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94 魔改造博士グレイス、その2です。

 イレイスは少なくない混乱から立ち直ると、お客さんを中に入れ、兄を呼び戻す為のスイッチを入れた。

 これも兄の発明品の一つである。スイッチを入れると兄の腰にかけてある『呼び出し君』が音を鳴らせる仕組みだ。

 それを見たお客さんが驚いた。


「えっ? うそうそ? ケータイ? スマホ? え? マジでマジで?」


 確かに不思議な代物かもしれないが、それにしても凄い驚きようだ。

 その機能を説明すると更に驚いた。


「へー、すっげえ! これ、もの凄い売れるんじゃねえ?」

「そんなことありませんよ。ただ、遠くのベルを鳴らせるだけの装置です。『念話』のスキルの方がよっぽど詳細を伝えられて便利ですよ」

「いやいや、そういう都市同士のやりとりじゃなくて個人同士で使う用に」

「個人用に? ますます無理ですよ、これ作るのに1500万ゼニーはかかっているんですから…………本当にあのバカ兄は無駄遣いばっかり」


 後半部分は小声だった為にヒビキさんには聞こえなかった。そしてヒビキさんは値段の高さに驚きつつ、しげしげと『呼び出し君』を眺めていた。

 そんな時だ。

 表からバタバタと足音が聞こえてきた。

 せわしない足音で分かった。兄だ。

 そんなイレイスの予測は外れなかった。


「イレイス! 客が来たのか⁉︎」

「うん、来たよ。ほら、こちらのヒビキさん」


 兄は、その初めてのお客さんに満面の笑みを向けた。


「おお! ようこそ魔改造ショップへ! 私はこの店の主、新たなる可能性を模索する研究者グレイス=ラルラトルだ」


 ババーン!


「おお! 初めまして! 俺は蒼の軍勢を率いる団長ヒビキ=ルマトールだ。天位の座に着くために、変革を求めて貴方に会いに来た!」


 ジジャーン!


 互いに、インパクトある自己紹介を交わす二人。

 そんな二人を見てイレイスは思う。


(うわぁ、この二人、似た者同士だ……)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「なるほど、なるほど、紫煙花をそんな風に使うとは、斬新な発想だ」

「だろ、だろ⁉︎」


  二人の会話は弾んでいた。そうやって盛り上がる二人を見て、ますます似た者同士だとイレイスは思った。

 話は進む。


「では、そろそろ分身召喚を見せてくれ」

「おっけー!」


 次の瞬間、ヒビキさんの隣にヒビキさんが現れた。無限術師はそういうものだと分かっていても、少しビックリした。

 兄が感心した様に言う。


「凄いな。詠唱も精神集中の間すらなかったぞ」

「いや、慣れだよ、慣れ。とにかく分身召喚しか使わないからさ」

「なるほど」


 そんなやりとりを交わしながらもジロジロと分身の方を見回している。

 そして、とんでもないことを言った。


「分身の方がどうなろうと本人には影響がないんだよな。だったら、実験として魔道具を分身に埋め込んでみてもいいか?」


「かまわない」「嫌っす」


 ヒビキさんと分身さんが同時に真逆の返事をした。

 ヒビキさんが分身さんの頭をスパッと叩いた。


「いや、でも」


 スパン!


「だったら、隊長が自分でやったらどうっすか⁉︎」

 

 スパン!


「あんまり頭を叩いたら馬鹿になりますよ。ただでさえ元が悪りーのに!」


 スパン! スパン! スパン!


「わかりましたよ! やればいいんすよね⁉︎」

「そうそう、やればいいんだ」


 二人? の間で話が纏まったらしい。

 分身さんが、


「お願いします。でも優しくして下さい」


 と、頭を下げてきた。

 えっ? いいのこれ? と、流石の兄も思った様だ。


「本当にいいのか?」


 それにヒビキさんは朗らかに答えた。


「大丈夫、大丈夫。俺の分身だよ。俺に似て、勇敢でチャレンジ精神に満ち溢れているから」

「とても、そんな風には見えなかったが」

「気のせい、気のせい。ちょっと素直じゃないだけだから」

「そうか、なら色々と試したい。あと10人位よこしてくれ」

「はいよ」


 お気楽な返事と共に、哀れな生贄が10人増えた。

 そしてヒビキさんは、


「じゃあ、お前たち頑張れよー」


 と、分身達に手を振り、分身達のブーイングをその背に受けながら帰っていった。



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