旅立ち
長い廊下を歩き一番大きな扉がある部屋の前とやって来た。木の扉には見事な彫刻が掘ってある。左右の扉の前には警備隊が二人立っていた。
メイドは警備隊の一人に陛下のお客様をお連れ致しました。と言い壁際にそれると大きな扉は左右に開いた。
メイドは二人に深くお辞儀をした。
二人が部屋に入ると扉は静にしまった。
「やぁ。ようこそ二人とも、私はこの国の王をしているグリーンと言う。初めまして。」
グリーン王は爽やかに微笑みながら挨拶をした。
「君達は扉の前にずっといるきかい?此方に座りなさい。」
とても高そうで座り心地が良さそうなソファーに二人は座った。
「お初にお目に掛かります。グリーン王、僕の名前はゼロと言います。親がいないので名字は無いですが。」
「お初にお目に掛かります。私の名前はソノラ・フォンと申します。」
少し緊張しながら挨拶を二人は交わした。
「そんなに、固くならなくていいよ。二人に用があって呼んだのは私の方なのだから。」
王は微笑みながら言った。
「第七次ヘブン戦の事ですか。」
「理解が早くて助かるよ。ゼロ君。君達には神候補と女神候補してヘブン戦に出て貰いたい。」
王は真剣な顔をしてゼロとソノラを見た。
「ここまでくる迄に僕らの事を試していましたよね。王様。」
「ゼロ君珍しくイライラしてるね。始めからわかってた事じゃん。」
とソノラは言った。その事にグリーン王は驚いた顔をしていた。
「嫌、どうしても手のひらで踊らされてた感がムカつきまして。」
と堂々と王様の前でムカつく発言をするゼロ。グリーン王はその発言にお腹を抱えて笑い始めた。
「ハハハハ!嫌、す、すまない。ゼロ君。君達はまだ子供だからね。念のためだよ。報告もちゃんと聞いている。そこでだ、ゼロ。ソノラ・フォン。君達を神候補と女神候補として任命する。この決定に否定件は無い。この世界を守り、この国の平和を守って欲しい。これは命令だ。」
王はそう答えた。
「では、僕も神候補として言わせて貰いますね。まず、僕らは命を賭けて戦うんです。旅に必要な一式とキャッシュカード残額はMAXで現金もお願いします。あとリーフ部隊が使っている魔術式が入っていない拳銃を一丁とソノラにノアシステムのアクセス許可を出してください。」
「ノアシステムのアクセス許可だと!」
「そうです。正直に言いますと僕は世界が終焉に向かおうが、どうでもいいんですよ。いっそ綺麗に無くなれば?とか思うタイプなので。」
王は額に手を当て考えた。どう考えてもこの少年は本当にそうしそうだからだ。
「ゼロ君、王様脅すのやめようよ。」
ソノラは言った。
「王様なんだから、ちゃん約束してくれるよ。だって私達、神候補と女神候補なんだよ?こっちが命令しても可笑しく無いんだから!ね!王様。」
語尾にハートが付くような言い方に遂にグリーン王が折れた。
「わかった。君達の願いを叶えよう。……ゼロ、ソノラ・フォンこの世界を頼む。」
王は二人に頭を下げた。それを見たゼロとソノラは立ち上がり、グリーン王に言った。
「「このゼロ、ソノラ・フォン謹んでお受け致します。」」
二人はニッコリと微笑むとグリーン王に頭を下げた。
「とはいっても、直ぐに手配は出来ないので少し待っていてくれ。」
グリーン王はそう言うと二人を退席させた。
それから数時間後ゼロたちは町の広場へと呼ばれた。
「なぜ広場?」
「凄い人だね!ゼロ君。」
お祭り騒ぎの様な状態になっている、国を出る入り口の広場。
広場にはソノラの家族もいた。
「お母さん!お父さん!」
「「ソノラ」」
ソノラの母も父も泣きそうな顔で彼女を抱き締めた。
「どうか無事で帰ってくるんだよ。」
「父さんたちはずっと待ってるからな。」
ソノラは笑顔で頷いた。
「大丈夫ですよ。ソノラは何があっても、お二人の元に帰します。」
ゼロは真剣な顔付でソノラの両親にいった。
「ゼロ。君もだよ。」
「貴方も私達の子供と同じ何だからね。」
ゼロは目を見開きそして微笑みながら頷いた。
「「二人とも気をつけて行ってらっしゃい。」」
ゼロはバイクにエンジンをかけ発進をする。
ゼロとソノラは大声で叫んだ。皆に聞こえるように…。
「「行ってきます‼」」
人々は祈った。どうか命の木の加護があの二人に有らんことを…。
二人が乗るバイクの影が見えなくなるまで、皆二人を見つめ続けた。