『 SHADOW 』
「バンッ! 」暗闇の世界に響き、SPの一人が撃ち抜かれる。「何処にいる! 」ここは、埠頭にある一際大きな倉庫の中。黒一色の高級車が5台並んでいる。奴等の人数は、ボスとその配下のSP十五人。
「見当たらないぞ! 『 SHADOW 』の奴等は何処だ! 」
SPが辺りを拳銃を片手に捜索する。 「いたか?! 」 「こっちはいない! 」
SPが何処を探しても僕達を見つけることができない。
僕達のGROOPが『SHADOW 』と言われる理由がこれだ。暗闇から現われ、暗闇から消える……まさに影。
「殲滅開始だ…… 」
僕の声で、『SHADOW 』の五人が動き出す。僕達は奴等を囲む。( 奴を穿て…… )そう頭の中で唱える。狙いはボスだ。他の四人は、SPを狙う。「ドン…… 」その声とともに小さな魔法陣から鋭く細い雷が放たれる。それは奴等が気付く前に頭を射抜き、「ドン…… 」車を破壊する。鮮明な血が舞い、赤い炎、灰色の煙がその場を支配する。その爆発で倉庫の周りにあった、ドラム缶に引火し更にそれは勢いを増す。「ドカァァァァァァン!! 」轟音が辺り一帯に鳴り響く。
僕達は、脚力を強化し建物の上を次々と飛び越えて行く。「凄いなこりゃぁ 」
僕達は、埠頭から七百M程離れた高層ビルの屋上から眺める。数台の警察と消防車がサイレンを鳴らしながら街を駆け抜ける……
♤
「あれはやばかったなぁ! 」「そうだな 」
笑い声の絶えないこの部屋は、喫茶店の最深にある防音壁で囲まれた部屋。『SHADOW 』の表側の顔は 『 ARCHIVE 』という会員制の喫茶店。沢山の小説が読めて都市の中でも有名な所。煉瓦造りで微かな灯火が宿り、落ち着く雰囲気。
「ありがとうございました〜 」そして僕がこの店のMASTERで『SHADOW 』のLEADERーー神無月 零。セミロングの黒髪につぶらな漆黒の瞳。服いつも黒色。黒色を愛している。責任感の強い性格。
僕は最後の客を扉の外まで送り、扉のOPENをくるっと回し、CLOSEDにする。更衣室に行き、黒と白の制服をロッカーのハンガーに掛け、いつも通りの黒服に着替える。更衣室を出ると、残りの四人が集まっていた。「零! お疲れ! 」みんなが声を掛けてくる。「お疲れ様〜 」声を返す。
「コーヒー一杯頂戴! 」彼女は『SHADOW 』のSUBLEADERーー弥生 奏。長髪の茶髪を頭の後ろでまとめ、零を愛の瞳で見つめる。零のことが大好きだが想いを伝えれなくて悩んでいて不器用。
「俺もくれ〜 」彼は『SHADOW 』超遠距離狙撃者ーー葉月 夏。短髪で金髪。エメラルドのような瞳に、右耳にはゴールドの輪っかのピアス。顔は不良に見えるが、私服にセンスがあり、服選びは夏にお任せしている。僕は断固拒否だが。視力が良すぎて約2km先まで見える。
「僕も下さい…… 」 「あっ……わたしも 」
この大人しい二人は付き合っている。彼は、『SHADOW 』の特攻機ーー霜月 霧斗。黒髪で目を隠し、たまに見える紫紺の瞳は吸い込まれそう。いつもは大人しいが仕事の時は頭上から戦闘機のように突っ込んでくる。
彼女は、『SHADOW 』の戦車ーー如月 月姫。水色の髪を後ろでまとめ、触角を生やしている。グレートバリアリーフのような瞳には皆んなが惚れている。いつも読書をしている。
「はい、どうぞ〜 」僕は熱々の自作ブレンドのコーヒーを一人一人の手元に置く。ズルズルッと口に注ぐ。「美味しい…… 」皆んなが揃ってその言葉を吐く。「ありがとうございます 」僕は照れながら言う。皆んな僕のコーヒーを飲む度に美味しいと言ってくれる。
「零、次の仕事は何なんだ? 」皆んなの顔が僕の方に向く。
「次は……貨物船を潰す 」次の仕事は、フィリピンの貨物船を潰して欲しいという依頼。「何が積んであるんだ? 」「本は積んでないの…… 」月姫は目を輝かせ僕を見る。「本はないよ……積んであるのは核ミサイル 」「マジか…… 」夏は呟き、皆んなが目を大きくさせる。「だから、早くそれを破壊しなければならない 」奏は、コーヒーを一口飲み、問い掛ける。「どうやって壊すの? 」 「今から考えるーー奴等は韓国に行く為に日本海を通る。経済区域に入るが奴等は入ることを許可されているため、堂々ととあることができる。次に日本海で破壊すると、周りに爆風、放射線などの影響が出るから無理だ…… 」
ーーーー その説明は、皆んなを悩ませた。そして、これはどうかな?と、意見を出す。
「爆発の衝撃を封印するとかはどうだ? 」夏は、一番に案を出す。「核に対抗できるくらいの封印魔法を使える奴は居ないから却下 」僕の言葉でそれは完全に却下された。また俯き、頭を悩ませる。
ーーーーそれから数分経つが未だ良い案は出ずに、僕の言葉に却下される。
すると黙り込んでいた霧斗が口を開く。
「僕に案があるんだけど良いかな…… 」少し控え気味に言っているが瞳は真っ直ぐ僕を見ている。僕は「どんな案があるの? 」とその目を信じ、聞く。僕達は頭を悩ませていたため霧斗に期待の目を向けていた。
「太平洋に誘導し、封印魔法で爆発を抑える。放射線は、月姫の浄化魔法でどうにかなると思う……どうかな……誘導の仕方は誰かが考えて…… 」
その案に皆んなが賛成の声をあげる。「その案で決まりだね……あとは誘導の仕方か…… 」
(内部からの侵入……外部からの攻撃……)僕の頭には、その二択が浮かぶ。
(いや……そういえば、まだフィリピンを出て半日しか経っていない……だったら中国と日本に挟まれる前に騒ぎを起こし、太平洋に誘導……海軍になりすませばいける)
僕は誘導の仕方を考え、まとめた。
「僕の中で考えはまとまった。それを今から話す 」待ってました!とでも言うように皆んながすぐにこちらを向く。「何々? 早く教えて⁉︎ 」早く聞きたい!と奏が僕を急かす。そんな焦んな……と奏を落ち着かせ話しをする。
「目標の貨物船は、フィリピンを出て半日しか経っていない。ということは、まだ日本海には入っていないという事だ。そこで日本海で騒ぎを起こす。そうすれば日本の海軍が動き出し調査を始める。安全確保の為、日本海には入らないようになる筈だ。そこに入ろうとした貨物船は、遠回りわしなければならない。そこで僕達の出番だ。僕達は海軍になりすまし、太平洋に誘導する。ある程度日本の陸から離れたところで破壊する 」その案に喝采が起こる。
「これで決まりだね! 」僕は大きな声で決定を宣言する。
「おう! 」 「うん! 」 「はい…… 」それぞれが異なる言葉で返事をする。
「じゃあ!飲むぞ! 」夏の掛け声で飲み会が始まる。ビールが机に並び、声が飛び交う。
飲み会が始まったのは、窓の外が明るくなり始めた頃だった。
♤
組織 『SHADOW 』
賞金:2500000000¥
(約230000000$)
詳細:不明
裏社会では、このようなものが出回っている。『SHADOW 』を捕まえる、もしくは全滅させることで、これだけの賞金が手に入る。『SHADOW 』は、これだけの賞金が賭けられるほど最強の組織である。