オアシス
「何とか日が落ちる前に、オアシスについて良かったですね。ソノラ?」
バイクを止めゼロはソノラに話し掛ける、が反応がない。
「オ・オ・オ・オアシスだーー!!」
どうやら、蜃気楼ではない本物のオアシスに感動していたようだ。約二キロ範囲にオアシスが有ることは分かっていたものの、蜃気楼が出るたびにぬか喜びをし、本物のオアシスかどうかが怪しくなっていたソノラだったのだ。
「これで、水浴びが出来る!」
ソノラは意気揚々と服を脱ごうとした。が、ゼロに止められた。
「ゼロ君もしや!私のナイスボディーが見えちゃうのが……」
ソノラはイヤイヤと体をくねらせながらゼロを見るが、ゼロは冷静に答えた。
「水が汚れるので、飲み水の確保をしてから入って下さい。あとはお好きにどうぞ。それとナイスボディーですか……。」
ぷっと笑いそうな顔をしてゼロは水の確保へと向かうのであった。
「後、二~三年もすればバインバインになる予定なんだから!」
とソノラはゼロに叫びながら、近くに有った木の棒を投げた。ゼロは首を傾けそれを避けると、
「予定は未定ですよー。」
と言いながら野営の準備を始めていった。
水浴びが終わったのかソノラがゼロの方へとやって来る。
「料理のしたく手伝う?」
「いえ、結構です!ソノラは髪でも乾かしといて下さい。」
ソノラの申し出を全力で断るゼロ。
「なんで、いつもゼロ君が作ってるし。私も作れるよ!」
ソノラのこの言葉にゼロは料理の手を止め言った。
「七色のシチューを作る方に、料理はさせられません!」
ゼロは死んだ魚のような目でソノラを見た。
あれは何の気紛れだったのか、旅をして約一週間位だろうかソノラが料理を作ると言い出した。
「私シチューが得意なんだ!」
と満面の笑みで言われれば男として断る理由は有るだろうか!イヤ、無い!とゼロは思い。その日の夕飯はソノラに任せたのだが…
「ソノラ…これ…何?」
「シチュー…」
「シチューって…シチューの色はクリーム色ですよ。七色じゃないですよ!?」
「…………………。まぁ食べなよゼロ君。」
コレをか!っとゼロは口から出そうな言葉を飲み込んだ。ソノラは期待の眼差しでゼロを見る。
「い、いた、頂きます‼」
そしてゼロは一口、ソノラの七色シチューを食べた瞬間意識を飛ばした。あれ以来一切ゼロはソノラに料理をさせないと心に誓ったのである。
「大丈夫!今日は行けそうな気がする!」
「気だけで料理が出来るなら、料理人なんてこの世から居なくなりますよ。」
そう言うとゼロはもくもくと夕飯を作り始めるのだった。
「それよりもソノラ、ノアのアクセスはどうなんですか?」
「進展なし。ブロック硬すぎ!いけたと思ったらダミーだし…」
溜め息を付きながらソノラは頭をかいた。
「流石ノアシステムって感じ、攻略に燃えます!」
ハッカー心に火がつくのか、時間があればノアシステムにアタックを繰り返すソノラ。
「ご飯出来たのでその辺にしといてください。ソノラ」
ゼロはシチューをソノラに差し出した。
「嫌みか!ゼロ君!」
「僕に棒を投げた仕返しです。」
とゼロは笑って答えた。