75 ドレステルの戦い、その2です。
ドレステルの北の森。
俺の分身が100人、森の中を散らばっていた。
数によるごり押し。この程度の広さの森なら1日とかからず捜索し終えるだろう。
それはそうとさっきからたわわちゃんの機嫌が悪い。
「どうしたの? たわわちゃん?」
「別に」
「カテュハさんに勝手に水着デートを押し付けられた事がそんなに不満?」
「・・・別に、奴隷の私に選択肢なんてないもの。あとデートではない」
「わあ、凄い不満そう」
まあ、お堅いたわわちゃんには、水着で遊ぶとか一大事かもしれない。そこらへんフレンドリーなカテュハさんとは価値観が違うのだろう。
何にせよ、たわわちゃんが楽しくないのは良くないなぁ。
「よし! たわわちゃん、俺は良いこと考えたよ」
「・・・・」
「良いことを考えたんだって!」
「・・・何?」
「あっ、その目は止めて! ぐさっと来る! ぐさっと来るから!」
「・・・で? 一体何?」
「うん。これならまあ・・・それでね、たわわちゃん俺と賭けをしよう」
「賭け?」
「そう、賭け。これから魔物狩りだけど俺たちパーティー組むじゃん? そのパーティー戦が楽しかったら俺と一緒にドレステルの休日を遊ぼう。あ、フルルもいるからデートじゃないよ。だから安心安心」
「ふうん・・・それで? もしパーティー戦がつまらなかったら?」
「そんときゃ、たわわちゃんの自由にすればいい。ね?ずいぶんとたわわちゃんに有利な賭けじゃない?」
「楽しい、つまらないの判断基準は私でいいの?」
「もちろん!」
「わかった。その賭け、乗った」
こうして賭けが始まった。
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「お前もよく分からんな少年」
カテュハさんに呆れられた。まあ、カテュハさんの言うこともわかる。
わざわざ賭けをすることでたわわちゃんと遊べなくなる可能性を無意味に増やしただけだしな。
でも、まあ、
「俺はたわわちゃんが大好きなのでたわわちゃんが楽しめることが最優先です」
それが大事。
「あー、まあ素直なのは良いことだと思うが・・・そもそもタワワを楽しませることができるのか?」
「あ、それには自信があります。絶対にたわわちゃん楽しんでくれると思うんですよね」
「そうか・・・まあ頑張れ」
「はい」
そして暫くして森の中で下位悪魔の群れとリーダーらしき闇の幻獣がいた。
奴らを捜し当てた分身は即座にやられたが位置は把握している。
俺は先導しつつ兵隊も整えた。最大召喚数から索敵係の100人を引いた140人を完全武装させ周囲に展開している。
そしてたわわちゃんに告げた。
「俺らの護衛として40人は回すから残りの100人をたわわちゃんにつけるよ。闇の幻獣はたわわちゃんに任せるとして下位悪魔どもは任せてくれ」
「私一人でも大丈夫だけど」
「まあ、そうだろうけど賭けのこと忘れてないよね? 俺にたわわちゃんを楽しませるチャンスをくれないと」
「・・・・・わかった」
「じゃあ、そういうことでたわわちゃん、あっちの方に奴らがいるから先頭で突撃してくれ」
俺はたわわちゃんにそう告げて先頭を譲った。
そして、
「よし野郎ども! 全軍たわわちゃんに続けー!」
「「「おおおおぉおお!」」」
俺の号令と共に分身達がたわわの後に続いて突撃を開始した。
あ、でもちゃんと俺とフルルの護衛に40人は残しているよ。全軍とかはあれだ。ノリで言っちゃっただけなんだけど、でも100人の突撃とかそれで十分だと思うんだ。
「あはははははは! 確かにこれは楽しそうだ!」
カテュハさんが笑っていた。
「でしょう? 楽しそうでしょう?」
俺は同意した。
実はこれは自分でやってみたかったことなのだ。戦国武将みたいに兵隊を引き連れて先頭に立って、「全軍、我に続けー!」とか超言ってみたい。暴れん坊将軍だよ暴れん坊将軍。いや、暴れん坊将軍はそんなことしねーけど。
とにかく、自分でやりたかったけどほんとに自分がやると死んでしまうからお蔵入りのアイデアだったんだ。
そのアイデアを今回たわわちゃんの為に使った。戦闘民族なたわわちゃんならきっと喜ぶと思う。
そのたわわちゃんは既に俺の視界からいなくなっているが、たわわちゃんに続いている分身達は視界に収めている。
こころなしか楽しそうに見える。そんな彼女は敵の群れを既に捉えていた。
真ん中にいる闇の幻獣に躊躇なく突撃する。俺の分身達もたわわちゃんに続いて突撃する。
最初の激突で勝負はついた。
闇の幻獣はたわわちゃんに斬り伏せられ、下位悪魔は俺の分身達が蹴散らした。
「どう? 楽しくなかった?」
戦闘後、俺が尋ねるとたわわちゃんはぷいっと明後日の方を向いてしまった。
ふっふっふっ、これは勝ったな。
そう思いながら、俺は索敵を再開した。
闇の幻獣と下位悪魔は倒した。後は瘴気の歪みを見つけて始末すれば仕事はおしまいだ。
楽な仕事だ。
そんな風に考えていた。
だがそれは後から思えばフラグだった。




