81 ドレステルの戦い、その8です。
「うー、あー」
厄災騒動から2日、ヒビキは病院のベットで唸っていた。体はまだあんまり動かないが頭は冴えている。つまり、暇だ。
フルルに代行権を渡した後、気を失った俺は病院に運び込まれた。
また気を失ってこそいなかったがかなり危険な状態のたわわちゃんも病院に行き即入院となったらしい。
お見舞いに行きたいとフルルに言ったら
「まず、自分の体を治してからで!」
と、怒られた。
その後、更に今回どれだけ無茶をしたかを怒られた。正直、ベットの上で動けない状態じゃ無けりゃ土下座の一つでもしていたと思う。
それからカテュハさんは無事戻ってきた。 ほとんど怪我らしい怪我もなく流石の天位の7番である。
昨日俺の見舞いにも来たが飄々としていて、やっぱりかっこいいと思う。
そんなこんなで厄災なんて超ド級の災害にぶちあって一人の犠牲者もなかったのは凄い僥倖なのだが、
それはそれとして、今回の仕事は物凄い赤字だった。
なんせ、武具がほとんどおしゃかだ。ドレステルの街からは割り増しの報酬を貰ったのだが全然足りない。これから再度武具を揃えると金欠である。
因みに、そうなった最大の理由はダリアとかいう炎術師のせいである。
彼女の広範囲爆撃が辺りに散らばっていた魔石と武具を魔物とまとめて焼き払ったからだ。
あの人がいなかったら俺もたわわちゃんも間違いなく死んでいたので責める気はないのだが、でも、まあ、もうちょっと手加減して欲しかった。
「命があるだけマシか・・・あー、でも暇だ」
とまあ、体が動かないので色々と考えていたら。ガチャッと扉が開いた。
そのまま部屋の中に入ってきたのはたわわちゃんだった。
「たわわちゃん!」
「ヒビキ、ぐあいはどう?」
「元気一杯、と言いたいけどあと3日は安静にだって。たわわちゃんはどうなの?」
「大丈夫、完治した」
「マジか⁉︎」
フルルからもカテュハさんからも結構な怪我だと聞いていたのに早すぎるだろう。なんかこう、治癒的なスキルでも持っているのかもしれない。
でもまあ、
「無事で良かったよ」
「うん・・・・・ヒビキ」
「ん?」
「一緒に戦ってくれてありがとう」
「・・・うん」
たわわちゃんの感謝の言葉に、色々と無茶をしたけど頑張って良かった。そう素直にそう思った。
・・・。
・・・・。
・・・・・。
それから、今回の厄災について色々と話したが、最後に驚愕の言葉が待っていた。
「えっ⁉︎ 明日には迷宮都市に戻るの⁉︎」
「うん。元々3日の予定だったし身体も完治した」
「性急すぎない?」
俺、おいてけぼりだよ?たわわちゃんだって病み上がりたし。
「ううん。遅いくらい。早く戻って鍛え直さないと。今度はみんなもヒビキも自分の力で守れるようになりたい」
「あー・・・そっかー・・・」
俺は唸った。こういう時のたわわちゃんはまず止めても無駄だ。
そして、実のところ俺だってたわわちゃんと同意見だ。いま体が動かないから寝てるしかないが自由に動けるようになったら俺も自分を鍛えるだろう。鍛えるというより準備するかな。
俺は今回の件で自分の甘さを実感した。武器も防具も秘薬も最悪を想定して最大限備えるべきだった。そうじゃなきゃ好きな女の子ひとり守れないのだ。
「たわわちゃん。俺も頑張るよ」
「・・・うん」
そして、話が終わってたわわちゃんは病室から出て行った。
と、思ったらしばらくして、飲み物を片手に戻ってきた。
そのまま壁際に備えつけられた椅子をベットの隣に動かしちょこんと座った。
ん? どういうこと?
ヒビキは疑問に思ったがたわわちゃんは何も言わずに座っている。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・・・・あのー・・・たわわちゃん?」
「何?」
「お見舞いは終わったのに、何故にそこに座っているのでしょうか?」
ヒビキの質問に彼女は端的に答えた。
「約束」
「約束?」
「うん。森の中で賭けをしたでしょう? ヒビキの分身を引き連れて突撃するのは楽しかった。私は明日戻るから今日はずっと一緒にいる」
「あー・・・」
そうだった。厄災のせいですっかり忘れていたけどそんな約束をしていたんだった。そして、たわわちゃんははっきり明言していなかったけど、やっぱり楽しかったらしい。
「ヒビキの邪魔だったら帰るけど」
「ええ! たわわちゃんが邪魔とかとんでもない! 今日一日ずっと側にいて下さい! なんだったら、これからずっと側にいて下さい!」
つい、要求を水増ししたけどたわわちゃんはつれなかった。
「それは駄目、今日だけ」
ちぇー・・・たわわちゃんつれない。でもまあ、もうそれくらいじゃあめげない。
ヒビキは面白おかしく、かつたわわちゃんの好感度が上がるような話題を探し始めた。




