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01 異世界です

はい。という訳で、見事、鉄亀の甲羅を換金して30万ゼニーもの大金をゲットし、すごい上機嫌のヒビキです。

いくら冒険者稼業が儲かるからといって、初級の冒険者が1日で30万ゼニーを稼ぐとかなかなかないよ。

かなりの冒険だったんだけど、かわいい俺の分身を30体近く犠牲にした甲斐があったよ。あっはっはっはっ。

え?プロローグと性格が違わなくないかって? いや、隊員1も言っていたじゃん演技だって。俺、前世ではネトゲにかなりはまっていたんだけど、割とガチのロールプレイヤーだったしさ。

そう、俺は前世は日本人だったのだ。いや、子供の頃からなんか変な感覚あったんだよ。そして、はっきりと自覚したのは8歳の頃だったんだけど・・・、いやー、びっくりしたね。輪廻転生って本当にあるんだね。しかも、異世界とかありえねーよって感じだったんだよ。

実際、結構苦労したんだよ。母親に「お前なんか本当の母親じゃない」とか言っちゃって、父親に山ほどぶん殴られたりとかさ。

何より世界の違いに戸惑ったね。

地球とはずいぶんと違うんだ。一番違うのはこっちの世界には神様がいるんだよ。

いや、地球にも宗教はあったんだけどさ。こっちの神様は、なんつーかアクティブなのよ。がんがん干渉してくんのさ。

女神教って呼ばれる、なんと女神本人が広めた宗教がこの世界のほぼ唯一の宗教なんだが、女神の話によるとこの世には数多の世界があって、それぞれの世界一つに付き一人、神様的なえらい奴が管理しているらしい。

管理方法はそれぞれの管理者に一任されていて、この世界の管理者である女神様は、人に色々と恩恵を授けているらしい。

その最たるものが迷宮かな。大陸の中央部に、エリアって呼ばれる異界への転移ゲートがたくさんあって、ゲートの先には草原、砂漠、水辺、山、洞窟、とにかく色々なフィールドが用意されていて、そこには貴重な品々や魔石をおとすモンスターが存在している。で、フィールドの中にも転移ゲートがあって、基本的には先に進むほどより貴重な物が入手できるんだ。もちろん先に進むほどモンスターも手強い。

そんな危険なエリアを探索するために、神殿に行ってジョブと呼ばれる恩恵を授かるんだ。

そうやって恩恵を受けた人々が、エリアから持ち帰った物を活用してこの世界の文明は回っている。代表的な物はやっぱり魔石だね。

魔力の結晶である魔石は文明の基礎で、地球なら電気の様な物なんだ。

魔石以外にも迷宮の産出物は総じて価値が高い。一攫千金を求めて世界中から人が集まり、迷宮を中心に都市ができたんだ。

それが、もう何百年か前の話で、それから今まで、規模を拡大しながら迷宮都市は歴史を積んできたんだ。

俺はその話を教会の神父さんから聞いた時、思わず、


「なんで、普通に与えないで戦わせるんだろう?」


と、聞いてしまった。

聞いてからやばいかなと思ったんだけど、同じ事を考えた奴は何人もいたらしい。

神父さん曰く、人はただ与えられるだけだと堕落する。自ら努力する事で輝くのだ・・らしい。

まあ理解できる話ではある。実際、その時には可愛く分かりましたーって言ったしね。

ただまあ前世がネトゲマニアの日本人としては、女神様とやらは絶対楽しんでいると思う。

ダンジョン作って、ジョブを作って、モンスターと魔石作って、お前はGMかって言いたくなる。まあ、実際にあっても言わないけどね。


とまあ、最初は世界の違いと言うか価値観の違いにギャップを感じたんだけど、15年もこの世界で過ごせばそれなりに順応して受け入れられる様になってきた。

こっちの世界では、宗教戦争も自然環境破壊もエネルギー問題もないしね。

そして農家の三男坊に生まれた俺としては、世界の成り立ちなんぞより、自分の将来を考える事の方が大事な事なんだ。

15歳はもう就職する年なんだ。三男坊だから実家は継げないし、かといって就職はね・・。もう社畜はいいかなって思うし、前世がネトゲマニアとしては、冒険者とか正直憧れちゃうしで、俺は迷宮都市にやって来たのですよ。

そして、教会で女神像に祈りを捧げる事で、見事ナンバーワン不遇職、無限術師へとクラスチェンジしたんだよ。

・・・・・なんでかな?GMとか内心で考えていたからかな?

普通はさ、2、3個選択肢が現れて、その中から自分がなりたい職業に就くもんなんだけど、俺の場合、選択肢が一つだけ。それだけなら、まれにあるらしいんけど、その唯一の選択肢が超希少職の無限術師とか三億ジャンボが何回分って感じだよ。当たっても少しも嬉しくないけどね。どうせなら、同じ希少職でも有用な聖騎士とかがよかったんだけどなぁ。

かくして教会の人曰く、何年かぶりの無限術師が誕生したわけだ。

そして、その道は荊の道だった。

まず、誰もパーティーを組んでくれなかった。色々と頼んでみたけれど、どいつもこいつも無限術師お断りだった。

理由は将来性がないから。

不人気ナンバーワンの無限術師なんだが、実の所、レベル1で比べると他の職に負けている訳じゃない。

むしろ、いい感じだ。だって、自分の分身を1ポイントで作り出せるんだぜ? しかも、魔力は100だ。分身を100体作り出せるのは、かなり強力だと思ってる。

そしてレベルが上がるごとに、最大召喚数と魔力が上がっていくんだが、言い換えるとそれしか上がらないんだ。少なくとも確認されている限りでは。闘気が上がる訳でも攻撃魔術を覚える訳でもない。

で、ちょっとイメージして貰いたいんだけど、例えばドラゴンが現れたとして、村人が何十人いた所で無駄だと思わない?

実際、一番数の多い普通職の戦士だって、レベル3にもなれば地球でのボクシングチャンプくらい強いんだ。それと同じレベルの無限術師だったら、分身数3と自分を合わせて4人だ。

世界チャンプと素人4人どっちが強いと思う?つまりはそういう事なんだ。

昔から、無限術師はどれだけ増えてもオークには敵わない。そんなことわざがある。

オークは初心者の登竜門と呼ばれる魔物で、オークを狩ればいっぱしの冒険者扱いをされる。

だが、強力な筋肉と厚い猪の毛皮には、闘気を持っていない人間には歯が立たないらしい。つまり、どれだけ増えても無限術師は役に立たない訳だ。

そして冒険者になるやつはそれぞれ目標がある。上級までたどり着くのか、中級で満足するのか、最高位である『天位の座』に登るのか、もしくは不老の薬を手に入れる事や、美白の薬を手に入れる事を目指している奴もいる。

まあ人それぞれつー事だが、一つ言えるのは、駆け出しで終わりたい奴は一人もいないって事だ。

だから、いつまでも駆け出しを卒業できない無限術師は、パーティーに入れないんだ。

仕方なくソロで冒険者を始めるしかなかったんだが、これがかなり厳しい。

具体的には、半年たった今でも俺のレベルは上がってない。優秀な奴らは、レベル7とか8とかいっちゃうんだけどな。

レベルを上げるには、モンスターを倒すしかないんだけど、俺はゴブリン1匹倒すのがせいぜいだ。

だが、あいつら大抵、3匹4匹、固まっているからな。逃げるしかないんだよ。

ゴブリンですらパーティーを組んでいるというのに俺ときたら・・・いや、止めよう。この先は不毛なだけだ。

言い訳させてもらえるなら俺がしょぼい訳じゃあない。他の職、戦士や魔術師だって、ソロだったらまず死ぬよ。

ぼっちは死の道、そう言われているんだ。

むしろ、半年も生きながらえている俺は優秀とも言える。

必殺!おとりの術が俺を生き延びさせるのさ。そう考えると、無限術師はソロには向いているのかもしれない。

でも、結局モンスターを倒せないんじゃあ意味がない。

そこで俺は考えた。この状況を打破する策を。

そして閃いた。スペシャルスタイリッシュな作戦を。

そう、仲間がいない事が問題なんだ。

なら、仲間がいなければ奴隷を買えばいいじゃないか!!

・・・・。

・・・・。

いや、分かっているよ。女神教の教えでは、隣人と手を取り合おうとか教わるし、前世では、道徳の授業とかあったし分かってはいるよ。

でも仕方ないじゃないか! 俺を仲間に入れてくれる心優しい隣人はいないんだもん。仕方ないじゃないか‼︎

と、言う訳なので、モンスターの討伐はそうそうに見切りをつけて、エリア内の貴重品の採取や、ハイエナ行為でせっせとお金を貯めたのです。ちなみにハイエナ行為ってのは、他の冒険者が置いていったモンスターの死体をありがたく頂く事で、強盗などの犯罪行為ではないよ。冷たい目で見られる事はあるけどね。

今回の鉄亀なんかがまさにそれで、上級冒険者達が先のエリアに進む途中で出くわした雑魚(レベル1の無限術師にはおとりの術を使うしかない相手)をなぎ払ったのだが、魔石に変わらない奴は、重いし手が塞がるし持って帰っても30万ゼニーにしかならないしで(上級冒険者には端金、レベル1の無限術師には大金です)そのまま置いていった奴を俺が頂きました。

そうやって今日の鉄亀を含めて貯めに貯めた100万ゼニーで今から奴隷を買いに行くのです。

ちなみに目星はつけてあります。

金髪碧眼の美少女、14歳にしてけしからんスタイルの持ち主でレベル7の魔法剣士タワワちゃんです。

・・・・・・。

いや、誤解しないでほしいのだけど、大事な所はレベル7の魔法剣士という所だからね?魔法も剣も使える有能なタワワちゃんに仲間になって欲しいって、それだけだからね。


「うへへへへっ」


・・・・・・・・・・・・。

いや、今のは違うよ。今の鼻の下の伸びた様な声は演技だからね? ほら、俺、ロールプレイが好きだからさ、折角奴隷を買いに行くのなら、それなりの演技は必要かなって、それだけだよ。


と言う訳でやってきました奴隷商。いざ100万ゼニーを握りしめて、いざ出陣です。


「うへっへへへっ」




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