10 戦士の休息です。
荒野のゴブリン迷宮で大フィーバーした翌日、俺はオープンテラスな喫茶店でちょっとリッチな昼食を食べていた。今日は休日なのだ。だらだらしています。ちなみに俺の中には休日出勤とかいう言葉はない。前世に置いてきた。むしろ週に2日は休もうと思っている。それができるだけの余裕もできたしね。
結局、昨日はレベル4まで上がった。そして、ゴブリンの魔石も大量にゲットした。冒険者ギルドで換金して68万ゼニー。
1日で68万ゼニー。下手な中級冒険者ほど稼いでいる。どんなもんだと自慢していい稼ぎだけど調子にのらない様気をつけなきゃなとも思う。こういう稼いだ時が一番ヤバい。調子いい時に調子にのって散財して、調子が悪くなった時に首が回らなくなるってのが冒険者が奴隷になる一番の原因なんだ。
冒険者稼業は儲かる仕事だけど支出も大きい。金銭管理は冒険者にとって大事な能力だったりする。
とはいえ、休日に少し散財するくらいは許されると思う。
まずフルルにお小遣いを2万ゼニー渡した。あいつも今日はお休み。朝、好きに遊んできていいよって5万ゼニー渡そうとしたら「こんなにもらえません!」とか言ってきたので半分以下の2万ゼニーを渡した。
甘いなフルル、俺は最初から2万ゼニーを渡すつもりだったのよ。そのお人好しな性格なら遠慮するだろうと思って始めはあえて高い金額を提示したんだ。
奴隷をどう扱うかは主に一任される。こき使う事もできるけど、俺の精神上良くない。俺が休みなのにあいつに働けとか言いたくないし、罪悪感で俺が休めなくなる。俺が休みならあいつも休み、それでいいんだ。それで俺の方はというと、せっかくの休日だと言うのにあんまりテンションが上がらない。普段より豪勢な食事をのんびり食べているんだけどそれだけだ。
理由はわかっている。
たわわちゃん。彼女は一体どうなっただろうか?それが気になっているんだ。働いていた時は気が紛れていたけど、こうして暇になると彼女の事を考えてしまう。今朝は、もう売られているんだろうなと思いつつもさりげなく奴隷屋さんの前を通ったら、もう閉館していた。あれから4日しかたってないのに仕事が早い。
そして、俺にたわわちゃんの消息を知る術はなくなった訳だ。
いや、知ってどうするというのか、彼女を選ばなかったのは自分なのだ。今更、どの面下げて会えると言うのか。俺には彼女を思い出す資格すらないのだ。
だというとに、くそったれな妄想が止まらない。
俺が去ったあと、スケベで女の子を金で買う様なグズ野郎がたわわちゃんを買い取ったに違いない。そして、主と奴隷という逆らえない立場を利用してあんな事やこんな事を欲望のままに、たわわちゃんに叩き付けたに決まっている。それに決して逆らえないたわわちゃん。なすがままにもて遊ばれ、ことが終わったら一人寂しく布団にくるまり、やけに綺麗な星空を空虚な瞳で眺めながら呟くのだ。
「ヒビキの馬鹿……」
と、そこで俺はテーブルに突っ伏した。
「ああ〜、ごめん。ごめんよたわわちゃん」
「何が?」
俺の届くはずのない謝罪に返事があった。顔を上げるとたわわちゃんがいた。