04 作戦会議です
「さあ、狩りに行こうか」
「はい」
翌日、俺たちは早速エリアに向かった。
なんせ金がない。早々に稼がねば飢え死にしてしまう。
それに、一刻も早く戦いたい。なんせ人生初のパーティー戦だ。テンション上がっちゃうぜ!
そんな俺とは対照的に、フルルは冴えない顔している。
「どうした?」
「その、大丈夫なんでしょうか? 僕は全く戦った事ないんですけど? 戦いの時はいつもボックスに避難していたんです」
「ああ、それでいいよ。敵が現れたらボックスに避難してくれ」
「えっ? それでいいんですか?」
「いいよ。俺も一緒に避難するから」
「ええっ?」
フルルが目を白黒させた。
まあ、今の説明だけじゃ理解できないわな。じゃあ、誰が戦うんだよって話だもんな。
俺はフルルに説明する為に自分の魔法を発動した。
スタート。俺の隣に隊員1が現れた。
唐突な出現に驚くフルルに言う。
「これが無限術師のスキル。分身召喚さ。1号、挨拶しろ」
最後の言葉は1号に言った言葉だ。
「おいっす。おいら無より生まれし人造人間、隊員1号っす。気軽にイッチーと呼んでおくれやんす」
普段より三割り増しでふざけた態度だった。尻を蹴っ飛ばす。
「いてぇ‼︎」
「真面目にやれ!」
「すいませんでした隊長! 副隊長もすいません!」
「いえ、別にいいですけど……副隊長? ……僕が?」
「はい。貴方は我ら『軍勢』の、不動の副団長であります」
ビシっと1号は敬礼した。確かに真面目にやっている様に見えるが、これはこれで遊んでいるよな? もう一発蹴っとくか。
さすがに俺のコピーだけあって、俺の不穏な気配を察知した。慌てて付け足す。
「いや、そんなに構える必要はないですよ。そもそも隊長とフルルさんの二人しかいないんですから……。
必然的に貴方が副隊長になるってだけの話です。そんな事より作戦会議といきましょう作戦会議! 隊長、ビシッと今後の方針を示して下さい!」
誤魔化しやがった。
「1号、お前……まあいい、確かに作戦会議の方が大事だな……。まず当面の目標だが、レベル上げと金を稼ぐ為にゴブリンを狩る。此処までで何か意見はあるか?」
「はい」
最後の言葉はフルルに言ったのに、1号が手を挙げた。
「お前には聞いていない」
「そこを何とか! ちゃんと真面目な質問をしますから!」
「…………言ってみろ」
「では……今までそれができなくて、採取の仕事やハイエナ行為をやってきたはずです。副隊長が加入したとはいえ、彼は非戦闘員である空間術師であります。ゴブリンどもを駆逐できるほどの戦力になるのでしょうか?」
「もちろんだ。無限術師と空間術師の組み合わせは最高だと思っている。なぜなら無限術師は亜空間ボックスの中から攻撃できるからだ」
その言葉に1号とフルルが、揃って首を傾げた。
まだ言葉が足りないらしい。
「無限術師の攻撃手段である1号。お前は、お前だけエリアを越えても問題なく行動できるだろう。なら本体である俺が亜空間ボックス内にいても、1号は外で活動できるはずだ」
「ああ、なるほど」
「亜空間ボックス内にいる限り、俺とフルルは安全だ。そして、これまでのように本体である俺を守る必要がないから、1号は攻撃に専念できる訳だ」
「おお、確かに名案ですねそれ…………でもそれって要は、俺一人で戦えって事ですよね? 酷くないですか?」
「大丈夫だ。お前が死んでも代わりはいるから。だから遠慮なく特攻しろ」
「……副隊長、本当にこの人に付いていくんすか?」
「………………うん」
かなりの間をおいてフルルは頷いた。
えっ、何その間? 割とガチでロクでもない主だと思われている? そんな馬鹿な、俺が酷使するのは分身だけだよ⁉︎
フルルにあれこれと言い訳をしたくなったが、隊長の威厳がなくなりそうなので止めた。
大丈夫、まだ2日目だ。信頼関係はこれから築いて行けばいい。
「さあ、いくぞ!」
俺ははそう言ってエリアに向けて歩き出した。