25 リベンジオーク、その3です。
あれから、更に戦いオークを3匹倒した。残念ながら魔石に変わったのは最初の1匹だけだったので残りの2匹は毛皮を剥いだ。中の肉は売れないので置いてきた。いずれエリアに還元されるだろう。
ギルドの受付に魔石と毛皮を渡すと査定を待つ傍ら夕食を取ることにした。因みに大抵のギルドには酒場が付属している。こうやって査定までの時間潰しだったり、仲間になるならないの勧誘だったり、稼いできた冒険者から稼ぐ為だったり、ギルドと冒険者双方に何かと都合がいいからだ。
食事をとりつつも、今になってオークに勝った興奮が湧いてきた。
だってあれだぜ、無限術師がオークを倒したんだぜ。歴史上初の快挙だぜ?無限術師はどれだけ増えてもオークには敵わない、あの有名なことわざを覆したんだぜ?
これは、あれだ。周りから騒がれるんじゃないか?騒がれてしまうのではないのでしょうか?因みにこのギルドの受付も冒険者も大体の奴が俺を無限術師だと知っている。なんせここで、パーティーに入れてくれと頼んだのをたくさん断られたからなぁ。その使えない奴呼ばわりされた俺が無限術師の常識を書き換えた訳ですよ。驚きと共にあの時仲間にしとけば良かったと後悔するんじゃないか?後悔するのではないでしょうか?
と、そんな事を考え周りを気にしながら食事を取っていると、周囲が騒がしい事に気が付いた。一瞬、俺のことかと期待して聞き耳をたてるとどうも違った。
「なあ、13番エリアの珊瑚の迷宮をソロで突破したらしいぜ」
「信じらんねーな、踏破前はまだレベル1桁だったんだろ?」
「ああ、普通20レベル超えてもソロはないよな?」
聞き耳を立てていた俺は驚いた。フルルも驚いていた。13番エリアからつながるセカンドエリア珊瑚の迷宮は稼ぎがいいので有名な場所だ。が、その分危険も多い。4人以上のパーティーでレベル15以上が推奨レベルだとされている。いったいどんな怪物が一人で攻略したというのか?
答えはすぐにわかった。
「とんでもないよなタワワ=リンゴレッド」
たわわちゃん! お前か⁉︎
「というかなんでソロなんだ。奴隷だからこき使われているのか?」
「いや、この前まではパーティー組んでたぜ。つっても固定パーティーじゃなく、基本飛び入りらしいが、まああの子なら引く手数多だろ」
「俺もパーティー組みてえな、つかあの子の主人羨ましすぎるだろ」
「バーカ、あの子は自分より上のレベルの奴らとしか組まねえんだよ。それに、主人は女らしいぞ?」
「なんだと!」
そんな話が酒場中から聞こえてくる。
そうか、たわわちゃんも頑張っているんだ。まあ負けず嫌いだからなあの子は・・。そうあの子は負けず嫌いなんだ。だから断じて俺と結婚したくないから無茶をしているなんてことはないはずだ。
そんなこんなする内に俺の査定が終わり受付に呼ばれた。
「合計で24万ゼニーになります」
「・・・ありがとう」
実の所ちょっとは、わあ、オークを倒したんですかすごーい。とか驚くんじゃないかと期待していたんだが全然そんな事なかった。無限術師には大事件でも所詮はオーク、そう言う事だろう。
すごすごとテーブルに戻り食事を終えると、俺はたわわちゃんの噂で持ちきりなギルドを後にした。