72 レベル30です。
フルルが転移の魔法を覚えてから5日、俺はレベル30に到達した。
まさにうなぎ昇りとでもいうべきスピードだ。その原因はやはりフルルの転移魔法だ。転移の魔法をこっそりと、でもがっつりと使用したら狩りがとてもはかどり、あっと言う間にレベルが上がったのだ。
ステータス
ヒビキ=ルマトール
無限術士Lv 30
闘気 0
魔力 435/550
スキル 分身召喚×30 分身召喚数倍化×2(最大召喚数 120) 代行権
選択スキル
大将の力
分身召喚数倍化
・・・。
・・・。
・・・・・大将ってなんだ?
俺は初めてみたスキルに戸惑った。どんなスキルかまるでわからない。図書館で調べてもそんなスキルは載っていなかった。無限術師固有の能力なのかもしれない。
全く未知のスキル。でもあえて想像するなら大将と言えるのは分身ではなく俺で、その俺がなんらかのパワーアップを果たすのではないかと思う。
・・・・・あー、凄い気になるなぁ。
それから2時間、俺は悩みに悩んだ。
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俺は遂に決断した。
ステータス
ヒビキ=ルマトール
無限術士Lv 30
闘気 0
魔力 435/750
スキル 分身召喚×30 分身召喚数倍化×3(最大召喚数 240) 代行権
うん。結局分身召喚数倍化を選んだ。
いや、正直大将の力には未練があるし、分身召喚数倍化を選んだ時「ああ、やっちまった!」と思ったりもしたんだが、でもやっぱり分身がたくさん増えるのが楽しいし、武具や紫煙花の秘薬も増える前提で準備していたんだ。
未練があるけど仕方がない。どのみち仮に大将の力を取得していてもやっぱり「ああ、やっちまった!」って思うだろうしね。
という訳で俺は増える道を選んだ。
「じゃあ、フルルちょっと試しに行こうか」
俺は狩りに行くことにした。
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47番ゲートの先、緋色の草原でポイズンウルフの群れを相手に無双した。
ある程度、情報収集や生産、解体に分身を回しているが、それでも200人以上の大兵団。
装備を整え、秘薬を飲み、隊列を組めば小細工はいらなかった。
「あははははは! 圧倒的だな我が軍は!」
こう、なんか偉そうな感じで自画自賛した。
「いいの? 他のパーティーが変な眼で見てるけど?」
「いいよ、いいよ、隠さなきゃならないのはおまえの転移だけさ。というより、ここまで来たら悪目立ちするのは仕方がないと思うんだ」
「それは確かに。もの凄く数が多いもんね」
「だろう? だからいっそ開き直ろう。よし全軍! 雄叫びをあげながら攻撃開始!」
「「「おおおおおおおお!」」」
200人以上の雄叫びはポイズンウルフどころか他の冒険者までびびらした。
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〜 たまたま、緋色の草原に居合わせた冒険者達の会話〜
「なんなんだあいつら?」
「あれだけ人数が集まるなんて・・・魔物の氾濫でもおきているのか?」
「・・・たぶん違うと思います。あれ無限術師の仕業だと思います」
「無限術師? ・・・え⁉︎ あいつらみんな分身かよ⁉︎ そんな馬鹿な⁉︎」
「たぶん・・・最近、とある無限術師が中級冒険者になって活躍しているって噂を聞いたんですけど・・・ちょっと信じられない光景ですよね」
「嘘だろ⁉︎ 無限術師なんてせいぜい3、4人に増えるだけのクソみたいなジョブじゃねーか⁉︎ 一体何があったらあんなことになる⁉︎」
「そこまではちょっと・・・」
「それよりリーダー、どうする? あいつらのせいで獲物がこっちまで来ない。文句つけるか?」
と、そこで、
「「「おおおおおおおおお!」」」
奴らは雄叫びをあげポイズンウルフに突撃した。
何百という人間が一斉に突撃する様は物凄い迫力だった。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・狩場を変えよう」
沈黙の後リーダーが言った。
「賛成」
「異議なし」
「あれに文句つけるとかとんでもない」
満場一致で可決した。