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37 シーフな女の子、その5です。

 知恵の迷宮に挑むことを決めた翌日、俺は準備に奔走した。


 エピソードワン・たわわちゃんと喫茶店で。


 俺はたわわちゃんに協力してもらう為に、たわわちゃんを喫茶店に呼び出し事情を説明した。


「というわけで、協力してもらえないかな、マイハニー?」

「まず、そのふざけた呼び名を止めて。話はそれから」


 どさくさに紛れて、たわわちゃんとの距離をさりげなく詰めようとしたけど駄目だった。


「うーん、先は長いなぁ。諦めないけどね……じゃあ、改めて協力してもらえないかな、たわわちゃん?」

「……協力してあげてもいい。でも条件がある。ボスのアクアゴーレムは私一人で戦いたい。それでいいなら一時的にパーティーを組んでもいい」

「ほんと? いや、助かるよ。ソロで戦う事も、どのみちこの面子じゃそれしかないしね。でも、危なくなったらすぐに戻ってきなよ。いざって時には俺が盾になって時間を稼ぐからさ」

「必要ない。じゃあ明日7番ゲートの前で」

「待って! 待って! 待って!」

「まだ何か?」

「せっかくだからさ、このまま二人でデートしようよ」

「……さよなら」

「たわわちゃーーーーん!」


 たわわちゃんは涙目の俺を振り返ることなく去っていった。くそう、先は長いぜ。


 エピソードツー・フルルとお買い物。


「よし、明日の為に色々と用意しておこうか、フルル」

「それはいいけど、タワワさんとのデートはどうなったの」

「……残念ながら、たわわちゃんは用事がいっぱいあって忙しかったにちがいない。デートはまた今度だな」

「…………」

「おい、そんな顔で見られると流石に傷つくぞ」

「ごめんなさい」

「うわー、胸に刺さるー」


  そんな会話をしながら商店街へたどり着いた。


「よし、まずはアクアマリンを掘り出すピッケルを用意しよう。そうだな……とりあえず20本買うか」

「うん」


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「お次は、たわわちゃんが怪我した時の為にポーションを買っておこう。それに薄暗い洞窟内で俺たちも転ぶかもしれん。グランドワームが近くにいるのに捻挫でもしたらシャレにならん。念には念を入れて10本は用意しとこう」

「うん。腐るものじゃないしね」


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「それから、アクアゴーレムと対峙するまで、たわわちゃんはずっと亜空間ボックスの中で待つ事になる。飲み物を用意する必要があるな。でも愛しのたわわちゃんに安物の紅茶とか出せやしない。お高い紅茶を用意しとこう」

「……まだ、諦めてないの?」

「なに、そのいいよう⁉︎ 諦めるも何も俺とたわわちゃんの関係はこれからだよ!」


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「あとは……明日たわわちゃんと一緒に冒険をする記念に、彼女に何か送りたい。フルル、たわわちゃんが

 喜びそうなものって何だと思う」

「そんな事聞かれてもわかんないし!」



 エピソードスリー・クーヤとプレゼント選び。

 

「という訳で、お年頃の女の子の喜びそうな物が俺やフルルには分からなくてな、ここは同じ女の子であるクーヤにアイデアをもらいたいんだ」

「馬鹿じゃないの!」


  クーヤは怒った。


「いい? 明日の成否に私のこれからの人生がかかっているのよ⁉︎ そんな時には色ボケしてんじゃないわよ!」

「いやいや、誤解するな。ちゃんとたわわちゃんの協力は取り付けたし、準備も整えた。やるべき事はやっているから非難される筋合いはないよ」


  第一、クーヤの人生とたわわちゃんの笑顔、どちらが俺にとって大事なのかは論ずる必要すらない訳で、


「そもそも。じゃあクーヤの方は今日どんな準備したのさ?」

「それは、その……あれよ……」

「ほれみろ、何もしていないんじゃないか」


 まあ、レベル2でソロで金もないクーヤに、どんな準備もできない訳で。


「なあクーヤ。改めて言っておくけど、7番エリアの知恵の迷宮でクーヤができる事なんて何もない。つまり、報酬をクーヤに分ける必要はない訳だ」

「うっ……」

「その上で、俺の取り分からクーヤに渡すのは、商人としてのクーヤに投資してもいいかなと思ったからだ。商人に貸しがあれば色々と融通してもらえる事を期待しているんだ。そして、俺は今、女の子の喜びそうな物が欲しい。という訳でよろしく」

「わかったよ!」


  やけくそ気味に叫んでクーヤは長考に入った。


「……そうね、そのタワワって娘に渡すなら食べ物がいいと思うわ」

「えー……もっと思い出に残るような物がいいんだけど」

「重いわ。そういうのは恋人に贈るような物で、ほとんど赤の他人に贈るのは、逆に女の子が引くくらい重いわ」

「えー⁉︎ 赤の他人って、ええーっ⁉︎」

「他人よ。あんたの中でどんな間柄になっているのか知らないけど、聞いたかぎりで私が判断すると赤の他人という事になるわ。第一今日デート断られたんでしょう?」

「くっ、反論できない!」

「だからまあ、ケーキくらいがちょうどいいのよ。おすすめの店があるわ。今、女の子に大人気で3時間待ちのスペシャルケーキ。場所教えるから今から買ってきたら。あっ、4人分ね、4人分。4人で出かけるのに1人だけに買ってくるとか印象悪くなるわよ」

「…………」


 お前それ自分がケーキ食べたいだけじゃねーの?

 そう思いつつも、結局3時間ならんでケーキを買ってきた。

 ケーキを片手に貸家に戻ってきた時には日が暮れ始め、慌ただしい1日は終わった。

 

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