第九十四話
「うーむ……」
ミチヤは森の上空でフルーセに乗って考えていた。
現在、第四学校の生徒は国付近の森に行ってモンスター相手に実戦訓練中である。
一応ゲージリングは付けているがな。
ちなみに、なぜこんなことになったのか。
それは、少しさかのぼる必要がある。
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ゲージリングを用いた訓練が一通り終了し、クラスメイトが議論を交わしている。
まあ、変な前提を持たれても困るのでミチヤは一応監督しているが。
「なんていうか、まだ何か出来るよな」
イカロスがそう言った。
他の生徒もうなづいている。
まあ、みんなそう思っている要で何よりだ。
「先生、あと何が出来ると思う?」
「別に俺もまだ教えたいことがいろいろあるけど……根本的な話、レベルさえ勝っていれば大概負けないんじゃね?」
呟いただけだが、一瞬世界が止まった。
そう、この世界にはレベルがある。
そして、学園内でぬくぬくと学んでいるだけの坊ちゃんどもが、そこまでレベルが高いとは思えん。
レベルを聞いてみた。
平均レベル、脅威の12である。
マキナを入れてである。マキナは42だ。
あんな性格だが、モンスターとの戦闘経験はあるようだ。
どんな戦いになったのか、そもそも戦いだったのか。
いろんな意味で気になるが、まあそれはいいとしよう。
「外に行ってモンスターを倒そうぜ!」
ミチヤは頭を抱えたくなったが、あえてしなかった。
まあどのみち、ミラルドに頼んで眷族を召喚して護衛にすれば、国周辺のモンスターなんぞ敵ではない。
そうと決まれば、と言うがごとく、早速準備を始めていた。
まあ、多数決ではまず勝てないことは明白だ。
それに、モンスターを相手にした場合の対応も教えている。
ミチヤはいつまでもこの学校にいる訳ではないからな。マキナもだが。
いや待てよ。臨時講師って、次の教師が決まるまでって意味だよな。
決まるの?この学校。
まあそれは今はいいとしよう。
何年もするのは勘弁だが、一か月に一回くらいは着てやってもいいだろうし。
とか何とか考えていたら、全員が準備を終えていた。
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まあそんな感じで、現在森でモンスター狩りをしているのだが、もうみんな強い。
第四学校が弱いとか言っていた面影がないな。
ただ……ちょっと魔法の消費ペースが不安な部分があるのだが、ミラルドに、眷族に魔晶石を持たせるように言ってあるので問題はないだろう。
「当然と言えば当然だが、アドニスとマキナは別格だな……」
魔法具で戦闘を見ているが、アドニスはモンスターが出現しても、即座に斬り倒している。
マキナも、詠唱を略して魔法名だけで特大の神聖魔法をぶっぱなす。王族と言うだけのこともあると思うが、魔力量も多いのだろう。流石にミチヤほどあったら驚愕だが。
「生徒が成長していくのはいいことなんだが……だんだん後になるにつれて教えることが少なくなって行くからな……」
語りだしたら止まらない。という表現があるように、自分の得意分野に関してはいくらでもしゃべることが出来るものもいるだろう。
だが、先生と言う職業である以上、一人だけ特別にするのは不公平だ。
そう言うこともあって、必要な知識は幅広くなる。
経験的に、悪いものではない。
「ただなぁ……なんか釈然としない」
多くの異世界転移の場合、戦っていればいいだけだと最初は思っていた。
最初はステータスが低いので主人公チートは無理かと思ったら、魔力は異常に多いし、結果的に戦闘力は身に付けている。
戦った経験が多いことは否定しないし、する気もない。
だが、それ以上に考えることが多い気がする。
それもこれも周りの連中が、とにかく戦って勝てばいい、見たいなやつばかりだということが一番の原因だと俺はいいたい。
あと、そんな奴に限ってパワーインフレしているから、ミチヤとしては頭を使ってどうにかするしかない。
異世界転移。主人公最強。
もうちょっと、楽なものだと思っていた。少なくとも頭脳的には。
「今更と言えば今更か……」
しかし、介入する必要がなくなってきたな……。
「そう言えば、海道たちは対抗戦に出るのだろうか……」
出ることができる権利は得ている。
在籍している限りその権利はあるので、編入したばかりであったとしても問題があるわけではない。
召喚された勇者たちだ。ステータスは低くはない。
「……ちょっと待てよ……それって……風雅と春瀬を相手にするってことか?」
や……ヤバいぞ。すっかり見落としていた。
教師が乱入していいと言うのなら喜んで入ってやるが、ちょっとまずいかもしれない。
バトルロワイヤルに出てくるのか、トーナメントに出てくるのか、それは俺にもわからん。
まあ、分かりやすく戦闘力が分かるのはトーナメントの方なので、おそらくそうなるだろう。
別枠で出てくる可能性も否定できないが。
「風雅と春瀬を相手にするって……ちょっとハードだな……」
アドニスは問題ないだろう。
だが、アドニスは二人もいない。あたりまえである。
いや、どうにかする手段が無いわけではない。
したくないけど。
その方法とは……
「ミラルドやヨシュアあたりをぶっこんでおくか?」
自分の奴隷を生徒として扱うということである。
年齢的に言えば誰を入れても問題はないのだが、いくらなんでも何百年と生きている長命種とか、明らかに成人しているようなものを生徒として居れるのはどうかと自分でも思うし、やらせたくはない。プライド的に。
そうなると、子供といえるヨシュアやミラルドを入れるしかなくなるのだ。
「……風雅と春瀬がどうするかによると思うが……」
もういいや。入れちゃえ。俺は知らん。
と言う感じに未来放棄することにした。
む?そもそも可能なのか?
対校戦のパンフレットを見る。
……種族や年齢による出場規制はなかったが、奴隷は無理だった。
そう来たか……。
だが、いまさらあの二人だけを戻すのもな。
「先に手をうたれていたか、仕方がない。誰かにものすごく強くなってもらわないと」
優勝させると国王であるオーバーンに言ってしまっている現在、もう遠慮はしない。
いろいろと教えることを制限しながら教えていたが、雰囲気は変えずに魔改造しよう。
しかし……困ったもんだな。
「なんでよりによってこのタイミングで頼みに来るのかな……そしてアイツらも来たのかな」
むしろなぜ気が付かなかったのだろうか。
普段なら気が付いてもおかしくはない。
が、ペース的にはまだ問題ない範囲だ。無論、時間的な話である。
「というかそもそも、アドニスが対抗戦に出るかどうかって問題になるな」
出る前提で話していて、いきなり出ないなんてことになったら目も当てられない。
それこそ絶望的だ。
「今回に関しては楽だと思っていた自分を殴りたいな。何でこうなった?」
後先考えることが多すぎて脳がパンクしていたのかもしれないが、運命が休ませてくれないのだから仕方がない。
しかも、病人にまで無理難題を相談される始末。
「安息と言う言葉が今以上にほしいと思う日はないぞ。本当に」
一番面倒なのは、自分の戦闘力で解決することが出来ないという点である。
ミチヤに参加権があれば、風雅と春瀬なんぞ先に秒殺してあとは高みの見物だけしていたらいいのだ。
だって、ゲージリングの装甲を叩き斬ったらいいだけの話なのである。
あの鎧を砕くのは……別に難しいことではないな。問題はない。春瀬だって紙装甲だし。
「あ~~~~面倒だ」
ミチヤは溜息を吐いて空を見上げた。




