第七十九話
ミチヤの髪がぐしゃぐしゃになっていた。
「あの第二王子、かなりやんちゃな性格してるな」
フィーアリング学園国に来て、王城にきたミチヤたち。
で、観光をした後に気持ちが悪いくらい階級社会になっていると分かった。
王城に近ければ近いほどすさまじく発展しているが、離れるにつれてかなりひどい状態になっていた。
ちなみにだが、600年前は首都と四つの町が分かれていたらしいが、国民の急増が続いたらしく、生活範囲の増加でもはや一つの巨大な学園都市と化していた。
これには驚いたが、地球でも600年あれば都市レベルの大開発も十分可能だ。と言うか運営はともかく開発でいいのなら10年でいいだろう。多分。
そして、学園都市となった学園国だが、町ではなくエリアと言う分け方になっている。
それくらいがちょうどいいだろう。
で、王子も帰ってきて、簡易的にではあるが王にも会って報酬も貰った。
そんなに多くなかった気もするが、別に困るわけではない。
周りの貴族連中の視線は嫌な視線になると思ったが、全員が奴隷だと知った瞬間に表情が変わったのは、俺達全員が見逃さなかった。
まあ、この世界でも地球でもド平民のミチヤだ。良い顔はされなかったが。
人族至上主義。
これは存在否定ではなく、他の種族が下につくという考え方とも言える。
奴隷と言う立場であるからこそ、ミチヤの奴隷たちが何か妙なことを言われることはなかった。
主人の命令に絶対服従だということに変わりはないからである。
そしてそれは、今のミチヤの奴隷たちも同じだからだ。
階級至上主義。
これは、上に立つものの意見が絶対である。と言うことになる。
そんなことはもう置いておくとして、第二王子にあった。
まだ6歳とのこと。あと一年で、地球ならピカピカの一年生である。
王と第一王子と話しているときに部屋に入ってきたのだが、急にミチヤに抱き付いたと思ったら、今度はジャンプしてミチヤの肩に、肩車のような状態になるように乗った後、髪をぐしゃぐしゃにし始めたのである。
王曰く、気に入られたらしい。
よくわからんが。
ただ、予想外なことが一つだけあった。
「しかし……あの王も無茶苦茶いうもんだな……第四学校を、学園対抗戦で優勝させてほしいなんて」
そう、まさかの王からの依頼だった。
王本人が、今の状況を良いとは思っていなかったのである。
「可能性があるのだから、それを開放してやってほしい。か。簡単に言うけど、出来るものなのか?」
イナーセルが呟く。
ちなみに、馬車の中で話している。現在、第四学校に向かっているからだ。
「それは俺にもわからんよ。ただ……こんな便利なものもあるのに、適材適所も考え着かないようなバカに教えるには、そうするしかないんだろうな」
そう言って、ミチヤはザナークル王国でもらったステータスプレートを見せる。
ちなみに、ミチヤの場合はこんな感じで表記されている。
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ミチヤ・カヤミヤ
男
17歳
レベル255
巻き込まれた青年
体力 23000
魔力 ??????
筋力 12050
敏捷 7720
耐久 6800
器用 7.0E+3478
スキル
・真名解放 ・異世界言語理解 ・超級刀術 ・超級錬金
・索敵 ・隠蔽 ・上級全属性魔法才能 ・上位鑑定 ・覇気
・念筆 ・揺り篭 ・付与術才能 ・神格料理
称号
・召喚に巻き込まれた者
・マスターシェフ
・創造神の相棒
・全身錬金の開祖
・真名解放の奴隷使い
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称号にはいろいろと突っ込みたい部分はある。
あと、最後のどういうことだ?
まあそれはいいか。
「こんな分かりやすいものがあるんだ。適材適所ができないって言うのも妙な話だと思うぞ」
「それはそれとして……マスター。魔力量がすごいのは知ってるけど。器用さもバグってるな」
イナーセルの言い分も納得できる。
「これ、どういうことなんですか?」
ミラルドが聞いて来る。
さすがに10歳は知らないか。
「簡単に言えば、この3478は『桁の数』だ」
「え……」
ミラルドが顔面蒼白になる。
「一体どれくらいのすごさなのだ?」
「さっぱりわからん」
ゼロから電子機器作ったりしたからかな。
……となると、創造神の場合、どんな数字になっているのだろうか……。
神の条件とかは知らないが、まるで訳が分からんぞ。
次会った時に教えてもらうか。
「しかし、マスターって色々すごいことになってるよな。スキル」
「職業的に巻き込まれた状態ですから、本来召喚勇者が持っている成長力が持っていないはずですからね」
「む?電子関係のスキルがない」
ヨシュアはそこが気になったようだ。
「まあ、あれからバスタードにあったことがあって聞いたんだが、ステータスプレートに記載されるのはこの世界におけるステータスみたいなものだから、体質とかも記載されないらしいぞ」
霊感だとか、地獄耳だとか、そう言った部分も記載されないらしい。
「へぇ……ん?ご主人様。魔王にあったことあるの?」
ミラルドが聞いて来る。
「あるぞ。二回」
どっちもゲームを譲っただけのような気がしなくもないが。
「まさか、魔王にあっていたとは……」
「いや、アークヒルズも普通に話しているし、見た感じマブダチだったぞ」
「魔王って思った以上にズボラ……」
ヨシュアがかなりげんなりしている。
「まあな。まあゲームのセンスはともかく、戦闘能力も知識も魔族随一だ。だらしなさがすごかったが」
初対面で『暇で死にそうだから何か暇つぶしになるものない?』って聞いて来るくらいだからな。
まあ、それでも魔王は魔王なのだ。それはそれでいいのだ。
多分。
「まあ話は戻そうか。マスターは、優勝させることが出来るのか?」
「国王が頼んだ以上、不正とかは未然に防いでくれると助かるんだがな。公式戦について詳しいルールは何も聞いていないが、武器が支給制の場合に向こうだけいいものを渡されたり、いきなりなんかルール変更があったり、試合が終わった後で不正しただとか、口だけならいくらでも言える。で、貴族だから、その口に従うしかない。そんな空気になっているんだろ」
「学園なのにそんな感じでいいのかね?」
「どうなるかは俺にも結局のところ分からないが、今はそれが続いていたんだと思う」
「まあ確かに、第一学校が優勝し続けるということそのものが妙な話だからな」
そう、記録を確認すると、ここ数十年。第一学校しか優勝していない。
対校戦ではなく、ただの見世物にしかならないのだ。
「マスターはそれについてはどう思う?」
「下のものは仕方のないことだと、上のものはそれを当然と考えている現状だと俺は思う。まあ、上には上の苦労と言うものがあるから、別に全部が全部悪いわけじゃない。だが、この階級至上主義に対して不満を持つものが出てきて、さらにそのものが力を持った場合、貴族連中が命乞いしかできないのは事実だろうが」
革命とか、変革をもたらすだとか、新時代と言うのはそう言うことなのだ。
今回の場合は、王がそれを望んでいる。
それはつまり、今の状態を継続させることに危機感がある。と言うことだ。
「あとは、俺が生徒として入るのなら話は早いんだが……教師として行ってくれと言われたからな……」
いろいろ面倒な部分はあるが、とにかく、教師に任命されたのだ。
することは一つ。導くことだけである。
そして、ミチヤがいなくなってもそれが続くようにするだけなのだ。
それが大変なのは、すでに分かっているが。
溜息を吐きながらも、ミチヤたちは進んで行った。




