32 遠征です。
斬。
ライトニングボアが重鋼の刃で斬られ、悲鳴もあげずに二つに分かれ魔石と変わった。
そしてギロチンを引き上げ、空中にある亜空間ボックスの入り口からはしごを下ろし、俺とフルルが降りてきた。俺たちが地面に降りるとギロチン係の分身がはしごを引き上げ、フルルが入り口を閉じた。
「うん。はしごを買っといて正解だったな……」
ずいぶんと楽だ、そう呟きながらライトニングボアの魔石を拾い上げた。
「よし、これで6品目。フルル、これから歩くけど大丈夫か?」
「うん。大丈夫」
「じゃあ、このまま、次のエリアまで行って、コダインの実とでかカエルを狩りに行こうか」
「うん」
コダインの実もジァイアントフロッグの魔石も、指定取得物に指定されている。
それらを狩る為に俺たちは歩き出した。
うん。予想以上に上手くいっている。俺はそう感じている。分身召喚数倍化はすごく役にたっていると実感している。分身達はフル稼働状態だ。
あれから更にフルルのレベルが上がり、現在は亜空間ボックスは3つになっていた。
その3つ目の亜空間ボックスには魔石に変わらなかったモンスターの遺体を入れておき、俺の分身二人が解体をする解体部屋となっていた。正直、気が進まないが、これまでの待ちの狩りではなく、積極的に動き回る今、無駄なタイムロスを避ける為にも亜空間ボックスの中で解体をしていた。
ギロチン係の5人と計7人が亜空間ボックスの中で働いている。
更に俺たちの両脇を二人が護衛として固めている。いざという時の盾役というばかりではなく、敵を発見し俺たちが亜空間ボックスに引っ込んだ後は、敵を誘導して、時には敵もろともギロチンで斬られる役だ。
そして、9人の分身が俺たちを中心に広がっている。索敵係だ。俺本体とフルルは戦闘力がない上に亜空間ボックスを空中に設置する為にどうしてもひと手間がかかる。その為、広域の探索は必須だ。また、敵が複数だったとき、上手くばらけさせ一体ずつ倒す為にも必要だ。
残りの二人は街に置いてきてある。一人は冒険者の為の冒険者図書館(入場料必要)にいる。もちろんお金を支払ってな。
そこで、いまいるエリア、これから向かうエリアの地図や、モンスターの詳細、入手可能な資源などを調べる役だ。
例えば、俺たちの分身の索敵網を抜けてくる飛行系のモンスターがいるかいないかを事前に知っておくだけでもずいぶん違うし、そもそも近寄らないという選択をする事もできる。そういう情報を分身を通してリアルタイムで受け取っている。
最後の一人は、情報収集の為にギルドを回らせている。これからの冒険の為に紫煙花という花が欲しいのだ。とは言えど、そうそう見つかる様なものでもないのだが、まあ分身一人情報収集に当たらせる価値はあると思っている。
とまあ、20人の分身を色んな用途に振り分ける事で、俺たちは順調に狩りを進めている。
そして、今までは日帰りだったのだが、今回は違うサードエリアまで行き指定取得物のカエルや実を取るのだ。1日では終わらない。エリアの中で夜を迎える事になる。
とはいえ、
「いよいよ、空間術師の本領発揮だな」
「はい、頑張ります」
俺たちには大した問題でもないのだけどな。