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真名解放の奴隷使い  作者: レルクス
水面下の条件編
80/200

第八十話

 フィーアリング学園国第四学校。

 身分と治安が最下位のこのエリアに、その学校が存在する。


「なにか連絡ってあるかな……お、新しく先生が来るのか」


 この学校の生徒、アドニスは掲示板を見た。

 まあ、掲示板と言っても、すでにボロボロな板なのだが、掲示板と言えば掲示板なのである。

 金髪で背も高く、まあ、イケメンと言えばイケメンである。

 その背には、鞘に収まった刀がつられている。

 手入れは、へたくそなりにもされているといった程度だ。本当の方法を知らないのだろう。


「珍しいな。この学校に新任教師が来るなんて」


 珍しいことは本当である。

 この学校は、配属されるだけで左遷されているような立場と同じだ。

 だから、配属されることが決定した場合、それを辞退して教員不在になることも多いのである。

 実際、半年前からこの学校には教師はいなかった。

 誰一人として。

 自主退学するものも増えて、アドニスが所属しているクラス30人のみが通っている現状だった。

 学校と言う規模で通っているのが30人。治安が悪いとかそう言うレベルの話ではないが、この学校に通う以上、このエリアを統括している貴族に、授業料、いや、教師不在で授業は受けていないので、補充のされない施設使用料をとられるのだ。

 学校に通うということの必要性を感じないのである。

 それでも、アドニスのように通っている者もいるが、アドニスはここに去年入学してきて、今は二年生になっている。だが、その間で、生徒数は三分の一以下になった。

 だからこそ、配属されることは珍しいことではないが、学校に来るということに興味がわいたのだ。

 掲示板には紙が張り出されることも少ないので、多くの生徒が来ている。


「おい、裏切者。お前ここに何しに来たんだ?」


 赤い髪の男子生徒がアドニスに行った。


「掲示板に紙が張り出されるのは珍しいから来ていただけだよ」

「お前みたいなやつがこんなところに来る資格なんてねえんだよ。さっさと帰れ」

「それを言って俺が聞いたことはなかっただろうに」

「対校戦に出る気もないやつがこんなところに来るんじゃねえよ」

「俺にとっては、それ以上に大切なことがあるだけだよ」

「あのな。この学校に通うからには、優先順位なんて決まってるんだ。そんなこともわからねえのか」

「俺にとってそんなものは関係ないよ」


 アドニスは背を向けて歩きだした。


「ちっ、むかつく」


 最後に言われたが、特に気にしなかった。

 いつものことだから。


「優先順位、か。誰が決めたんだろうね。そんなもの」


 確かに、対抗戦に出場するのは目標と言えば目標だろう。

 この学校にいる者は、仕方がないとは思いつつも、毎年勝つために訓練しているのだ。

 確かに、そう言う部分では、彼は裏切り者かもしれないが。それでも、彼にだって譲れないものがある。

 それだけのことだし、それだけで十分だと彼は考えている。

 そんなことを愚痴りながらも、アドニスは教室に入った。

 木の床はぼろぼろになっているところだらけで、黒板にはチョーク一本すらも存在しない。

 机や椅子も、中には足がおれているものがある。

 まあ、この教室で学ぶことなどなく、皆他の場所で訓練しているのだから、使用することはほとんどないし、使わない場所の質なんて考えないのかもしれない。

 だが、新しい教師は来るということなので、この日は全員が集まった。

 30人。誰一人かけていない。まあ学校で寝泊まりしているものもいるからな。

 ホームルームのチャイムすらもないが、時間になったのだろう。ドアが開いた。

 いや、開こうとしたが壊れているのかうまく開けれていなかったが。


「めんどくさい!」


 そう叫ぶと、その人は窓から入ってきた。

 黒髪黒目、身長は174センチほどだから、アドニスよりも少し高いくらいだ。

 そして、教壇に立った。

 で、床が抜けて足がはまった。


「うおっ!」


 そう叫んで慌てて足を引っこ抜く。


「びっくりした。心霊現象でも起こったのかと思ったぞ」


 まあ、そう思うのも無理はない。


「しかし、逆の意味ですごいな。あとでヨシュアに頼んでおくか。まあそれはいいとして」


 男性はこちらを見た。


「まあ、まずは自己紹介からだな。俺はミチヤ。17歳で、もうそろそろ18歳になる。君たちの教師をすることになった。ということで宜しくな」


 ありきたりだ。

 全員がそう思った。

 そして、この人が来たことで、彼らの生活は大きく変わったのだが、今の時点で、それを予測するものはいなかった。


----------------------------------

 困難はあったとしても、それはいつでも、切り抜ける方法はある。

 どんな巨大なモンスターが出現したとしても、それを倒すことはできる。

 次に立ち向かうのは、権力の壁。

 だが、たくさん用意されている結末から何を選ぶのかは、そのもの達を導くもののみにかかっているのだ。

 そしてそれは、どんな世界のどんな時代でも、変わることはない。


 第二章『水面下の条件編』はこれにて終了。


 第三章『裏切者の序列一位編』次回より開始。

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