28 完成、オーク殺しです。
「いらっしゃい。頼まれた奴できてるよ」
灰色の砂漠に重鋼を取りに行ってから3日目、完成した武器を引き取りにきた。
俺は代金を支払って物を受け取ろうとしたが、見回しても見当たらなかった。
「どこにもないけど?」
「あんな重たいもの移動させられないよ。工房にあるから取りに来て」
俺たちは店の奥に入った。
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個人経営でやっている工房はあんまり大きくなかった。その狭い部屋の中でカンカンと金属を叩く男がいた。あんまり愛想の良くないこの男は自分の店に奥さんの名前をつけるような可愛らしい面もあるらしい。似合わないけども。
そして俺を見るなり、
「できてるぞ、とっとと持っていってくれ。重くて動かせんから邪魔でしょうがない」
端的に用件をいわれた。確かに仕事の邪魔になるだろうという場所に俺の要求したブツがあった。近づいて触って見ると俺の力ではビクともしなかった。
俺は分身を9人全員呼び出して、9人がかりで亜空間ボックスの中に入れた。
そして、工匠に、
「ありがとう」
お礼を言うと、身振りでさっさと行けといわれた。
毎度の事ながら、この男がどうやってステラさんを嫁にしたのか理解できない。ライバルは多かっただろうに。
「あはは、ごめんね、あいつ無愛想でさ。でも、あれで珍しい物を作れたって上機嫌なんだよ」
「あれで⁉︎ マジで⁉︎」
「マジですよマジ。じゃあ、これから狩りに行くんでしょ? 死なないように気をつけてね」
「これから狩りに行くって何でわかるの?」
「ん? 新しいオモチャを手に入れた男の子のやることなんて決まっているっしょ」
そう言ってステラさんは、俺たちを送り出してくれた。
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確かにやることが決まっている。
俺はオークを狩りに森のエリアにやって来た。
オークが多発するポイントで準備を整えて待ち構えた。
しばらくしたらオークが現れた。
それに対して俺は4人の分身を差し向けた。ただし素手で。
もちろん相手になるもなく、近くの奴からあっという間になぎ倒された。
1人2人3人と打ち倒され、逃げようとした最期の4人めの腕を掴み骨が折れる音がした。
そして次の瞬間、突如上から、地面から2メートルの高さに設置された亜空間ボックスの出入り口から漆黒の刃が落ちて来てオークを豆腐みたいに切り裂いた。
俺の分身ごと。