06 武器を作ろう……です。
「やーいい天気だ」
「ちょっと暑いぐらいですね」
「今日も稼ぐぞ」
「はい」
雲ひとつない青空を見ながら結成3日目の新米パーティーは家をでた。
昨日はあれから更に2回戦い計6個の魔石を得た。換金して12万ゼニー。悪くない稼ぎだった。正直、確率でいったら馬鹿ツキだ。ちょっと予想外だった。
予想外といえばもう一つ、レベルが上がらなかった。昨日だけで13匹、今までの合計で30匹近く倒している。戦士やシーフだったら間違いなくレベルが上がっているはずだ。
まあ、特殊系希少職は一般職よりも多くの経験が必要だと言われているし仕方がないのか……。
相変わらずの不遇っぷりを嘆きながらも、今日の予定を吟味する。
当初の予定だと、今日もゴブリン狩りだったが、思ったよりも資金が貯まった。
「よし、武器を手に入れるか」
そう言ってエリアに行く前に武器屋に寄った。
今日も荒野のエリアを3人が歩いていた。
「武器〜、武器〜、俺の武器〜〜♪」
1号がアホな歌を歌っている。武器を用意するといったら上機嫌だ。
まあ、今まで素手で特攻していたからな、歌いたくもなるか。そう思って黙認した。
因みに肩には小振りの斧が担がれていた。武器屋で買ったやつだ。
小振りとはいえ斧だ。重いから亜空間ボックスに入れようとしたら俺の武器なんだから俺が持つと言われた。お前の武器じゃねえと言ったんだが聞いてない。しょうがないから担がせている。
「早くゴブリン出てきなよ〜、俺のトマホークが火を噴くぜ〜〜♪」
そんなアホな歌を歌ってたからでもなかろうがゴブリンが2匹現れた。俺としてはまだ戦いたくなかったな。
「よし、来たーー! いくぞ相棒!」
「ちょっと待て、相棒は置いていけ」
「ええ! そんな馬鹿な! なんの為に斧を買ったんすか⁉︎」
「今は説明している暇はないけど、1号の武器として買ったわけじゃない。とっととよこせ」
俺がそう言うと渋々俺に斧を渡した。いや、まあ俺の分身なんだから俺の指示には必ず従うのだが、超不満そうだった。
構わずに突撃させ、自分は亜空間ボックスに避難する。
椅子に腰掛け、観戦しているとフルルが話しかけてきた。
「ちょっと1号さんがかわいそうじゃないですか?」
「そんな事言ったって、最初からこれは1号の武器にするつもりなんてなかったよ。あいつの武器はこれから用意するんだ」
「そうなんですか。でも1号さんが隊長さんの分身なら、そういう考えは共有していないんですか?」
「だよなぁ? 普通そこも同じだと思うよな。 容姿も身体能力も知識もコピーしているのに思考や性格には差異が出るんだぜ? なんでかな?」
「え? 自分でも分からないんですか」
「分からないんだよ。調べようにも資料がない。職業図書館にもいったんだが、無限術師の最新の情報が100年近く前のもんだぜ?」
「あはは、逆に凄いですねそれ」
そんな話しをしていると1号がやられた。
リセットしてスタートする。魔力が1ポイント減った。
「所詮おいらは使い捨て〜、その手に握れるものなどないのさ〜〜♪」
すげぇ鬱陶しい歌と共に1号が現れた。音程がまるであってねえし。しかも、それを聞いたフルルが同情の視線をむけるし、ったくしょうがねえな・・・。
「おい1号」
「なんでしょう?」
「勘違いするなよ。お前の武器は買うんじゃない。これから作るんだ。その材料集めの為の斧なんだ。いいか、武器屋の既製品じゃなく、エリアの中で材料を集めて制作する。これが冒険者の醍醐味だろう。さっさとゴブリンを倒して材料を集めにいくぞ」
「うおおおおお! 行くぜえええええ!」
1号がかつて無い勢いで飛び出した。
「…………単純ですね」
心配して損したという顔でフルルがいった。
「だな……」
俺は複雑に心境で頷いた。コピーがあれだとオリジナルが恥ずかしくなるのだ。
それから程なくして1号はゴブリン共を打倒した。