26 武器屋のお姉さんです。
あれから4日、たわわちゃんに対抗意識を燃やした俺はオークを狩って狩って狩りまくった。結果、俺のレベルは9になった。
オークと戦い続ける内にスタイルも固まってきた。まず槍は使うのを止めた。オークに使われると厄介だからだ。斧も使われるのだがリーチがないぶんこちらの攻撃が通りやすい。
そして、大勢で囲んでまず足を狙う。それから動きが鈍った所にタックルをかまして動きをとめ、最後に首に斧攻撃。
このパターンでオークは倒せる。昨日などは3匹まとめて倒した。順調にオークを狩れるようになったが、見過ごせない問題があった。
赤字なのだ。どうやってもオークを1匹狩る事に使われる金の方がオークの魔石や毛皮で得られる収入よりも多いのだ。その原因はやっぱり武器だ。今オークには斧を使っているが、オーク1匹に一つ、悪くて二つは駄目になる。俺が駄目にする訳じゃない。オークが駄目にするのだ。オークは、その場に落ちた斧を使うのだがやたらめったら振り回し、挙句にはこちらの斧とぶつかったり、最悪周りの岩や地面にぶつかったりするのだ。
今まで試行錯誤してきたが今までのやり方では早々に資金が尽きてしまう。
俺はやり方を変える事にした。
「あ、いらっしゃいませ〜」
俺はオークの魔石や毛皮をギルドで売ると武器屋を訪れた。
まだ20歳前後の美人なお姉さんはとてもにこやかなな笑顔で迎えてくれたが、別に俺に気がある訳じゃない。俺がとても良いお客だと言うだけだ。なんせここ何日間かで槍と斧を何十本も購入している。そもそも、旦那さんいるからなこの人。そして俺にはたわわちゃんがいる。
「こんにちは、武器の修理お願いします・・・じゃ頼む」
最後の頼むはフルルに向けた物だ。
フルルは亜空間ボックス内にひとまとめにしておいた破損した斧を取り出した。
ドカドカと置かれた斧をお姉さんは選り分けていった。
「えーと、これと、これと、これも、あとこれももう修理は無理かな。昨日のようにこっちでひきとろうか?」
「それでよろしく」
「残りのやつは明日の朝には研ぎなおしておきます」
「ありがとう」
「それから、壊れた斧の補充はします?」
「いや、斧はいいよ。その代わりツルハシが4つとスコップが二つ欲しいんだけど」
「まいどあり〜」
「それから、オーダメイドで武器を作って欲しいんだけど……幾らぐらいかかるものなの?」
「おお〜。特注とか旦那喜ぶわ。値段は・・そうね……ツルハシとスコップ買うって事は素材を自分でとってくるの?」
「うん」
「いいね。いいね。ロマンだよねそれ。何?何を取ってくるの?」
「重鋼」
「ええ、重鋼⁉︎ 重鋼で武器を作るの⁉︎」
「うん、こんな奴」
俺はお姉さんに設計図を渡した。
「ええっ?これ武器っていえるの?」
まあ、微妙なところだと言える。
「できないかな?」
「いや、お仕事だから、ありがたくやるけどね……うーん、材料そっち持ちだと……30万ゼニーくらいかな〜」
「……30万ゼニーか……うん。上手くいけば明日材料持ってくるよ」
「頑張ってねと言いたいんだけど、君たち二人パーティーだよね。それで重鋼があるエリアは11の3番だよね? 二人で大丈夫?」
「あー……正直モンスターには歯が立たないかな。でも、モンスターを避けて進むだけならできると思ってる」
「そう? じゃあ、あんまり無理しないでね。君たちは大事な大事なお得意様なんだから。うちの旦那も新しい魔鉱炉が欲しいっていっているからさ。そろそろ駆け出し武器屋を卒業して武器一本に絞りたいみたい」
「……ああ、気をつけるよ」
ストレートなお姉さんの言い分に若干呆れたけど、まあ悪い気分はしなかった。
ちなみに魔鉱炉は魔光器と同じく魔石三大発明の一つで金属加工には欠かせない代物だ。より良い武器を作るのにはより良い魔鉱炉が必要だ。
ただ、俺としてはこの『ステラ』を利用しているのは量産品が多い事とツルハシやスコップなど土木用の工具も取り揃えていることが理由なので、武器一本に絞られるのはむしろ困りものだったりするけど、まあ先の話だ。




