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55 蒼の武具、その4です。

31番ゲートから3日ぶりに街に帰ってきた俺たちは、そのまま武器屋『ステラ』を訪れた。

そして、ステラさんに話を通して工房に入れて貰った。


「という訳で親方、これで武具を作って欲しいんだ」

「氷青鋼か、これはまた珍しいもんを持ってきたな」


親方は・・といっても20代半ばなのだが、とにかくて親方はぶっきらぼうな声音で返事を返してきた。といっても珍しい鉱石に興味がない訳でもないのだろう。視線はずっと氷青鋼に向けられている。


「片手剣を20。槍を20。盾を20。兜、胸当て、手甲、足甲をそれぞれ40、それと分身じゃなくて俺本人とフルル用に一つずつよろしく」

「大仕事だな、いつまでに」

「・・・3日で出来ないかな?」

「帰れ! ばか野郎!」

「手間賃は弾むよ! ステラさんから聞いたけど新しい魔鉱炉が欲しいんでしょ⁉︎ 特急値段として、少しぼったくっても構わないからさ!」

「こっちの足元見てんじゃねーよ! 3日じゃ、どうやっても間に合わねぇよ!」

「だったら、俺の分身を何人かお手伝いとして置いとくからさ。雑用としてこき使ってくれ、それならどーよ?」

「・・・・・」


親方は無言で思案していた。即座に断られなかったのなら脈があるということだ。俺はたたみかけた。


「なあ、この工房は親方とステラさんの二人きりだろう。で、親方の手が回らない時はステラさんに手を貸してもらう訳だ。でも鍛冶屋の仕事なんて力仕事な上に火傷だらけじゃん。かわいい嫁さんにさせるもんじゃないって。その点俺の分身ならうってつけだと思うんだ」

「・・・・・・ヘマしたらてめえの分身、魔鉱炉に投げ入れるからな」


この言葉は承諾ということだろう。俺は真顔で返した。


「それで構わないよ親方」


それから、分身達を3人召喚して親方の助手にした。


「で、具体的にはどんな奴がいい?」

「素人の考えでいいの?」

「ああ、指針にするだけだ」

「じゃあ、俺は闘気は使えないから闘気を通す工夫はいらない」

「ああ、だから氷青鋼か」


そうなんだ。氷青鋼は硬く、軽く、魔法耐性もある良い鉱石だが闘気をほぼ通さない。もしもこれで闘気の通りが良ければ、たとえ冬山の頂上だろうと冒険者がこぞって大挙しただろう。


「それと、切れ味とか耐久性のバランスとかは正直わからないからお任せで」

「ああ」

「あと防具は、それもよくわからないからお任せで。それと俺とフルルの分は胸当てだけ、出来るだけ軽く作って欲しい」

「わかった」

「俺からの要望はそんなもんかな。じゃあ親方よろしく頼むよ」

「ああ、了解した。だから今日のところはもう帰れ。お前も隣のガキも疲れ果ててんぞ」


親方の指摘に俺はそうだよな、という気分になった。延べ3日の遠征は俺たちにとって初めての経験だ。疲労も溜まる。

親方の忠告に従って家まで直行し、帰るや否やベッドに飛び込んだ。

俺が眠れば親方の助手をしている分身達も消えることに気づいたのは一晩ぐっすりと眠った後だった。

翌日、謝りにいき分身を再度助手として置いてきた。


そして3日後・・・。

親方は約束通りに武具を完成させてくれた。

俺は1号に試着させてみた。


「おお! かっこいい!」


鎧を着て、兜をかぶり、剣と盾をもつ様はまるで騎士のようだ。実際、着ている1号はむせび泣いている。


「ゴブリンと素手で戦わされた俺がついに・・・ついに・・・」


感動する1号をよそに、親方は俺とフルルにも胸当てを渡した。ウキウキと袖を通すとまず感じた事は軽いということだった。

次に胸当てに控え目ながら精緻な紋様が浮かんでいることに気づいた。親方が言う。


「分身共の武具は実用ありきで作った。だがお前達の分は軽さ、動きやすさ、見栄えにも力を入れた。中級冒険者ともなると、それらしい格好も大事だからな。それからほら」


そう言って俺に青い短剣をふた振り渡した。


「お前と坊主の分だ」

「え? でも短剣は注文してないけど」

「サービスだ。いくら後衛職で戦わないとしても、護身用にそれっくらい持っとけ」


親方、格好良すぎるだろう。これはステラさんが惚れる訳だ。

俺たちは揃って親方に頭を下げた。


代金を支払って店を出るとフルルが、


「これから、どうするの?」


と、尋ねてきた。若干普段よりはずんでいるのは気のせいじゃないだろう。俺も御同様だ。


「これからか・・・そんなことは決まってるな」

「うん」

「たわわちゃんに格好いい俺の姿を見せに行こう!」

「え⁉︎ そっちなの⁉︎」


フルルは愕然とした表情で俺を見た。

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