腐女子にモテモテにしてやろうと思ったの!」
「はぁ、晴香さんったら。腐女子はイケメンと付き合いたいんじゃないんです!イケメンがイケメンとイチャイチャするのが見たいんです!」
「さすが明希ちゃん。もう私の弟子は卒業だね、免許皆伝としてこの新作BL小説を授けよう」
「ははぁー、有り難き幸せ。って、私ケッコー深刻な話をしてたハズなんですけど晴香さん?」
「私、明希ちゃんが半陰陽なのは単なる個性だと思うんだけど?それに、半陰陽ってことを深刻に捉えられるのが嫌だから、冗談混じりに私に打ち明けたんでしょ?」
「うわぁ、さすが晴香さんですね。私の意図をちゃんと汲んでくれる、晴香さんのそうゆうところ大好きです」
「ちょっ、あんまり褒めんなってば!ま、まぁ私も明希ちゃん大好きだし」
「なんだ、私達ってば相思相愛?もう付き合っちゃいますか?」
「あはは、それも良いかもね」
それから私と明希ちゃんは、お酒をのみながら近況を話したり、お互いの趣味であるBL話で深夜遅くまで盛り上った。
まさかこの時の会話が本当のことになるとは思いもせず、短い盆休みが終了した私は日常へと帰るのであった。
…つづく
晴香さんと明希ちゃんは、私とそのパートナーがモデルとなってますが、実名じゃありません。
私のパートナー(面倒だから便宜上、明希ちゃんとします)はリアル半陰陽で、これは本当のことです。
明希ちゃんにこの作品を書くことを伝えたら「マジで?いや、嬉しいけど大丈夫かな?何がって、R15じゃ無理じゃないの?私と晴香さんの話を書くならお月様の方じゃないとね。ちゅっ」とのこと。
一応、登場人物のモデルになった人には許可を得て書いてるのでご安心下さいませ。ちなみに弟にもちゃんと許可とりました(笑)
さて皆さま、明希ちゃんは自分が半陰陽であることを前向きに捉えてますが、世の中の全ての半陰陽の人が皆こんな風じゃないので注意してくださいね。