24 リベンジオーク、その2です。
「突撃!」
分身達が槍を構えて突撃した。
「ふー! ふーー!」
対するオークも7対1でも構わず突撃してきた。
ドン!
オークの振り回した腕が分身達を薙ぎはらった。直撃を受けた奴は即死だったし、槍の柄の部分で受けた奴もそのまま押し潰された。分かっていたが個々の力の差は歴然だった。
だが、
「はっ!」
強靭なオークも手が二つだ、7人の攻撃全てを防げなかった。7人の内の一人が突き出した槍がオークの脇腹を捉えた。
「オオオオオオオオ!」
オークが悲鳴を上げた。致命傷には程遠いが確実に刃が刺さった。
「よし!」
亜空間ボックスの中で俺は拳を握りしめた。
前回、剣で斬った時はほんとかすり傷だったが今回は違う。柄の部分まで鉄製の重い槍を用意してよかった。まだ一撃与えただけだが勝てる。
そう思いながら分身達の補充を行った。
生み出された分身は槍や斧を手に取りながら亜空間ボックスから出て行った。
2撃目は斧の一撃が足に入った。足の切断など夢のまた夢だが動きは鈍る。
このまま、押し切れると思ったがオークが予想もしない行動に出た。近くに落ちていた鉄の槍を拾ったのだ。
内心でえ? と思ったのだが次の瞬間オークが槍を振り回し形勢が逆転した。
どかっと、いっそ気持ちがいいくらい分身達が次々と吹っ飛んでいった。
オークは槍を子供のように振り回しているだけだ。ほとんどが刃に当たってもいない。だが強靭なオークの筋力と重量のある鉄の槍が組み合わさり凶悪な武器になっている。
「フォォォォォォ!」
群がる分身達を叩きのめしたオークは雄叫びを上げた。
このイノシシ野郎、人の武器を奪って無双するとか、マジ許さない。
戦う前から思っていたが改めて採算度外視で戦う決意を決めた。
そこから先は総力戦だった。いや消耗戦というべきなのかもしれない。
とにかくやたらオークは強い。次から次へと分身達が倒れていく。だがいくら強くても四方を囲まれると傷を負う。
結果少しずつ、勝負の行方は俺たちに傾いていった。
俺はすでに50人以上の分身を生み出していた。すでに亜空間ボックス内には槍も斧もない。ただこれまでの戦闘でそこらの地面に散らばっているので問題はなかった。
「うおおおおおおおっ!」
一人が槍を拾い真正面から突撃した。
「フォオオ!」
オークがそれをあっさりと返り討ちにしたが、そこで足元に転がっていた分身が足に絡みついた。
「フガ⁉︎」
奴はちょっと前にオークにやられたが足が折れただけで命に別状はなかった。普通なら足が折れた時点でリセットして再召喚するのだがうまくいけばに隙をつけるかもしれないと思い息を潜めさせていたのだ。
いかに強靭なオークとはいえ負傷は軽くない上に60キロ以上の重しが足に絡みついたのだ、うまくバランスをとれず足がもつれた。
引き剥がそうとするが俺たちの方が早かった。3人武器も持たずに飛びつきオークを拘束した。
そんな俺たちを引き剥がそうとオークは暴れようとしたが俺たちも必死に押さえようとした。
「ファイトー!」
そして、膠着状態の所に斧を拾った分身が斧をふりかざした。
「いっぱーつ!」
掛け声と共にオークの首筋に斧を振り下ろした。
それが決着だった。致命傷を負ったオークが動きを止め魔石に変わっていった。
オークが魔石に変わったのを確認して、俺はフルルを連れて外に出た。外には武器が散乱しているので分身達に回収するように命じた。
そして魔石を拾う。ゴブリンの物とは違う色の魔石を手にとって俺は複雑な気持ちになった。これまで無限術師が倒せないと言われていたオークを倒した達成感とオークを倒す割の合わなさが半々といった所だ。オークの魔石の相場は1個10万ゼニー。それを手に入れる為に何百万ゼニーも費やしたんだ。こう素直に喜べないのも仕方ないと思う。
と、そこで、
「すごいです団長」
隣のフルルがそう言った。
「本当にそう思う?」
たかだかオーク1匹倒しただけだよ?
「はい!」
無邪気に笑うフルルを見て俺は吹っ切れた。
「ありがとう。だがまだまだだオーク1匹なんかで満足なんかしねえし・・・野郎共、このままオーク狩りを続けんぞ!」
「おおおお!」
俺たちの戦いはこれからだ。