第八十話
フィーアリング学園国第四学校。
身分と治安が最下位のこのエリアに、その学校が存在する。
「なにか連絡ってあるかな……お、新しく先生が来るのか」
この学校の生徒、アドニスは掲示板を見た。
まあ、掲示板と言っても、すでにボロボロな板なのだが、掲示板と言えば掲示板なのである。
金髪で背も高く、まあ、イケメンと言えばイケメンである。
その背には、鞘に収まった刀がつられている。
手入れは、へたくそなりにもされているといった程度だ。本当の方法を知らないのだろう。
「珍しいな。この学校に新任教師が来るなんて」
珍しいことは本当である。
この学校は、配属されるだけで左遷されているような立場と同じだ。
だから、配属されることが決定した場合、それを辞退して教員不在になることも多いのである。
実際、半年前からこの学校には教師はいなかった。
誰一人として。
自主退学するものも増えて、アドニスが所属しているクラス30人のみが通っている現状だった。
学校と言う規模で通っているのが30人。治安が悪いとかそう言うレベルの話ではないが、この学校に通う以上、このエリアを統括している貴族に、授業料、いや、教師不在で授業は受けていないので、補充のされない施設使用料をとられるのだ。
学校に通うということの必要性を感じないのである。
それでも、アドニスのように通っている者もいるが、アドニスはここに去年入学してきて、今は二年生になっている。だが、その間で、生徒数は三分の一以下になった。
だからこそ、配属されることは珍しいことではないが、学校に来るということに興味がわいたのだ。
掲示板には紙が張り出されることも少ないので、多くの生徒が来ている。
「おい、裏切者。お前ここに何しに来たんだ?」
赤い髪の男子生徒がアドニスに行った。
「掲示板に紙が張り出されるのは珍しいから来ていただけだよ」
「お前みたいなやつがこんなところに来る資格なんてねえんだよ。さっさと帰れ」
「それを言って俺が聞いたことはなかっただろうに」
「対校戦に出る気もないやつがこんなところに来るんじゃねえよ」
「俺にとっては、それ以上に大切なことがあるだけだよ」
「あのな。この学校に通うからには、優先順位なんて決まってるんだ。そんなこともわからねえのか」
「俺にとってそんなものは関係ないよ」
アドニスは背を向けて歩きだした。
「ちっ、むかつく」
最後に言われたが、特に気にしなかった。
いつものことだから。
「優先順位、か。誰が決めたんだろうね。そんなもの」
確かに、対抗戦に出場するのは目標と言えば目標だろう。
この学校にいる者は、仕方がないとは思いつつも、毎年勝つために訓練しているのだ。
確かに、そう言う部分では、彼は裏切り者かもしれないが。それでも、彼にだって譲れないものがある。
それだけのことだし、それだけで十分だと彼は考えている。
そんなことを愚痴りながらも、アドニスは教室に入った。
木の床はぼろぼろになっているところだらけで、黒板にはチョーク一本すらも存在しない。
机や椅子も、中には足がおれているものがある。
まあ、この教室で学ぶことなどなく、皆他の場所で訓練しているのだから、使用することはほとんどないし、使わない場所の質なんて考えないのかもしれない。
だが、新しい教師は来るということなので、この日は全員が集まった。
30人。誰一人かけていない。まあ学校で寝泊まりしているものもいるからな。
ホームルームのチャイムすらもないが、時間になったのだろう。ドアが開いた。
いや、開こうとしたが壊れているのかうまく開けれていなかったが。
「めんどくさい!」
そう叫ぶと、その人は窓から入ってきた。
黒髪黒目、身長は174センチほどだから、アドニスよりも少し高いくらいだ。
そして、教壇に立った。
で、床が抜けて足がはまった。
「うおっ!」
そう叫んで慌てて足を引っこ抜く。
「びっくりした。心霊現象でも起こったのかと思ったぞ」
まあ、そう思うのも無理はない。
「しかし、逆の意味ですごいな。あとでヨシュアに頼んでおくか。まあそれはいいとして」
男性はこちらを見た。
「まあ、まずは自己紹介からだな。俺はミチヤ。17歳で、もうそろそろ18歳になる。君たちの教師をすることになった。ということで宜しくな」
ありきたりだ。
全員がそう思った。
そして、この人が来たことで、彼らの生活は大きく変わったのだが、今の時点で、それを予測するものはいなかった。
----------------------------------
困難はあったとしても、それはいつでも、切り抜ける方法はある。
どんな巨大なモンスターが出現したとしても、それを倒すことはできる。
次に立ち向かうのは、権力の壁。
だが、たくさん用意されている結末から何を選ぶのかは、そのもの達を導くもののみにかかっているのだ。
そしてそれは、どんな世界のどんな時代でも、変わることはない。
第二章『水面下の条件編』はこれにて終了。
第三章『裏切者の序列一位編』次回より開始。




