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20 敗北からの選択肢・・・です。

 オークに敗北した翌日、俺は喫茶店でくだをまいていた。


「ちくしょー」


 口に出る愚痴にも力がない。今の俺は空気が抜けた風船みたいな感じだ。

 うん、超凹んでいる。

 俺はグレープジュースをがぶ飲みしながら昨日の事を考えている。

 正直、オークがここまで強いと思っていなかった。ゴブリン相手に無双できたから、オークも倒せるとか根拠のない自信があった。だけど違った。世間の評価はなんだかんだで的を射ていると痛感した。

  最大の問題はダメージを与えられない事だ。フルルがいる以上オークに俺を倒す事は出来ない。攻撃だって多人数で連携すれば当てる事は出来た。だが効かない。オークの防御力を闘気のない俺では打ち破れない。

 何より、


「レベルが上がっても物理は上がらないしな……」


 それが問題だ。

『レベルを上げて物理で殴れ』という言葉が前世にはあった。確かとある糞ゲーが発端で生まれたんだったかな。

 ただ、この身も蓋もない言葉は意外とゲームの本質をついていたりする。多くのゲームはレベルを上げてステータスを上げた方がクリアしやすいものだ。

 この世界でも同じことが言える。特に前衛で闘う奴は下手に技術や経験を考えるよりレベルを上げて闘気を上げる方が効果的だったりする。

 だが、無限術師は闘気が上がらない。いやまあ無限術師は前衛職じゃないんだけど物理で殴らなきゃならないのは一緒なわけで……。

 なのにこの先レベルがどれだけ上がって召喚できる人数が増えたとしても、攻撃力という点では今と変わらないわけだ。

 ……。

 ……。

 

「どうすっかなこれから……」


 そんな言葉がでた。出てしまった。

 これからどうするか? それは再びオークに挑むのか引くのかという事だ。

 今までなら挑むと即決出来ただろう。

 だが今回オークと闘ってみた事でそれが茨の道だとわかってしまった。

 少なくともオークを倒すのは不可能じゃないと思う。なぜならかすり傷とはいえ、鉄の剣を使い一度だけダメージを与えたのたがら。

 だから、もっと良い剣を用意するか、もしくはもっと重い一撃を与えられる鉄の槍や斧なんかを用意すればオークにダメージを与えられるはずだ。

 だが、一本や二本用意したところで勝てるとは思えない。今召喚可能な分身数に合わせても7本、実際のところ30本ぐらいは必要だと思っている。

 けどそこまでするか? オークの魔石は10万ゼニーだぞ? 10万ゼニーの魔石の為に100万、200万ゼニーをかけるのはコストパフォーマンス的に間違えている。

 更に言えば仮にオークを倒したとしても次の敵をどうするのかという問題がある。オークはあくまで初級の敵だ。もっと強い敵は沢山いる。それこそかすり傷一つ負わせられない奴らが沢山いる。大枚はたいてオークを倒したとこで、そいつらは倒せないかもしれない。

 遅かれ早かれ壁にぶち当たる事になるだろう。

 逆に引く――オークと闘わず、今後はゴブリン狩りで満足するという選択肢もある。正直この選択肢は楽な上に金になる。

 すでに竹槍を使ったゴブリン狩りの手法は確立されている。何の危険もコストもかからず稼ぐ事が出来るだろう。ましてや継戦能力に優れている事を考えると俺はたぶん中級冒険者クラスの収入を手にする事が出来ると思う。実際、フルルに出会ってからの短い期間で冒険者ではない普通の人の一年分の収入とほぼ同額を稼いでいる。このままゴブリンだけを狩り続けるだけで遊んで暮らせるだろう。

 けれど、それは天位の座を諦めるという事だ。無限術師は使えない、その評価を受け入れる事だ。

 

「情けないな……」


 これまでは、天位の座を目指していたし、それを諦める事など考えもしなかった。だが昨日オークと戦ってみて、天位の座がどれほど高い所にあるか初めて実感した。それこそ、雲の上まで届く様な断崖絶壁の様だ。

 これまでのように無邪気に天位の座を目指せない。

 だが、現状で満足したくもない。

 そんな風に自分の進路について悩んでいると、同じテーブルに誰かが座った。

 空いてるテーブルは結構あるのに? と、思いながら顔を上げると、なんかちょっと睨んでいるようなたわわちゃんが座っていた。

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