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29 完成、オーク殺し、その2です。

「とりあえず、上手くいったな」


 俺は、じゃらじゃらと音を立てながら引き上げられる重鋼の刃を見ながら、そう呟いた。

 ギロチン、それが俺が鍛冶屋で頼んだものだった。

 ギロチンは罪人を処刑する為のもので一般的には武器とは言わない。そもそも武器として振りまわせる様な物じゃない。ましてや重鋼のギロチン、引き上げるだけで5人がかりだ。

 俺は空間術師の亜空間ボックスを上手く利用すれば、頭上からの必殺の一撃となると考えたのだ。

 亜空間ボックスの中から分身を出して攻撃する戦い方を、更に発展させたやり方だ。

 実はこの考えは俺のオリジナルじゃない。何百年か前にとある魔術師が、亜空間ボックスの中から攻撃できないかと考えた。そうすれば、不意をつけるし反撃も受けない。上級魔術の長い溜めも前衛に守られる訳でもなく安全に行える訳だ。

 だが、結局この戦法は実用化しなかった。何故なら亜空間ボックス内から外の様子が把握できないからだ。

 空間術師は自由に出入り口を設置できるが、一度中に入ってしまうと出入り口の位置を変える事は出来ず外の様子は把握できない。亜空間ボックスから出る時が一番危険だ、そう言われている。

 そして、出入り口を移動させられない、外の様子が把握できないとなると、亜空間ボックス内からの攻撃は不可能だとされていた。

 だが、俺は無限術師なら分身を使い外の様子を探れるんじゃないかと考えた。

 そして、その考えは上手くいった。上手く亜空間ボックスの出入り口の下まで誘導してタイミング良くギロチンを落とした。

 重鋼で出来たギロチンの威力は凄まじく、一撃でオークを屠った。

 いや、オークだけじゃない。基本的に待ちの戦法だがおそらくリザードマンやライトニングボアなど更に強い敵も倒せると思う。

 デメリットも今のところたいした問題はない。せいぜい、ギロチンの木製部分が重鋼の重みで寿命が短いのではということと、地面から2メートルの高さに出入り口を設置する為入りづらいことぐらいだ。前者は元々木組みの部分は俺が1日で作ったもので、材料さえあれば作り直す事も出来る。後者も分身をあらかじめ亜空間ボックス内に入れておき、引っ張りあげて貰うというだけの、ちょっと手間がかかる程度の事だ。

 ああ、あと一つ、いよいよ亜空間ボックス内に足の踏み場もなくなってきたが、こればっかりは仕方がない。

 そして、そんなデメリットを上回るリターンがある。

 とりあえずレベル10を目指そう。無限術師にとってレベル10は一つの節目だ。そしてレベル10になったらより先のエリアに進む。

 俺は当面の目標を定めた。


  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ぎゃあああ!」


 森に1号の悲鳴が広がった。

 オークもろともギロチンの餌食になったのだ。

 俺は喪った分身を新たに生み出し、外におろした。

 残念ながら魔石にならなかったので、その場で毛皮を剥いでいく。亜空間ボックス内で捌くのは止めた。狭いし、入り口が2メートルの高さになったし、血の匂いが正直いやだ。

 それに、こうやって外で捌けば血の匂いに釣られてより多くの敵がやってくる。

 そして、それを片っ端から狩っていった。

 無論、全部が全部上手くいった訳じゃなく、例えばオークが2匹まとめて現れた時なんかは一匹ずつ分断して倒すことが上手くいかず、ずいぶんとしくじったが、それもまた今後につながるいい経験だった。

 俺たちは普通の冒険者と違い、失敗がそのまま生死に直結しない。魔力を数ポイント消費するだけだ。たくさん失敗出来る、これも俺たちの強みだ。

 そうやって、森の魔物を狩り続けていると、


「ええ⁉︎」


 フルルが突如驚きの声を上げた。


「どうした?」

「あの……えっと……その…………後ろ」

「後ろ?」


 俺が振り返ると淡い白色の壁があったはずなのに、それがずっと、およそ5メートル先まで遠ざかっていた。


「えっと……広くなっている? フルル、どうなっているんだ」

「あの……その、レベルが上がったんです」

「はい?」

「いや、だから、レベルアップしました……僕が」

 

 そう言ってフルルは、自分のステータスを俺に見せた。

 


 フルル=ゼルト

 空間術士Lv 2

 闘気 0

 魔力 0

 スキル 亜空間ボックス(保有数2)


 ……。

 ……。

 何故だ⁉︎ 俺は首をかしげることしかできなかった。

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