夢
ピターン・ピターンと雫が落ちる音がする。
真っ白なロングワンピースを着た裸足の女性に少年は後ろから抱き締められていた。
あぁこれは夢かっと不思議と冷静にゼロは思った。
「ねぇゼロ。私の可愛いゼロ。」
甘ったるい声で女性が耳元で話しかけてくる。
「人って何て儚くて愚かで愛しいのかしら。…ねぇゼロ。本当に殺したくなるほど、愛しいと思わない?」
ゼロはただ、何も言わず睡蓮の花が咲き乱れる庭を眺めていた。
「人の身体はねゼロ。魂を入れる只の器なの。分かるかしら?ゼロはまだ子供だから分からないかしら?だからねゼロ。人は死なないのよ!魂が…脳が死ななければ、細胞が有れば死なないのよ!死なないの!何て憎たらしのかしら!!ねぇゼロ!」
「そうですね。本当に殺したく成る程愛しくて憎いですね。」
ゼロは答えた。
「あぁゼロ!私のゼロ!何て愛しいのゼロ!ゼロゼロゼロゼロ0」
女性は叫ぶ様にゼロを抱き締め口付けをした。ゼロはただ何も思わずその口付けを受け入れる。
俺に分かることは貴方が壊れているって言う事実と、本当に殺したく成る程に貴方が愛しいと言うこと。俺らは狂ってる。だから、ちゃんと愛しい貴方を殺しに行くよ。それが、俺の望みだから。これ以上貴方が罪を重ねないように。ちゃんと…殺しに…
うっすらとゼロの意識が浮上していく。知らない間に気を失っていたようだ。嫌な汗が出る。リズから擦った拳銃を確りと握りしめ、視界も少しぼやけている。まだ完全に覚醒していない自分に溜め息をつくゼロ。
「久しぶりに、見たな。胸糞悪い。」
ゼロは呟きながら前髪をかき上げた。ずれた眼鏡をかけ直しリズの気配を探る。